MAMOR 最新号

2月号

定価:780円(税込)

 防衛装備品の世界で大きなトランスフォーメーションが起きている今、激変する世界の安全保障環境の潮流に対応した新世代護衛艦『もがみ』がデビューした。なにが先進的なのか、細部にわたってリポートしよう。

 高ステルス性、多機能、コンパクトなど、さまざまなキーワードで語られる『もがみ』。従来の護衛艦と比べ、どのような進化を遂げたのか?

 その特徴をパーツごとに見てみよう。細かなディテールにまでこだわり抜いた『もがみ』から、未来の艦艇の姿が見えてくるはずだ。

艦橋

画像: 各種スイッチやレバー、舵輪などであふれかえっていた従来艦に比べると、モニターが並び近未来の艦を思わせる『もがみ』の艦橋。デジタル化によりスイッチ類も減っている 右写真提供/防衛省

各種スイッチやレバー、舵輪などであふれかえっていた従来艦に比べると、モニターが並び近未来の艦を思わせる『もがみ』の艦橋。デジタル化によりスイッチ類も減っている 右写真提供/防衛省

デジタル化されたモニター画面にさまざまな情報を表示

『もがみ』の大きな目的の1つである省人化は、主に艦の運航を行う艦橋において実現されている。

 従来艦は連絡や雑務も含め10人ほどのクルーが艦橋に詰めかけていたが、『もがみ』の艦橋に配置されるのはたったの4人(最小3人で運航可能)。

 まるで自動車のハンドルのような舵輪を握る操舵員の席の右側に、艦の運航をつかさどる航海指揮官の席、左側にレーダー員の席、そして艦橋で見張りなどの任務に就く信号員が常駐し、艦橋右舷側の端に艦長席がある。

画像: 従来艦(かが)

従来艦(かが)

 少人数で運航が可能になったのは、操舵装置やレーダーの表示モニターといった、従来は個々に配置していた機器類を統合して1つのシステムとしたからだ。機器のデジタル化を推し進め、1つのディスプレー上に情報を集約・表示することで、あらゆる艦内情報にアクセスできるようになった。

CIC

画像: (写真左)従来の護衛艦のCICは、レーダーなど各機器で独立した造り。隊員の役割ごとに座席が決められておりアクセスできる情報は限られる 写真提供/防衛省 (写真右)360度がディスプレーで囲まれた円形のCIC(戦闘の指揮・統制を行う区画)のCGイメージ。各モニターの表示は自由に設定・変更が可能 写真提供/防衛省

(写真左)従来の護衛艦のCICは、レーダーなど各機器で独立した造り。隊員の役割ごとに座席が決められておりアクセスできる情報は限られる 写真提供/防衛省
(写真右)360度がディスプレーで囲まれた円形のCIC(戦闘の指揮・統制を行う区画)のCGイメージ。各モニターの表示は自由に設定・変更が可能 写真提供/防衛省

艦内の機能を集約した新たなCICシステム

 護衛艦の心臓部ともいえる戦闘指揮所(CIC)では艦艇内外の情報を分析し、指揮・命令が発せられる。

『もがみ』では、各部署にカメラやセンサーを設置し、戦闘の管制だけでなく、これまでは運航、操舵や各種機器管理など別々の区画で行っていたものを、CICで一元化できる「トータルシップコントロールシステム(TSCS)」を採用。従来艦の200〜300人ほどの乗員に対し、『もがみ』は約90人で運用される。艦内のあらゆる情報にアクセスできるので、少人数で効果的に艦を運用することができる。

 また、『もがみ』の乗員は生体センサーを着用しており、脈拍をモニタリングしている。これまで緊急時に隊員が直接確認に回っていた乗員の安否もCICで知ることが可能になった。

USV格納庫

画像: 複数のタイヤが設置されたレールが後方にせり出し、USVが発進する。揚収時は、タイヤが回転することでUSVの搬出入が行える。この格納庫では機雷処理用の小型ボートも格納することができる

