【組織・人材施策設計】静かに進行する「退屈の病」──ボアアウト症候群が組織とキャリアを腐食する
近年話題になっている、ボアアウト症候群について解説します。
■ はじめに:「燃え尽き」ではなく、「乾き尽きる」
今、静かに拡がりつつある職場の病理があります。
それは「やりすぎて壊れる」のではなく、「やらなさすぎて壊れる」。
それが、ボアアウト症候群(Boreout Syndrome)です。
刺激のない業務
意味を見失った時間
人との接点のなさ
成果を測られない評価軸
──こうした環境下で、人はじわじわと壊れていきます。しかも、気づかれないまま。
■ ボアアウトの症状は「バーンアウトと酷似」している
世界保健機関(WHO)が定義するバーンアウトの症状:
情緒的消耗感
疲労・無気力
仕事に対する距離感、シニシズム
成果の低下
これらの症状は、ボアアウトでもほぼ同様に現れます。
唯一異なるのは「外的負荷」ではなく、「内的な無意味感」が原因だということ。
■ 戦略コンサルタントが捉える、ボアアウトの3つの構造的リスク
1. 【人材コストの“サイレント損失”】
企業は、給与を払い続けながら、生産性を失っていきます。
しかも、当人が“壊れている”とは認識されにくいため、パフォーマンスの低下が可視化されにくい。
これは、「損失がP/Lに乗らないまま、続いていく」構造リスクです。
2. 【イノベーション能力の低下】
ボアアウトが蔓延する組織には、心理的な惰性が生まれます。
自ら動かない
他人にも期待しない
仮説や挑戦より、同調と定常を選ぶ
L.E.K. ConsultingのStuart Jackson氏の言葉を借りれば、
「ボアアウトを防ぐ最大の処方箋は、“成長している組織”にいること」
ボアアウトの逆は、“負荷”ではなく、“変化”なのです。
3. 【職場文化の崩壊=静かな「職場の死」】
ボアアウトが進行した職場では、「やる気がない」よりも、「誰もそれを指摘しない」ことのほうが危険です。
1on1で本音が出ない
チームが個人作業化
誰も責任は取らず、だが空気は悪い
これは成果を阻害するというより、文化を腐らせる現象です。
■ 組織が取り得る4つの戦略的打ち手
① 意図的な“成長機会の設計”
昇進や報酬ではなく、「日常の中のストレッチ体験」を増やす。
例:
クロスファンクション任命
ローテーション制度の再設計
新しいツール・業務への実験的関与
② 組織の「変化濃度」を定期的に測る
“変化がなさすぎる部署”にアラートを出すKPIを構築。
新規プロジェクト比率
外部接点回数
新人流入率/異動者数
=変化のなさは“毒”になる。
③ マネージャーの評価軸に「部下の挑戦率」を導入
成果だけでなく、「誰をどれだけ成長させたか」も可視化する必要あり。
④ 社員に“火”を見つけさせる対話
「何をやりたい?」ではなく、「最近、刺激を受けたことは?」と聞く
「あなたの仕事、誰が評価してる?」と、意味を外から与える
■ 従業員側にもできることはある
仕事を変える前に、“視点”を変えられるかを確認する
マネージャーと話す
新しい役割を希望してみる
何にワクワクしないのかを言語化してみる
「退屈で死ぬ前に、自分で火をつけてみる」ことも、立派な自衛です。
✅ 最後に:ボアアウトは“未来からの警告”である
バーンアウトは、過去に無理をした人がなる。
ボアアウトは、未来に希望がない人がなる。
つまり、
「忙しい人」が壊れるのがバーンアウト。
「意味がない人」が壊れるのがボアアウト。
今、組織に必要なのは、
“働かせすぎない設計”ではなく、“何のために働くのかを伝える設計”です。


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