ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第103話:嵐、牙となりて全てを喰らう

 ※※※

 

 

 

 ──おやしろは破壊されたものの、三羽烏・アルネが死亡したことで、団員たちは散り散りになって逃亡、ないし忍者達によって捕縛された。

 全ての作戦が終わった後、メグル達は再び”さじんのやしき”に集っていた。

 そして、一部始終を話すと──アルカは複雑そうな顔で目を伏せるのだった。

 確かに恐怖心を抱く程の異常性を持った妹ではあったが、それでも血を分けた存在。

 自ら命を絶ったのには、少なからず心を痛めていたのだろう。

 

「そう、ですか……アルネが……」

「……まぁ、その何だ。気にするな、とは言わねえけど……あいつはあいつなりに、守りたいモンがあったんだろ」

 

 そう言って、メグルは自らを納得させるしかなかった。

 敵とはいえ目の前で自死を遂げたことが、少なからず彼の心に影を落としていた。

 

「……主君の為に自分を殺すことで情報を守ったでござるな……」

「何で。最初っから死ぬくらいなら、こんな事しなければ良いのに……」

 

 アルカは拳を机に叩きつけた。

 

「……赤い月を、あいつらが手に入れて、それで幸せで終わりなら……まだ良かったのに」

 

 彼女は口惜しそうに言った。

 ヒャッキの人間は、サイゴクに恨みを持っている。

 赤い月を手に入れれば、そのまま勢い付いて攻め込みにかかるはずだ。

 そもそも、赤い月自体、正体の分からないブラックボックス。本当に無限の豊穣を齎すのかすら定かではないのである。

 そんな不確かなものに縋り、そして命を賭ける。それが今のテング団の実情だ。

 

(俺だってどうにかしてやりたいって思うけど……どうすれば良いのか分かんねえよ……)

 

 アルカの暗い顔を見て、メグルは胸が締め付けられるようだった。

 

「アルカさん。メグルさん。しょげてる場合じゃねーッスよ」

 

 そんな中、暗い空気を打ち破るべく口を開いたのはノオトだった。

 

「……下手したら死んでたのは、この町の人たちだったかもしれねーんス。あんた達はよくやったッスよ。守ったんスよ、この町を!」

「……この町を……俺達が」

「そうでござるな。一番大事なことを忘れていたでござる」

 

 キリは前に進み出て、頭を下げる。

 

 

 

「此度の戦い、本当にご苦労でござった! 本当にかたじけないでござる!」

 

 

 

 確かにおやしろは破壊された。

 しかし、結果的に町は守られ、そしてテング団達も散らすことが出来た。

 決して忍者達だけの力では守れなかった、とキリは感じていた。

 

「……何と礼を言えば良いか分からない。故に月並みな言葉になってしまう。だが……これだけは言いたかったでござるよ」

「キリさん……俺の方こそ。ありがとうございました。一緒に戦ってくれて、本当に心強かったです」

「ん……そうだね。居てくれて良いって、言ってくれてありがとう」

「……皆殿」

「雨降って地、固まる。厳しい戦いだったが、よくぞ乗り越えた小童たち!」

 

 キョウが笑みを浮かべる。

 一先ずは全員が無事であることを喜ぶべきだ、と言わんばかりに。

 

「後は、他のおやしろだが──」

「──速報!! 速報!!」

 

 次の瞬間だった。

 忍者達が、しゅっと飛び出す。

 いずれも動揺を隠せない様子だった。

 

 

 

「”なるかみのおやしろ”と、”ようがんのおやしろ”、共に破壊されて……キャプテンが……ッ!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「こ、これが、ギガ、オーライズ……ッ!?」

 

 

 

 ハズシの身体は、毒に犯され、もう動かなかった。

 消えゆく意識の中、壊れたおやしろと、イヌハギを見るしかなかった。 

 その傍らには紫色に身体が腫れあがったリザードンが、泡を吹きながら横たわっている。

 そしてヌシであるブースターも、オーラを抜き取られたことでぐったりとしていた。

 歯が立たなかった。メガシンカも、そしてヌシのオオワザも。

 

「惨めだなキャプテン」

 