複数のタイヤが設置されたレールが後方にせり出し、USVが発進する。揚収時は、タイヤが回転することでUSVの搬出入が行える。この格納庫では機雷処理用の小型ボートも格納することができる

機雷処分用のUSVを搬出入するための区画

 これまでの護衛艦にはなかった機能として、対機雷戦能力の導入がある。というのも、鋼鉄製の護衛艦は磁気に反応する機雷が敷設されている可能性のある危険水域に進入することができない。

 そこで『もがみ』では対機雷ソナー・システムを装備し、さらに機雷処分用水上無人機(USV)と、別区画に新型機雷捜索用水中無人機(UUV)も搭載予定。機雷の捜索から処分までの一連の掃海任務をアウトレンジで行うことを可能にした。

『もがみ』に搭載される予定の機雷処分用水上無人機。レーダーを内蔵した小型ボートで、自動で航行しながら水上の情報を収集し、機雷処分を行う 写真提供/防衛省

画像: 『もがみ』に搭載される予定の新型機雷捜索用水中無人機。ソナーを内蔵した小型の潜水機で、自動で航行しながら海中や海底の情報を収集し、機雷処分を行う 写真提供/防衛省

『もがみ』に搭載される予定の新型機雷捜索用水中無人機。ソナーを内蔵した小型の潜水機で、自動で航行しながら海中や海底の情報を収集し、機雷処分を行う 写真提供/防衛省

 UUVはこれまで掃海艦艇で使用していたが、護衛艦に搭載するのは今回が初めて。USVは艦尾に格納区画があり、艦尾の扉を開きタイヤ付きのレールを操作することで、洋上でUSVを発進、揚収することができるのだ。

居住区画

女性用の区画が完全に仕切られ居住性がアップ

『もがみ』のベッドルーム。コンパクトな船体だが、省人化により個々人のスペースが確保されている(写真上)。従来艦では女性隊員専用の居室や風呂、トイレはあったが、男性隊員用の区画とは分けられていなかった

『もがみ』の居住区画は、女性隊員のためのエリアが完全に区切られている。

 ベッドだけでなく、トイレ、シャワーといった区画も、完全に女性専用になっており、男性の立ち入りは禁止されている。いまや女性隊員抜きでの艦艇の運用は考えられないため、双方ができるだけストレスを感じることなく任務に就けるよう、さまざまな配慮がされている。

 ちなみに、従来艦の風呂はくんだ海水を沸かしていたが、『もがみ』の風呂は艦内で精製した真水を沸かしている。

飛行甲版

飛行甲板は、艦載ヘリコプターが離着艦するための区画。周囲が鉄板で囲まれ、ステルス性向上に寄与(写真上)。従来艦はネットのある柵で囲まれている 下写真提供/防衛省

外柵のネットを廃止してステルス性重視の囲いに変更

 艦後部には、ヘリコプターが離着艦するための飛行甲板と格納庫がある。ここにはSH−60K哨戒ヘリコプターが1機格納できる。従来艦は後部甲板をネットの外柵で囲っていた。

 しかし『もがみ』では、ステルス性向上の観点から鉄板で艦艇周囲を囲んでいる。この鉄板は起倒式になっており、必要に応じて動かすことができる。また、艦全体の高さを低く抑えるため、飛行甲板は艦首に向かって緩やかに下がり傾斜している。

食堂

画像: 40人が着席できる『もがみ』最大のスペースである食堂。食事だけでなく会議などにも利用される

40人が着席できる『もがみ』最大のスペースである食堂。食事だけでなく会議などにも利用される 

幹部用の食堂は廃止。食事は全員同じ場所

 海自では伝統的に艦艇内では、幹部曹士は別々の部屋で食事をし、同じメニューでも盛り付けなどが異なっていた。

画像: 従来の護衛艦では、艦長などは士官室で食事をとり、盛り付けも特別なものになることも 写真/近藤誠司

従来の護衛艦では、艦長などは士官室で食事をとり、盛り付けも特別なものになることも 写真/近藤誠司

 しかし省人、省力、省スペースをモットーとする『もがみ』では、全員が1つの食堂で食事をとり、メニューや盛り付けなども同じだ。そのため艦内は和気あいあいとした雰囲気になっているという。

