埼玉知事「難民申請に課題」「治安悪化のファクトない」 ビザ問題で

宮島昌英 中村瞬 浅野真
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 埼玉県の大野元裕知事が、日本とトルコとの相互査証(ビザ)免除協定の一時停止を要望する考えを明らかにした。大野知事は29日、難民申請について課題があるとし、「埼玉には難民申請を繰り返しているトルコ国籍の方が多く滞在しており、それに対する不安が(県に)寄せられていることが大きな理由だ」と説明した。

 県は28日に開かれた会議の場で、県選出の国会議員に要望の内容を伝え、支援を依頼した。外務省に今後、要望を伝えたいという。

 日本とトルコは、観光目的などの短期滞在であれば互いにビザなしで入国できる免除協定を結んでいる。大野知事は、2024年の難民申請統計で「複数回申請者」「難民不認定者」「仮放免者」がいずれもトルコが国籍別で最多だったことに触れ、「トルコ国籍の方の難民申請について課題があり、入国の際に対応していただくしかない。トルコ国籍の方を排除するというわけではない」と述べた。

 なぜこのタイミングでの要望になったかを問われた大野知事は、今年5月から同じような発言をしていたとし、「(外国人問題が争点の一つになった参院選とは)全く関係ない」と述べた。

 県などによると、県内の川口市や蕨市には1990年ごろからトルコ国籍のクルド人が住むようになった。現在2千~3千人が暮らしているとされる。難民認定の申請を認められないまま、入管施設への収容を一時的に解かれた「仮放免」の人も少なくない。

 県警が24年に検挙した全ての刑法・特別法犯のうち外国人は1125人(8.8%)。最多はベトナム国籍の398人(3.1%)、トルコ国籍は51人(0.4%)だった。トルコ国籍のうちクルド人が何人かはわからない。大野知事は「治安が不安定化しているファクトはあまりないが、治安に対して不安感を抱いている方が多い」と強調した。

 川口市の奥ノ木信夫市長は29日、取材に対し「知事の要望は理解できる。仮放免制度も見直すべきだ」と訴えた。

 クルド人との共生を訴える市民団体「在日クルド人と共に」の温井立央代表理事は、「(要望の)根拠が極めてあいまいという印象だ。行政の長が特定の属性と不安を結びつけることは、差別や偏見を助長しかねない。今後の影響が心配だ」と話した。

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この記事を書いた人
宮島昌英
さいたま総局|埼玉県政担当
専門・関心分野
国内政治、日本史、大相撲
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    西岡研介
    (ノンフィクションライター)
    2025年7月30日16時20分 投稿
    【視点】

    〈大野知事は「治安が不安定化しているファクトはあまりないが、治安に対して不安感を抱いている方が多い」と強調した〉「治安が不安定化しているファクトはあまりない」にもかかわらず、行政の情緒的な対応は危険極まりない。  これまでに極右やレイシスト

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