 下手人であるルカリオの身体は、紫色の装甲に覆われ、不気味な一本の角が額から生えている。

 両の腕からは、毒液が漏れ出しており、地面を溶かしていた。

 ヒャッキ三大妖怪の一角・ウガツキジン。 

 その腕は毒手。ありとあらゆるものを貫く魔の腕。

 

【ルカリオ(ギガオーライズ) いてつきポケモン タイプ:氷/毒】

 

「ウガツキジンの毒を受けても尚喋ることができるしぶとさに免じて、命は見逃してやる」

「待ちなさい……ッ!!」

「赤い月は、もうじきに某達の手に渡る。それだけの話だ。後は……アルネとタマズサがしくじらなければ、それで良い」

 

 そう言い残し、イヌハギは去っていった。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

(カッカッカ!! 面白い!! 面白いじゃねぇか!! まさか”マガツフウゲキ”が破られるなんてなァ!!)

 

 

 ──その日。

 シャクドウシティでは、サイゴクの歴史に残る最大の戦いが繰り広げられていた。

 片や、セイランシティ・キャプテンにしてサイゴク最強の男・リュウグウ。

 片や、テング団・三羽烏にしてヒャッキ最強の男・タマズサ。

 彼らのぶつかり合いは、数時間にも及び、余波だけで木々を薙ぎ倒していく程であった。

 最初こそ、タマズサの放ったオオワザ”マガツフウゲキ”によって蹂躙されるかと思われたが、ラグラージはあろうことかその渦に向かって逆回転しながら突貫し、竜巻を相殺して打ち消したのである。

 それを実現したのは、間違いなくラグラージの屈強な筋肉、そしてリュウグウの育成であった。

 アーマーガアの鋼の如き身体を拳で打ち砕き、そして攻撃を跳ね返すさまは、サイゴク最強のキャプテンの切札に相応しい鬼人の如き戦いっぷりである。

 

「そのオオワザを、罪無き民に、ポケモンに、そして自然に振るったか……ッ!!」

「罪無き民を蹂躙するのが戦の醍醐味ってモンだろーがよ!! 止めろだなんて言うまいなジジイ!!」

「……ギアを一つ、上げていこうぞ。あまごい!!」

 

 そしてそこに、雨が降り出すことで、ラグラージの速度は異次元のものとなる。

 残像すら残さない勢いで、巨大なアーマーガアに喰らいつき、殴打し、そして頭部に頭突きを見舞う。

 アーマーガアだけではない。タマズサもそうだが、自分よりも格上の相手と戦ったことがないのだ。

 何故ならば、ヒャッキに彼らよりも強い人間もポケモンも存在しなかったからである。

 故に、同格以上の相手との経験が圧倒的に彼らには不足している。

 しかし、それを打ち消す勢いで、ギガオーライズしたアーマーガアのカタログスペックは非常に高い。

 何故ならば、その身から展開された鏡から光が照射され、近付いたラグラージを焼き焦がしていく。

 

(互いにダメージを与えあっているが……この期に及んであの男、まだ本気を出していないな?)

 

 リュウグウの推測は正しい。

 未だにタマズサは余裕の笑みを崩していない。まだ遊んでやっているんだぞ、と言わんばかりに。

 

「いやぁー、あっぱれあっぱれ。流石だぜ。キャプテン? だっけ。まさか此処まで俺様とやり合えるとは思ってなかったワ」

「……貴様こそ、それほどの力がありながら、どうしてこのような非道に手を染める」

「言っただろうが。俺様は戦争が好きなんだよ。この身とアーマーガアだけで成り上がったからな……ッ!!」

 

 アーマーガアはげげっ、と狡猾な笑みを漏らすと──周囲に鏡をばら撒き、そして姿を消す。

 そして、気が付けばラグラージの背後に現れており、強烈な蹴りを見舞って地面に叩きつける。

 しかしラグラージも負けてはいない。吹き飛ばされはするが、すぐさま起き上がってアクアブレイクを見舞おうとする。

 だが、再びアーマーガアの姿は消えて、今度は頭上からラグラージに襲い掛かる。

 

(鏡か! 周囲にばら撒いた鏡……消えたかと思えば、あの鏡の中から飛び出しておるのか……!)