 なお従来の艦艇ではボイラーから発生する蒸気熱を利用して調理を行っているが、『もがみ』には補助ボイラーが設置されていないため、厨房はオール電化だ。

錨甲版

画像: 前甲板の下に位置し、低い天井の下に、巨大ないかりの巻き上げ機(揚錨機)が設置されている錨甲板(写真上)。従来艦『あさひ』(2018年配備)のいかりは、艦首に2つ(赤丸部分)

前甲板の下に位置し、低い天井の下に、巨大ないかりの巻き上げ機(揚錨機)が設置されている錨甲板(写真上)。従来艦『あさひ』(2018年配備)のいかりは、艦首に2つ(赤丸部分)

揚錨機は艦内の専用区画に格納。ハッチを開閉して投錨する

 前甲板の真下に、錨甲板が設けられており、そこに揚錨機など各種機器が装備されている。

 従来の護衛艦ではむき出しだったいかりは、『もがみ』では運航時は艦内に格納し、いかりを使用するときには甲板前部のハッチが開き、そこから投錨する。

画像: 従来艦『あさひ』(2018年配備)のいかりは、艦首に2つ(赤丸部分)

従来艦『あさひ』(2018年配備)のいかりは、艦首に2つ(赤丸部分)

 さらに、これまでの護衛艦は艦首の左右にいかりがあったが、『もがみ』は必要最小限の装備のみでコンパクト化を図った結果、左舷側に1基しか装備されていない。

(MAMOR2023年5月号)

<文/古里学 写真/村上淳>

超・新世代護衛艦『もがみ』発進!

 自衛隊にも、部隊の精強さを表現し、隊員の士気を高めるためのロゴマーク(シンボルマークもロゴマークに含める)がある。

 どれが一番カッコいいか? 編集部が数えただけでも、軽く200個を超える中から、編集部による1次審査で選んだ100個から読者が投票で選んだロゴマークを(MAMOR2025年5月号にて実施)、ランキング形式で「自衛隊ロゴマーク大賞」の「読者賞」として紹介する。

<読者投票・第1位> 第3後方支援連隊(陸上自衛隊)

受賞した第3後方支援連隊は、どんな部隊?

千僧駐屯地(兵庫県)に本部が駐屯する後方支援部隊。所属する部隊に対して、装備品の整備や回収、物資の補給、衛生などの支援を行う

部隊コメント

 広報陸曹の福井3曹です。この度は大賞をいただき大変光栄に思います。部隊が一丸となって後方支援の任務完遂することを表したロゴマークです。今後も任務にまい進します。

<読者投票・第2位> 特殊作戦群(陸上自衛隊)

受賞した特殊作戦群は、どんな部隊?

ゲリラや特殊部隊による攻撃への対処に当たる、陸上自衛隊唯一の特殊部隊。習志野駐屯地(千葉県)に所在している

<読者投票・第3位> 飛行教導群(航空自衛隊)

受賞した飛行教導群は、どんな部隊?

全国の戦闘機部隊に対して「敵役」を演じて戦技指導を行う部隊。通称「アグレッサー(侵略者)」。戦技に関する調査研究なども行う

<読者投票・第4位> 飛行開発実験団(航空自衛隊)

受賞した飛行開発実験団は、どんな部隊?

