ラーメン業界に衝撃を与え続けてきた「麺劇場」 惜しまれつつ23年の歴史に「終幕」
福岡『麺劇場 玄瑛』が23年の歴史に終止符
無骨な佇まいの店に一歩入れば、同じ向きに並べられた段差のある客席が、厨房を見下ろすように囲んでいる。他のラーメン店ではまず見られない厨房と客席の独特な配置は、まさに劇場の舞台と観客席さながら。職人はその一挙手一投足を観客に見つめられながら、一杯ずつラーメンを作っていく。これが唯一無二、福岡にしかない「麺劇場」だ。
2003年に創業以来、福岡のみならず日本のラーメン業界に衝撃を与え続けてきた『麺劇場 玄瑛』(福岡県福岡市中央区薬院2-16-3)が、2025年12月28日に「終幕」を迎える。地元の人はもちろん、県外や海外の人にもリピーターが多く、23年愛され続けてきた人気店。福岡でいち早く「無化調」「非豚骨」を打ち出した嚆矢でもある。
創業者の入江瑛起(ひでき)さんは熊本生まれで、熊本ラーメン店で修業を重ねた後に独立開業。既存のラーメンに対して独自のアプローチで、世の中にはないラーメンを作り続けてきた。和食をはじめフレンチやイタリアンなど、異なるジャンルの料理人たちにも教えを請う。業界屈指とも言われる知識量と技術の高さを持った孤高のラーメン職人だ。
2011年には福岡の店をスタッフに任せて東京へ進出。『GENEI.WAGAN』(東京都渋谷区広尾1-10-10)は、業界初となる完全予約制、会員制の体験型ラーメンコースを提供するレストラン。客の来店回数ごとに異なるラーメンを創作する斬新なスタイルで、東京でも多くのファンを魅了し続けている。
「より先進的な取り組みへのステップ」
「今回の『麺劇場 玄瑛』のクローズは、業績不振などのネガティヴな理由ではなく、次のステップに進むために一度区切りをつけようという、前向きな理由によるものです。これまで多くのお客様に支えられて23年間営業させて頂きましたが、役目を果たせたからこそのクローズだと考えています」(『麺劇場 玄瑛』『GENEI.WAGAN』店主 入江瑛起さん)
『麺劇場 玄瑛』がオープンした2000年代の福岡は、右を見ても左を見ても豚骨ラーメンばかり。豚骨でなければラーメンではない、という空気感だった。その完全アウェイな状況の中で、豚骨も化学調味料も使わないラーメンを打ち出し、店の構造そのものも既存のラーメン店を否定するような大胆な設計にした。そして一躍福岡を代表する人気店になった。
入江さんはラーメン職人として極めて高い調理理論と技術を持っているが、ラーメン職人が料理人としての基本と知識を持つことで、はじめてラーメンが料理として認められると信じているから。だからこそ入江さんは今も日々食材や調理技術と向き合い、常に新しいことにチャレンジし続けているのだ。
「僕自身は2011年から東京広尾で『GENEI.WAGAN』として、完全予約制で会員制の体験型ラーメン会席という、今までにないより先進的な取り組みを進めています。また来年からは新たなチャレンジも計画しています。今回の福岡クローズは、これから攻めていく上でのチャンスになると思っています」(入江さん)
「より自由度の高いラーメン作りの場を」
「今回、福岡のお店がクローズすることにはもちろん寂しさもありますが、僕自身はラーメンや食の世界を離れるわけではなく、形を変えてより自由度の高い場づくりに注力していく段階に入っています。これからも楽しみにしていてください」(入江さん)
唯一無二の「麺劇場」が23年の歴史に一旦区切りをつけて、2025年12月28日に「終幕」を迎える。日本のラーメンに衝撃を与えた歴史的名店のフィナーレを体感しに、是非とも年内のうちに足を運んで欲しい。
※写真は筆者の撮影によるものです(一部生成AIにて加工)。
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