 

 マガツカガミの名は伊達ではない。

 その力は鏡を操る事にある。自らを光に見立て、反射させることで瞬間移動を実現させているのだ。

 幾ら特性:すいすいで、素早さが上がっているラグラージと言えど、瞬間移動する巨体には対応できない。

 リュウグウもまた、鏡から現れるアーマーガアから逃れるのに精一杯だ。

 

(その巨体で動き回るのは、ちと反則じゃのう……仕方があるまい)

 

「ラグラージ、クイックターン!!」

 

 ぶつかってきたアーマーガアに触れると、ラグラージはその勢いでリュウグウのボールへと戻っていく。

 そして同時に、リュウグウは次なるボールからポケモンを繰り出すのだった。

 

「イルカマン! ヤツの能力を下げるぞ──”あまえる”!!」

「きゅいきゅーい♪」

 

【イルカマン イルカポケモン タイプ:水】

 

 現れたのは、愛くるしいイルカのようなポケモンだった。とても、巨大な敵と戦えるようなポケモンには見えない。

 現に怯えており、震えているようにさえ見える。

 きゅいーん、と甲高い声を上げて甘えると、アーマーガアの攻撃力は一気に落ち込んでしまう。

 だがそれでも獰猛さは失われない。そのまま瞬間移動でイルカマンに襲い掛かるが、すんでのところでそれを避けるのだった。

 

「良いねえ、可愛い顔したヤツはナメちゃあいけねえって相場が決まってんのよ!! アーマーガア!! 啄め!! ”ドリルくちばし”!!」

「イルカマン”クイックターン”で戻れい!!」

 

 再び、イルカマンが高速でリュウグウの手元へ戻っていく。

 繰り出されたのは──ラグラージだった。

 

「何度出てきても同じ事だ!!」

「アーマーガアだけで戦ってきたと言うちょるが……一人だけでは成し遂げられぬことが、この世には山ほどあるのだぞ」

 

 再び鏡に入り込み、瞬間移動してラグラージに襲い掛かるアーマーガア。

 しかし、その鷲掴み攻撃も、もう屈強な筋肉に通ることはなかった。

 肉の鎧にアーマーガアの爪は通らず、逆にラグラージが飛び出して頭突きを見舞う。

 

「”アクアブレイク”ッ!! これで防御は崩したぞ──ッ!!」

「へえ……さっきのヤツの”甘える”が効いてるのか。だが、関係ないねェ!!」

 

 更にアーマーガアの速度が上がる。

 鏡を四方八方にばら撒いていき、高速で動き回り、その刃の如き羽根でラグラージを次々に傷つけていく。

 そして、トドメと言わんばかりに嘴を回転させ、ラグラージに突き立てるのだった。

 

 

 

「”ドリルくちばし”!!」

 

 

 

 それが致命傷となった。

 ラグラージはぐらり、と身体を揺らし──そのまま倒れてしまう。

 

「おいおいお終いか? 随分と大したことなかったな!」

「……成程な。確かにメガシンカでも、こやつに立ち向かうのは難しいやもしれん。しかし──」

 

 ラグラージをボールに戻しながら、リュウグウは帽子をぐっと押さえてタマズサを睨む。

 

 

 

「……聊か気が早いのう、若造」

 

 

 

 次なるボールが繰り出されたその瞬間。

 アーマーガアの身体は地面に叩きつけられていた。

 何が起こったか分からない、と言う顔でタマズサはリュウグウを睨む。

 

「速い──ッ!?」

「”ジェットパンチ”。イルカマンの拳は光速をも超えるぞ」

 

【イルカマン(マイティフォルム) ヒーローポケモン タイプ:水】

 

「……ワシの奥の手の奥の手じゃよ」

 

 それは、先程の可愛らしい姿からは一転。

 屈強なヒーローの如き姿となって、アーマーガアの前に立ち塞がる。

 

 

 

「先に言っておく。ワシはイルカマンを出して負けたことは一度も無い。ヨイノマガンもアケノヤイバも──こやつには勝てなかったからのう──乱打”ジェットパンチ”」

 

