ズボンのシワ取り、最も手軽で効果的な方法は
6通りを徹底比較
初夏になり薄手のズボンをはく機会が多くなった。薄いとはき心地はよいが、膝の裏などにシワがつきやすい。しっかりズボンの手入れをして、細やかな気配りができると演出したい記者(28)だが、内面は面倒くさがり屋。毎日続けられる簡単で効果的な手入れ方法を探った。
まずは好印象を与える身だしなみについて知るため、デザイナーで和洋女子大学准教授の布台博さんのもとを訪れた。
ヨレヨレのスーツ姿の記者を見つめながら布台さんは「シャツやズボンなどは目立つシワだけアイロンがけするなど、毎日少しでも手入れをするとよいでしょう」と話す。上品な身だしなみの布台さんに触発され、小ぎれいな男になろうと記者は意志を固めた。
毎日1時間正座、シワだらけ状態に
手入れの効果を分かりやすくするために、帰宅後に毎日1時間正座をしてズボンをシワだらけの状態にした。そのシワをさまざまな方法で伸ばしてみる。
膝の裏や脚の付け根、お尻の下にできたシワの伸び具合や、折り目のつき具合から効果を測る。ズボンは夏物でウール100%素材に統一した。
まずはアイロンを試す。休日はワイシャツを自宅で洗うこともある「アイロン男子」の記者。ズボンにあて布をしてスチーム機能を効果的に使い、シワを完全に伸ばし、折り目もしっかりつけることができた。
かかった時間は5分弱。ただアイロン台の出し入れなどを含めた手間を考えると、平日には負担が大きいと感じた。
手入れが少し楽になるのではと思い、ズボンプレッサーを次に試してみた。最近のプレッサーは縦置き型が主流だ。
30分でほぼ完璧にズボンは仕上がる。プレス温度も60~70度と、100度を超すアイロンに比べて低く、生地が傷みにくい。難点はプレッサーのサイズが大きいこと。ベッドと本棚のある6畳の部屋では置き場所に困る。泣く泣く実家の納戸にしまうこととなった。
家電量販店で小型プレッサーも買って使ってみた。T字型をしたキッチン用品のトングのような構造で、根もとを片手で持ち、先端の長さ約15センチメートルの板2枚でズボンを挟む仕組みだ。
サイズが小さいため一着のシワを取るのに何度も挟む位置を変えなくてはならず、かかった時間は約10分。出張先などでは活躍するだろうが、家庭での普段使いには少し面倒だ。
布団の下で寝押し、折り目2本に
アイロンやズボンプレッサーは効果的だが、手間や場所が必要。平日フルタイムで働く男女でも手軽にできる方法は何だろうか。
実家の食卓で考えていると、母が「昔はみんなズボンを布団の下に敷いて寝たわ」と話しかけてきた。「寝押し」と呼ぶ方法で、アイロンのようにはっきりとした折り目がつくという。
その晩、ズボンを新聞紙で挟み寝押しを試してみた。すると翌朝悲劇が起こる。折り目の位置を間違えて、古い折り目と、寝押しでついた折り目の2本の線がズボンに走っている。寝相の悪さのせいだろうか。
別の昔ならではの手法で、温めたヤカンをアイロン代わりにしてシワを伸ばす手法も試した。だがヤカンの底はアイロンより温度が低くシワが伸ばしにくい。滑りも悪く、納得のいく仕上がりにはほど遠かった。
昔の手法は失敗気味だったので、最新の衣類の手入れ法を研究するライオンにヒントを探りに行った。
「ズボンの手入れには水分を活用しましょう」とお洗濯マイスター、山県義文さんが教えてくれた。ズボンの素材であるウールは髪の毛に似た性質。水気を与えると、寝癖が直るようにシワも伸びるという。
早速家に戻り、風呂場にお湯を張ったままの状態でズボンを一晩つるしてみた。次の朝、水分効果でシワは普通につるした時に比べ伸びてはいるが、取り込むときにムワッといやなにおいがする。湿度が高く、雑菌などが増えたようだ。
シワの多い部分だけに水分を与えればよいのではと思い、市販のシワ伸ばしスプレーを次に試してみた。膝の裏などの部分に生地が湿る程度に約10回ずつスプレーを吹きかける。
「スプレー程度では効果は小さいのでは」と心の中で思いながら、3時間ほど待ってみると、なんとほとんどシワが伸びている。記者には意外な結果だ。試しに、水道水を霧吹きに入れて吹きかけても、市販のスプレーに比べ消臭効果などは少ないものの、シワがしっかりと伸びた。
ウール素材に比べシワが伸びにくいとされる綿100%のチノパンでも効果はあった。スプレーするだけなので時間はかからず、最も手軽な方法だ。
記者はメモを取り出し「効果的なズボンの手入れ方法は、平日は帰宅後にスプレーなどでシワを伸ばし、休日など時間がたっぷりあるときにアイロンなどで折り目を付ける」と走り書きした。山県さんのアドバイスをもとに、メモには「汗やにおいを本格的に落とすために、月1回程度クリーニングに出すことも大切だ」と付け加えた。
何もしないまま3、4回はいたズボンは手入れが大変そうで、放っておきたくなる。一方で毎日少しずつでも手入れをすると、脱いだ後の少しくたびれたズボンを見て「きょうも一日お疲れさま」と話しかけそうに。
自然と手入れの手間など苦にならなくなる。「何事も毎日コツコツ続けることが大切」。ズボンを眺めながら自分に言い聞かす。
(武田健太郎)
[日経プラスワン2012年6月2日付]