【独自】ついに大阪に「EVバスの墓場」が出現か?不具合多発でリコールも出た『万博EVバス』の行方
〈万博に150台のEVバスを納品したスタートアップで不具合発覚が止まらない。ついにはリコールも出る状況となり、問題を抱えるバスが大量に集められた「墓場」のような場所まで出てきた。自動車生活ジャーナリスト・加藤久美子氏がその実態に迫る〉 【画像】少しの隙もないほどギチギチに…50台ほどが集積された「EVバスの墓場」内部写真 ◆万博で使われた150台のEVバスの今 「SNSで大量の万博バスが阪神高速泉大津PA近くの駐車場に止められていることを知りました。すぐに現場に出向いてみたところ、広大なスペースに所狭しと、あのおなじみ万博バスがぎゅうぎゅうにとめられていたのです。夢中で写真を撮りました」 そう話すのは、大阪メトロのファンサイト『Osaka-Subway.com』を管理する運営者の男性だ。大阪府泉大津市内にある巨大なスペースに突如出現した万博カラーのEVバス。12月中旬には50台近くが止められていたが、これらは不具合多発で問題になっている『EVモーターズ・ジャパン(以下、EVMJ)』が中国より輸入・販売した『WISDOM大型(全長10.5m)』である。10月に閉幕した『大阪・関西万博』では、主に桜島シャトルバスと舞洲パークアンドライドバスなどに使用された。 なお、EVMJのバスにおけるトラブルについては、10月13日に『【独自】証拠動画を入手…大阪万博で大量購入された中国製バスで続出する「操縦不能トラブル」の実態』と題した記事を寄稿し、追及している。トラブルの実態についてはこちらの記事を参考にしていただきたい。 そんな問題続出のEVバスが、なぜ大量に集められているのか--。まず前提として、集められていた箇所は『阪九フェリー』の発着港(泉大津~新門司)から目と鼻の先にある。つまり、EVバスをEVMJの本社である北九州に送るために一時的に保管しているのか……と思いきや、実はそうではない。移送だけが目的であれば、EVMJの南港サービスステーションに近い大阪南港を発着する『名門大洋フェリー』を使うほうが合理的だ。 そこには、EVMJが抱える新たなトラブルがあるという。EVMJの関係者が明かす。 「実は名門大洋フェリーから取引を避けられているんです。当然、泉大津よりも大阪南港のほうが圧倒的に近いし便利です。実際、かつては名門大洋を使っていました。ですが、今年3月にEVMJのバスを北九州本社からフェリー乗り場の新門司まで運ぶ間に不具合が発生し、フェリーの出航を2時間も遅らせたことがありました。現場担当者の独断で出航を待ってもらったと私は聞いています。フェリー利用のドタキャンも何回かあったそうで、結果として利用できなくなったそうです」 つまり、別のフェリー会社と交渉するなかで、不具合のあったEVバスを阪九フェリーの乗り場である泉大津港近くに集結させたところ、まるで「墓場」のようなものが出来てしまったというわけだ。 関係者の話によると、この駐車場の保管料は1ヵ月で約200万円と推定される。11月〜12月までの2ヵ月分を契約しているといい、料金は400万円ほどになるとみられる。この料金について、EVMJの幹部は驚きの発言をしているという。前出の関係者が続ける。 「本社へ移送する理由は、不具合のあったEVバスの回収のためです。それなのに、上層部の一部は『管理元である大阪メトロが置き場所に困っていたので、ウチが置き場所を探した。賃料に関してはひとまず立て替えるが400万円の駐車料金は大阪メトロに請求すべき』と主張しているといいます。バスの不具合は弊社の落ち度。そもそも欠陥がなければ北九州に送り返す必要もない。何を考えているのか……」 ◆ついにリコールも提出された 大量に集積された万博EVバスを含むEVMJのバスについては、9月に国交省から、過去に納車された317台すべてに対する点検命令が出されている。国交省が10月17日に発表した内容によると317台のうち113台に不具合が見つかったとされており、「3台に1台は問題がある」という驚きの実態が明らかとなった。EVMJの別の関係者が囁く。 「ブレーキホースの損傷が多く発生した時期がありました。私の経験では車両設計の段階からやり直さないとダメなレベルの不具合でしたが、最終的に行ったのは強度の高いブレーキホースへ交換しただけ。会社としては修理にコストはかけたくないということでしょう。見た目だけが直っていればいい、その場しのぎの対応ばかりです」 11月28日、EVMJは国交省からの指摘を受け、制動装置(ブレーキホース)の不具合に関するリコールを届け出た。今後は制動装置に関して運行事業者からの不具合の申し出があった場合、無償で対応するという。しかし、メーカーである中国・WISDOM社から送られてきた対策済みのブレーキホースは、品質に関して大いに疑問がつくようで、本当に正しいリコール作業ができるのかどうかも不明である。 ◆複数の関係者が明かした懸念 山積みの課題にEVMJはどのように対応していくのか。本サイトは同社に「名門大洋フェリーからの取引停止の実態」「大阪メトロへの保管代の請求の有無」「対策済みブレーキホースでの不具合の状況」について質問状を送った。 まず「名門大洋フェリーからの取引停止の実態」については、以下のような返答があった。 「名門大洋フェリーにつきましては、’23年12月28日に(名門大洋フェリーから)出ているインフォメーションの通り、弊社のみならずEV車両全般の引き受けを一時休止されております。その為、現在では車両搬送時には他フェリー会社を使用して車両搬送を行っております。また、車両輸送の発着港につきましては、現時点で取引停止の宣告を受けたことはございません」 たしかに名門大洋フェリーは’24年1月1日からEV車両の“無人”航送は引き受けを停止しているが、“有人”の搬送は対象外だ。EVMJが大阪メトロに納車した『愛中和E1乗合』というEVバスでフェリーの出航を遅延させたのは’25年3月のことで“有人”による航送だった。3月7日には、「名門大洋フェリーがEVMJ要因の遅延、キャンセル等が多く乗船させたくないと主張している」「フェリー会社へ謝罪、お願いが必要になる」といった内容が、メールにて社内共有されていることも把握している。 また「大阪メトロへの保管代の請求の有無」については、 「弊社からの公式ステートメントではなく、これを否定させて頂きます。また、費用に関しては、お客様との兼ね合い、取引条件もありますので、回答を差し控えさせて頂きます」 とした。しかし、筆者は12月某日にEVMJから大阪メトロ宛に発行された請求書を入手している。その項目には『泉大津駐車場費用(2ヵ月) 600坪(11/1~12/31)』と書かれており、金額も概ね一致している。 最後の「対策済みブレーキホースでの不具合の状況」については、以下のように返答があった。 「リコールに関して現在、各事業者様と協議を進めながら交換作業対応を進めさせて頂いております。現時点で実施させて頂いている中で不具合が見つかったという報告は上がっておりません」 こちらについても、取材に応じた複数のEVMJ関係者より、 「WISDOM社から送られてきたブレーキホースの2割近くに欠陥があり、とてもじゃないがリコール用の交換部品として安心して使えない」 との供述を得ている。なお、EVバスの所有元である大阪メトロは保管された大型バスを12月末に別の場所に移送する予定だという。EVMJに送り返しての再点検をしないといい、今後、同バスに関しては使用を完全停止する決断をした模様だ。会社の存続が危ぶまれているEVMJのバスを今後、購入する会社が出てくるとは思えない。 場所は変われど「EVバスの墓場」が誕生する日は意外と早いかもしれない。
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