航空機やミサイルなどの航空装備品に対する試験などを実施する航空自衛隊唯一の部隊。各種装備品が任務に適したものかを確認する試験や評価のほか、試験飛行操縦士(テストパイロット)や技術幹部の教育も行っている

5位以降の読者投票ランキング

5位

No.006 空.ブルーインパルス

6位

No.082 陸.中央特殊武器防護隊

7位

No.062 海.練習艦隊
No.010 陸.第11特殊武器防護隊

9位

No.089 空.宇宙作戦群
No.042 陸.第1空挺団

11位

No.013 陸.奄美警備隊

12位

No.099 陸.中央音楽隊
No.067 海.第2護衛隊群
No.017 海.ホワイトアローズ
No.065 陸.水陸機動団

16位

No.024 海.潜水艦「じんりゅう」
No.034 空.第303飛行隊

18位

No.096 陸.第1普通科連隊
No.039 陸.第9偵察戦闘大隊
No.058 陸.第10師団
No.069 陸.第44普通科連隊

(MAMOR2025年7月号)

<文/魚本拓>

自衛隊ロゴマークに着目!

※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

 陸上自衛隊警務隊には、海外の高官などが自衛隊の市ケ谷地区の施設を訪問する際などに、警護を担当する専門の部署がある。中央警務隊の第2班だ。

 中央警務隊第2班では、月に3、4件、年間で約40件の要人警護を担当している。要人が来日する際には、その1、2週間前から訓練を実施し、警護任務に備える。ここでは、日本を訪れる重要人物を守るための訓練をリポートする。

要人を守る格闘・戦闘能力の向上を目指す「警護体術訓練」

脅威者に、警務官が2人1組で対処する警護体術訓練。警護の際の格闘技の基本となるのは柔道で、第2班の隊員は全員が有段者だ

 要人警護にあたっては、脅威者が突然攻撃してきたときに対処する訓練も重要だ。来日した各国の要人をいつでも守れるよう、隊員はさまざまな襲撃に対して未然に防止するための訓練を日々行っているという。

 訓練を行うにあたり重要視されるのは、警務官たちのチームワークを高めるため、現状について声を出して分かりやすく共有・確認するなど、常にコミュニケーションを徹底することだという。

 さらに、体当たりの訓練を何度も繰り返すことで基本となる動作を習性化し、要人の安全確保のために自然と体が動くようにすることだ。

 そのために主に実施されるのが、「警護体術訓練」と「要人警護訓練」だ。

「警護体術訓練」は襲いかかってくる脅威者から要人の安全を確保するための、警務官の格闘・戦闘能力の向上を図る訓練。

 防衛省の体育館内で行われているこの訓練は、脅威者が正面から接近してきた場合や、胸ぐらをつかまれた場合、物陰から突然出てきた場合など、あらゆるケースの対処法を、「上級格闘指導官」の資格を持つ警務官が中心となり実戦的な指導を受ける。