 

 

 再び、音も光も置き去りにした一撃がアーマーガアを捉え、地面に叩き伏せる。

 それが、何度も何度も何度も、ラッシュで叩き込まれる。

 鎧を砕き、羽根を叩き割り、そして顔面をへしゃげさせ、嘴を曲げる。

 巨大さが仇となり、全てが的だ。

 鏡の鎧に覆われたアーマーガアの身体はたちまち、スクラップと化す。

 

「重みを知るんじゃな。自分達が今まで傷つけてきたものたちの……痛みと苦しみをな」

「ッ……重み……ねぇ」

 

 地面に転がったアーマーガアは、最早戦える状態ではない。

 勝負はあった──そのはずだった。

 

「……くっ、くくく、カッカッカ!! 良い!! 良いね!! 確かに俺様ァ、今までアンタほど強いヤツと戦ったことはなかったぜジジイ!! 認めてやるよ!! あんたが今まででナンバーワンだ!!」

「もうアーマーガアは戦えんぞ。諦めて降参せい」

「……何言ってやがる? 此処からが面白いんだぜ、俺様のアーマーガアは!! いや、テングの国の伝説の妖怪・マガツカガミの力は!!」

 

 アーマーガアの周囲に鏡が現れる。

 それをすぐさま割るべく飛び掛かるイルカマンだったが、それらが放つ光を前に、目がくらみ、怯んでしまう。

 げげげっ、と不気味に笑うアーマーガアは起き上がり、そしてイルカマンを捕食者の瞳で見据える。

 周囲を舞った鏡には、全てアーマーガアが映り込んでおり、更にそこに鏡面のアーマーガアが映り込む。

 合わせ鏡。複数の鏡が対となることで、鏡面に映った存在が途方もなく増えていく──

 

 

 

「こっちも本気を見せてやるよ。第二のオオワザ──”むげんあわせかがみ”ッ!!」

 

 

 

 次の瞬間だった。

 アーマーガアの姿が、一気に分裂した。

 その様を見て、リュウグウは絶句する。

 ヨイノマガンのように、影を使って分身したわけではない。

 アーマーガアという存在そのものが増えたようだった。

 しかも、増えた彼らは全て無傷そのものである。

 数は──全部で6匹。代償として、1匹1匹の大きさは小さくなってはいるが──

 

「な、何じゃ、どうなっておる……!?」

「鏡の世界って知ってるかジジイ。このオオワザはな……文字通り、鏡の世界からアーマーガアを引きずり出して召喚する技だぜ」

「ならば最初の本体を叩きのめすまで!! ジェットパンチじゃ、イルカマン!!」

「分かってねえなあ。幾らそのモンスターでも、この数に勝てるわきゃあねぇだろが!! 戦いは質と量、両立してこそだぜジジイ!!」

 

 ──その力は弱体化していない。むしろ、小型化した分小回りが利くようにさえなっており、実質的な強化だ。

 全てが本体同様の戦闘力を兼ね揃えているのだ。

 殴りかかったイルカマンだったが、1匹が背中に”ドリルくちばし”を高速で喰らわせて地面に叩きつける。

 そして、アーマーガア達は空高く飛び、全員がオオワザの態勢に入るのだった。

 

「さあて。6体分……”マガツフウゲキ”、今度は受け切れるかなァ!?」

 

 竜巻が放たれ、イルカマンを、そしてリュウグウを飲み込んだ──

 

 

 

【アーマーガアの マガツフウゲキ!!】

 

 

 

 ──かに思われた。

 

 

 

【シャワーズの むげんほうよう!!】

 

【サンダースの ホノイカズチ!!】

 

 

 

 強烈な水ブレスが竜巻にぶつかり、そして黒い稲光の束が炸裂し、竜巻の勢いを抑え込む。

 その隙にイルカマンは、リュウグウを抱えてその場を離脱。すぐさま周囲の木々は薙ぎ払われ、辺りは更地と化すのだった。

 オオワザを抑え込んだのはシャワーズ、そしてサンダースの二匹だ。

 

「おお、オヌシ達……間に合ったか……ッ!」

「ぷるるるるるー」

「ビッシャァァァーン!!」

「ほぉ? ヌシ達も揃い踏みか」

 

