新刊『本読むふたり』は第二のデビュー作です
新刊『本読むふたり』が発売されました。大学生がSNSで読書アカウントをはじめたことで、本の魅力にのめり込み、運命的な出会いをするという物語です。
この本は、ぼくの"第二のデビュー作"となりました。
ぼくは2014年に初めての本『世界一即戦力な男』を書いて、作家デビューしました。そこからたくさんの本を書いてきました。どれもタイプの違う本です。
『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』では文体模写。
『ニャタレー夫人の恋人』では古典の翻案。
『タイム・スリップ芥川賞』では対話劇。
それぞれ違う書き方で、違うジャンルの本になりました。「ぜんぶ違う本にしてやろう」と意図したわけではありません。書きたいものを書いていたら、自然と異なるジャンルや表現に挑戦する形になりました。
そして、2025年に『本読むふたり』。書き下ろし小説は初めてです。
この本の構想を思いついたのは、もう何年も前です。作家はいろんなアイデアを持っていて、頭のなかにストックしています。最初のアイデアは「読書アカウントをテーマにした小説」ということだけ。そこからすこしずつ磨いて、一冊の本に仕上げていきました。長かった……。
たまたまですが、この小説にはこの10年で培ってきた技術をすべて入れています。文体、作劇、会話、それからレトリックやユーモア、リズム感。
文章を書き進めているうちに、だんだんとふしぎな感覚を覚えてきました。身体がウキウキするような、走り出してしまいそうな昂揚感に包まれている。いったいなんだろう、この感覚は?
楽しい。とにかく楽しい。
それまでやってきた点と点が線になっていって、ひとつの大きな絵を描いているかのようだ。そう、ぜんぶ伏線だったんだ。そう思えた瞬間、これまでのキャリアがつながった。
ぼくがいままでやってきたことは、間違っていなかったんだ──。
この本を書きながら、ぼくは自分の人生が新たなチャプターに入ったことを感じました。作家として、あたらしい物語をつむぐ自由を実感しています。だから、"第二のデビュー作"なのです。
このさきになにが待っているのかは、まだぼくにもわかりません。だけど、その未知こそが、ぼくにとって最大の楽しみです。それは、荒野なのかもしれない。でも、ぼくは進んでいく。『本読むふたり』をたずさえて。
この本は、ぼくにとって新しい章のはじまりとなる作品です。そして同時に、あなたに読んでいただくことで完成する物語でもあります。本を愛するふたりに、そっと寄り添ってみてください。
ページをめくれば、あなた自身の物語と重なる瞬間がきっと訪れます。


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