Z世代に燃え尽きと同じくらい有害な「退屈症候群」が広がっている

Sawdah Bhaimiya,Kai Xiang Teo原文

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日本のオフィスで働く人々。
日本のオフィスで働く人々。
Getty Images
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  • 「ボア・アウト」(退屈症候群)とは、職場での「刺激」が少ないために陥る状態で、ハッシュタグがTikTokで共感を集めている。
  • Z世代は、仕事に退屈していることや、期待と違う職業生活について発信している。
  • ボア・アウトは、燃え尽き症候群と「同じくらい深刻な」問題であり、「静かな退職」にもつながり得る、と専門家は警告する。

職場に入って日が浅いZ世代は、上司とどう関わるかから「静かな退職(quiet quitting)」まで、職場で出会うさまざまな体験をソーシャルメディアで共有しているが、一部には、仕事が退屈だと訴える声もある。

TikTokで4億7000万回以上視聴されているハッシュタグ「#boredatwork(仕事が退屈)」では、若者たちが、職業生活が期待と違っていたという認識を共有している。あるユーザーは、椅子に座ってクルクル回る自身の動画を投稿し、その中でこう語っている。

「初めて会社勤めをして、予想以上のスピードで成長してしまうと、1日の半分はいつも何もすることがない。退屈だ」

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病院で部門秘書として働いているという別のユーザーは、制服姿で仕事中に所在なさげに貧乏ゆすりをする自身の動画を投稿し、こんなテキストを添えている。

「何もしないで座っているだけで、本当に時給20ドル(約2980円)貰えるわけ?」

このような感覚は、Z世代には新鮮なのかもしれない。しかし、仕事中に退屈を覚えることは、古くからある現象だ。職場の専門家たちが「ボア・アウト(退屈症候群)」と呼ぶこの現象は、バーンアウト(燃え尽き症候群)と同じくらい悪影響を及ぼす可能性がある。

テキサス大学の経営学アシスタントプロフェッサー、アンドリュー・ブロドスキー(Andrew Brodsky)によると、ボア・アウトとは、仕事で得られる「刺激」が乏しい状態だという。

「ボア・アウトは、基本的にバーンアウトの対極にあるとされることが多いが、仕事における経験という点では、同じように問題となり得る」とブロドスキーはInsiderに語った。

「人はあまりそのように考えないが、刺激が足りない状態からも、ストレスや否定的な感情が生まれることはある」

独ダルムシュタット工科大学のマーケティング・人事管理学部長で、ボア・アウトの問題に詳しいルート・シュトック=ホンブルク(Ruth Stock-Homburg)は、ボア・アウトは企業では「ほとんど見過ごされている現象」だと説明する。労働者がそうした状況を進んで認めたがらないこともその一因だ。

「ボア・アウトとは対照的に、バーンアウトはイメージが良い。そのくらい熱心に働くことは、我々の社会では高く評価されるからだ」とシュトック=ホンブルクはInsiderに語った。

「一方、ボア・アウトは、本人がそれを隠すのが普通だ」

ボア・アウトを放置すると、労働者は、静かな退職や、意欲喪失への道をたどる危険がある。

ボア・アウトは、仕事における目的意識の欠如に起因

今の人たちは、やりがいを感じる役割をこれまで以上に求めている。

若い労働者にとって、これは特に重要な要素だ。学生向け求人サイト、ハンドシェイク(Handshake)による2022年のリポートでは、18~25歳の求職者を対象とした調査で、「意義のある仕事」は、職に留まる動機づけの上位を占めた。

ボア・アウトが忍び寄ってくるのは、自分のエネルギーが単調な作業に浪費されている、と働く人が感じる時だ。

「給与や昇進といった外発的な動機づけはよく話題になるが、動機づけのなかには、自分の仕事に興味がもてるかどうかという内発的な動機づけもある」とブロドスキーは指摘する。同氏によると、働く人は自身の仕事に関して、十分な多様性やコントロール、自主性を得られていない、と感じている可能性があるという。

一方、シュトック=ホンブルクはボア・アウトについて、「負け組」やパフォーマンスの低い人だけが陥るわけではない、と指摘する。むしろ、ハイパフォーマーの方がボア・アウトに陥りやすい可能性もある。彼らはせっかちで、刺激的な仕事をしたがるからだ。

「静かなやりがい(quiet thriving)」とも呼ばれる「仕事づくり(Job crafting)」は、こうした退屈感を克服するひとつの方法だ、とブロドスキーは言う。「自分のモチベーションや、求めるものに合わせて、自分自身で仕事を作り出そうとする考え方」だという。

「仕事づくり」には、他の従業員のメンターになったり、チームの全員と交流する方法を見つけたり、あるいは、仕事に対する自分の考え方を変えて、仕事が自分にとってより刺激的なものになるよう工夫することなどが含まれる。「どうしたら、この仕事がもっと楽しく感じられるようにできるだろう?」といったことを自らに問いかけるわけだ。

従業員を監視しても、「忙しいふり」をするだけ

従業員に厳しい目を光らせ、その仕事ぶりをテクノロジーを使って監視している企業もある。たとえば、1時間あたりの打鍵数を追跡したり、実際の勤務時間を把握したりするテクノロジーだ。

ボア・アウトは多くの場合、従業員が、「仕事の成果」より「どれだけ長く働いているか」で評価される職場文化に根ざしていると、ブロドスキーは説明する。

実際、人材分析会社Visierが2023年4月に公表した調査結果によると、アメリカでは43%の従業員が、忙しくしているように見せかけるために、必要以上に会議に出席したり、メールをたくさん送ったりする、いわゆる「生産性劇場(productivity theater)」に週10時間以上を費やしているという。

「このように忙しいふりをすることは、仕事をしているように見せかけているだけで、実際には頭を使っていないため、退屈の元となりうる」とブロドスキーは話す。

代わりに、従業員が休憩を取り、動画を観てリラックスしたり、15~20分ほどジョギングをするなど、刺激を得られる活動を行ない、「リフレッシュして仕事に戻れる」ようにすることは問題を生まないはずだという。

また、フランスのEMリヨン経営大学院で組織行動学のアシスタントプロフェッサーを務めるロッタ・ハージュ(Lotta Harju)も、「人を忙しくさせれば退屈が解消される、と思ってはいけない。そんなことはない」と話す。

ハージュによると、ボア・アウトに陥るのは仕事が少ないせいだというのは、よくある誤解であり、仕事が山積みの会社であっても、労働者は退屈を覚えることがあるという。同氏はその要因として、官僚主義や、組織の規制、役割の中での板挟みなどを挙げる。

結局のところ、職場環境をより刺激的なものにすることは、従業員だけの責務ではない。管理職の側も、直属の部下と、進んで「オープンな会話」をする必要があると、ブロドスキーは言う。

「自分の部下に向かって、『あなたの仕事をより充実させるには、どうすればいいだろうか』と尋ねる管理職はめったにいない。しかし管理職は、従業員がより良いパフォーマンスを発揮できるように、彼らの仕事を客観的に見て、より充実したものにする方法を発見できる立場にある。従業員にフィードバックを求めるだけでも、従業員は、自分たちの声が聞き届けられており、職場により深く関与している、と感じることができる」

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