[report]『フジタからはじまる猫の絵画史』(府中市美術館)
開催情報
『フジタからはじまる猫の絵画史 藤田嗣治と洋画家たちの猫』
場所:府中市美術館(東京都府中市)
開催日:前期 2025.9.20.sat-10.26.sun | 後期 10.28.tue-12.7.sun
入館料:1,000円(一般)
※ ぐるっとパスで入場可
※ 展示入れ替え:3章 前期:熊谷守一、後期:猪熊弦一郎
内容:洋画が生まれた当初、猫の絵はほとんど描かれなかった。猫というモチーフを、洋画の魅力的なテーマへと押し上げたのが藤田嗣治。
26人の作家、83点の作品で洋画の猫の歴史をたどる。
※ 展示室内撮影不可
[同時開催]
府中市美術館コレクション展 第Ⅲ期 25年目の名品選
※ 新収蔵:岸田劉生《静物(土瓶とシュスの布と林檎五個)》
展示作家(生年順)
原在明(1778-1844)
原派の祖、原在中の子。カミーユ・ピサロ(1830-1903)フランス
画家。印象派最年長。エドゥアール・マネ(1832-1883)フランス
画家。《オランピア》の黒猫、シャンフルーリ『猫』の挿絵テオフィル=アレクサンドル・スタンラン(1859-1923)スイス
版画家、画家、彫刻家。「シャ・ノワール」のポスターを描いた「猫の画家」。ピエール・ボナール(1867-1947)フランス
画家。ナビ派を結成。動物も数多く描いた。菱田春草(1874-1911)
日本画家。《黒き猫》木村武山(1876-1942)
日本画家。熊谷守一(1880-1977)
洋画家。猫好き。猪熊弦一郎からもらったシャム猫を飼ったことも。朝倉文夫(1883-1964)
彫刻家。動物彫刻は猫が最も多い。「猫百態展」を計画するも同年没。新井完(1885-1964)
洋画家。藤田嗣治と東京美術学校の同級生、同年に卒業。藤田嗣治(1886-1968)
洋画家。「猫の画家」池部鈞(1886-1969)
洋画家。藤田嗣治と東京美術学校の同級生、同年に卒業。岸田劉生(1891-1929)
洋画家。木村荘八(1893-1958)
洋画家。無類の猫好き。中原實(1893-1990)
洋画家。歯科医。河野道勢(1895-1950)
洋画家。椿貞雄(1896-1975)
洋画家。飼い猫を名前入りで描いた。浅野竹二(1900-1999)
版画家。稲垣知雄(1902-1980)
版画家。猫をモチーフにした版画を手がけた。飼い猫はナコタン。猪熊弦一郎(1902-1993)
洋画家。「猫の画家」。藤田嗣治と親交が深く「弦ちゃん」と呼ばれた。猫好きの大佛次郎からペルシャ猫を譲り受け猫を飼い始める。長谷川潾二郎(1904-1988)
洋画家。愛猫タローを描いた《猫》が代表作。村井正誠(1905-1999)
洋画家。井上長三郎(1906-1995)
洋画家。山口薫(1907-1968)
洋画家。愛猫はトラ。(愛犬はクマ)斎藤清(1907-1997)
版画家。《凝視》香月泰男(1911-1974)
洋画家。
関連サイト
↓「軽井沢安東美術館」世界で初めて藤田嗣治の作品だけを展示する個人美術館。2022年開館。
章構成覚書
1章 「フジタからはじまる猫の絵画史」その前史
ルネサンス以来絵画の主役は人物像。動物は「物語の脇役」か、何かの「象徴」。
19世紀頃から動物の絵が増える。
マネ《オランピア》←貞節の象徴・犬のパロディとして猫
バルビゾン派:人の暮らしに寄り添う「ふつうの動物」を描いた(新鮮)
→ピサロ、ボナール
中国: 徽宗(1082~1135)《猫図》→菱田春草《黒き猫》
2章 フジタの猫の絵の変遷
19世紀「日本は動物の絵が得意な国」というイメージ
フジタのイメージ戦略「猫の画家、フジタ」
1.版画集と挿絵本(『猫十態』『猫の本』)
2.お気に入りのポーズ
3.女性・少女と組み合わせる
4.「猫の画家」の戦争と平和
3章 フジタ以降の猫の絵
・「日本」の洋画家と猫
・猫を愛する自分をえがく