 オオワザを抑え込んだ二匹を称賛するように、タマズサは手を叩く。

 

 

 

「──だが無意味だぜ。全くの無意味だ」

 

【アーマーガアの むげんあわせかがみ!!】

 

 

 

 アーマーガアは、更に増殖し、遂には空を覆い尽くした。

 ヤミカラスの大群は不吉の象徴と言われるが、そんなものを優に超す勢いだ。

 想像以上の増え方を前に、今度こそリュウグウは言葉を失ってしまった。

 6匹ならば、まだ何とかなるかもしれない、とリュウグウは考えていた。

 しかし、この数は──最早戦いにならない。

 最初からタマズサは、こうなることが分かっていて余裕の笑みを浮かべていたのだ。

 

(ハ、ハハハ、そりゃあ元の世界で無敵になるわけじゃわい……!! 奴一人だけで軍隊が作れるんじゃからのう……!!)

 

「鏡と鏡。合わせりゃ映ったものは、実質的に無限に増えていく。そりゃあ小さくはなっていくがな……()()()()()()()()()んだぜ、アーマーガアはな!!」

 

 あの全員が、元の本体同様の戦闘力を持つのだ。

 待ち受けているのは確実な敗北と、死だ。

 そして──ヌシ達に呼びかける。

 

「すまぬ、シャワーズ、サンダース。こやつは……オヌシ達が居ても勝てん」

「ぷるるるるー!?」

「ビッシャーン!?」

「……後はワシが何とかする。ポケモンを、人々を……守り抜けい」

 

 2匹は首を横に振る。

 しかし──リュウグウは力の限り叫んだ。

 

 

 

「ゆけい!! ヌシポケモンはサイゴクの希望! 絶やしてはならん!」

「──さあて、これでくたばってくれよ──”マガツフウゲキ”!!」

 

 

 

 大嵐が吹き荒れる。

 サンダースはシャワーズの首を咥える。

 全てを察したのか、シャワーズは激しく鳴いた。

 

「ぷるるるー!? ぷるるるるーっ!」

「……シャワーズ。楽しかったぞ。オヌシと過ごした日々は」

「ビッシャーン!!」

 

 サンダースは、俊足でその場から離れる。

 風が吹き荒れ、全てが崩壊していく中、リュウグウは──仁王立ちで「戻ってくれい」と呟き、イルカマンをボールに戻す。

 最後まで抵抗する、と言わんばかりに首を横に振っていたイルカマンに「すまんな」とボール越しに呼びかけた。

 

「……オヌシ達は、ボールの中。きっと無事じゃろう。ワシは……ボールの中に入れんからのう」

 

 かたかた、とボールが揺れ動く。

 

「……長い長い人生じゃったが、こんなに心残りな幕引きになるとはのう」

 

 

 

(ユイ君……どうか気に病まんでくれい。ワシが、もう少し強ければ良かったんじゃ)

 

(キャプテンの皆……覚悟せい。まともに戦って勝てる相手ではないぞ、こやつは……)

 

(……メグル君……巻き込んですまんかったのう。せめて、無事でいてくれい)

 

 

 

「なーにが、サイゴク最強のキャプテンじゃ……最後の最後で、心残りも良い所じゃわい」

 

 

 

 独房の中にいる親友の顔が頭に浮かんだ。最後に会っておけばよかった、と後悔した。「きっと、バチが当たったんじゃな」とリュウグウは呟く。

 

 

 

「口惜しいのう……口惜しい、のう──」

 

 

 

 ──嵐が、森とおやしろ諸共、老人を喰らい尽くした。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──その日。

 ”なるかみのおやしろ”は、周囲の森共々跡形もなく、地図上から消えた。

 そして、身元不明、同一人物の老人と思しき遺体が、後から()()()()()見つかった。

 DNA鑑定の結果──()()()()()が、皆の知るセイランのキャプテンのものであることが明らかになった。

 その知らせは、アルネを倒し、クワゾメタウンを防衛したメグル達の元に、おやしろの崩壊と共に届くのだった──




最強、堕つ──
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