・猫の野生をえがく
・日本の近代彫刻と猫(朝倉文夫)
・もう1人の「猫の画家」猪熊弦一郎
藤田嗣治
1923 パリ、サロンで最高額をつける
1929 パリで人気絶頂
1940 戦争画を描く
1949 日本を去る
感想
西洋絵画では、19世紀まで動物が主役の絵はほとんど描かれなかった。
日本は、動物も人と同じ命を持つとする仏教の影響もあり、古くから(身近な、心を持つ)動物の絵が多く描かれ、19世紀ヨーロッパでは「日本は動物の絵が得意な国」というイメージがあった。
1913年、パリに渡った藤田嗣治は、独自の下地に日本画の筆で描き脚光を浴び、絵の側や自画像に猫を描き「猫の画家、フジタ」のイメージを作っていった。
日本の洋画家たちは、日本の猫の絵の歴史を背負い、どう猫を描いたか。
藤田を中心に、猫の絵画史をたどる。
…というような内容と思いました。違ったらすみません。
金子信久著「日本の動物絵画史」の延長線上にあるような展覧会だと思った。
以下、印象に残った作品をいくつかピックアップ
藤田嗣治作品では…
35 藤田嗣治《二匹の猫を抱く少女》1955年 厚紙、油彩 個人蔵
手のひらに乗るくらいの小さな作品。
猫と少女の絵が、藤田お手製の額に入っている。
藤田は気に入った作品には自分で額を作ったそう。(31《動物宴》の額も藤田作)
また、自身の作品のミニチュアもよく作ったとキャプションにある。
初めてミニチュア作品を見たが、いいなあ!
小さいけれど"フジタ"がギュギュッと詰まっていて、可愛らしいのに存在感もある。
他の作品も見てみたい。
12 藤田嗣治《自画像》1927年 紙、ドライポイント 下関市立美術館蔵
藤田の後ろからピョコンと猫が顔を出す自画像はいくつか見たことがあるが、今回展示されている作品は、きゅるん♪とした藤田の後ろに威嚇するように猫がいて、守護霊かスタンドのように思えた。
その他の作家の作品では…
54 長谷川潾二郎《猫と毛糸》1930年 キャンバス 油彩 個人蔵
グレーのクッションに手足を伸ばして寝そべるハチワレ子猫。
まっすぐに伸ばして揃えた後ろ足が可愛らしい。
暗い赤い床、薄いグレーの壁、グレーのクッション。白黒の猫と赤い毛糸。
金子信久著「日本の動物絵画史」ラストに紹介されているタローを描いた《猫》見たかったなーと思わないでもないが、ニコを描いたこちらも可愛い!
56 稲垣知雄《歩く猫》1953年 紙、木版 府中市美術館
手足と顔が白いトラ猫が歩いている。表情は読めない。
キャプションに、モデルである飼い猫ナコタンとのエピソードが紹介されていて、読んでから絵を見ると泣きそうになってしまった。
7 菱田春草《黒猫》1910年 絹、彩色 播磨屋本店蔵
永青文庫で《黒き猫》を見たので、こちらも見たかった。
実った柿の枝が重そうに垂れる下に、こちらを警戒するように見ている黒い子猫。
腰がひけていて、今にも逃げ出しそうだが、ほんの少しこちらへの好奇心も混じっているように思える。
《黒き猫》は、こちらがちょっとでも動いたら逃げ出しそうだが、《黒猫》は興味を惹くものを差し出せれば、もしかしたら寄ってきそうな気がする。
ちょい悪そうなスタンラン《二匹の猫》、擬人化が楽しい木村荘八《猫の銭湯》も好き。
終盤は、猪熊弦一郎が続く。
スケッチブックに赤や青で描かれた猫が楽しくて、思わず口角が上がってしまった。
図録は我慢したものの、今展のポストカードが1枚70円で、つい何枚か買ってしまった。(透明ビニールに入っているのは150円とか198円とかします)
ショップの紙袋にも猫の絵がついていてカワイイ。
図録は…書店でも買えるんですよね〜。ちょっと欲しいけど…
府中市美術館『フジタからはじまる猫の絵画史』筑摩書房
3,080円(税込)
ISBN/JAN 9784480874191


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