移動中に現れた脅威者への対処を習得する「要人警護訓練」

画像: 要人警護訓練では、要人を先導する警務官がまず刃物を持った脅威者に対処する

要人警護訓練では、要人を先導する警務官がまず刃物を持った脅威者に対処する

「要人警護訓練」は屋外で実施するが、移動中の要人の前に脅威者が現れた場合を想定し、それに対処する訓練だ。

 VIP車両から降りて移動する要人役を4人の警務官がひし形に取り囲むように警備・警戒する。そこへナイフを手にした脅威者が現れる。

画像: もう1人の警務官が加わり、脅威者を取り押さえるためにサポートをし、2人で脅威者をうつ伏せの状態に押し倒し、後ろ手に手錠をかける

もう1人の警務官が加わり、脅威者を取り押さえるためにサポートをし、2人で脅威者をうつ伏せの状態に押し倒し、後ろ手に手錠をかける

 その瞬間、脅威者に近い警務官は迷わず脅威者のほうへと走って行きすばやく脅威者を取り押さえる。

画像: 残りの2人の警務官が要人を脅威者から引き離し、万が一の危険に備え、盾でカバーしながら車両など近くの安全な場所まで誘導する

残りの2人の警務官が要人を脅威者から引き離し、万が一の危険に備え、盾でカバーしながら車両など近くの安全な場所まで誘導する

 その一方、要人に近い警務官はアタッシェケースを模した盾で要人を守りながら、あっという間に脅威者から引き離し、安全な場所(VIP車両や建物など)へと避難させる。

 各担当の機敏な動作と調和のとれた連携プレーが瞬時に行われる。トラブルが発生した場合、警務官はいち早く要人と脅威者を遠ざけることを優先するのだ。

 これらの訓練を要人が来日する本番当日まで、何度も鍛錬することで、要人の生命・身体を危険から守るのだ。

(MAMOR2025年8月号)

<文/魚本拓 写真/山川修一(扶桑社)>

特別司法警察最前線'25

※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

  

 海上自衛隊の主力装備・艦艇を動かすためには、多くの乗員が必要だ。そのため、海上自衛隊には「海上訓練指導隊群」という、艦艇の乗員を鍛える指導者たちが集まったインストラクター役の部隊が存在している。

 なかでも横須賀海上訓練指導隊は艦艇での指導のほか、シミュレーターによる訓練指導も担い、修理時など艦艇が稼働しないときも部隊を強くする体制を作っている。この訓練と同隊にしかない立入検査班の指導を紹介しよう。

最新のシミュレーターで、より強い艦艇乗りを育てる

画像: シミュレーター「F-NAT」。風速は最大50メートル、波浪は最大20メートルなどの設定が可能で、艦橋からの視界を模擬した映像も天候に合わせ変化する

シミュレーター「F-NAT」。風速は最大50メートル、波浪は最大20メートルなどの設定が可能で、艦橋からの視界を模擬した映像も天候に合わせ変化する

 横須賀海上訓練指導隊には、現在、日本で唯一ここにしかないシミュレーターがある。その名も「F−NAT」。正式名称を「教育訓練用統合環境装置」といい、F−NATは「Frigate multi-purpose Navigation Trainer」の略称だ。

 同様のシミュレーターに「NAT」(Navigation Trainer)があり、これは第1術科学校(広島県)や防衛大学校(神奈川県)にもあるが、F−NATは2022年から就役している最新の『もがみ』型護衛艦の艦橋を模擬できる。シミュレーターの処理能力も向上しており、よりリアルな模擬航海ができるのが特徴だ。

「NATに比べ、視認性が向上しました。海図も最新の状態に更新できるため、港湾施設など陸上の目標は現地で目視する状態に近くなり、リアルです。

 また少人数で運用できる『もがみ』型に合わせ、艦橋からの操艦だけではなく、レーダーやソナー、通信などが集約され指揮・発令を行うCIC(戦闘指揮所)からの操艦にも対応するなど、総合的な航海訓練が可能です」

 こう説明するのは、同隊の尾崎2等海佐。

画像: シミュレーターの脇には天候や時間などを調整するコントロール室がある。指導官の指示に合わせ、さまざまな海洋環境を作り出す

シミュレーターの脇には天候や時間などを調整するコントロール室がある。指導官の指示に合わせ、さまざまな海洋環境を作り出す

 取材時は護衛艦『ゆうぎり』の若手乗員が航海術の演習をしていたが、周囲を取り巻く多数のリアルな民間船舶や、スピーカーから聞こえる風や、汽笛の音が臨場感を増し、乗員たちの間で飛び交う報告や号令を聞いていると、実際の艦橋に乗り込んでいるような錯覚を覚えるほど。

「夜間や濃霧、荒天などさまざまな状況を模擬できますし、日本列島周辺の大部分の海域をシミュレートできるので、初めて行く基地、港に向かう際の事前演習もできます。また訓練を終えた後は、艦艇を上空から斜めに見下ろした鳥かんの視点に切り替え、操艦訓練を客観的に振り返れるのも特徴です」と尾崎2佐。

「一人ひとりの動きだけではなく、チームとして互いにどうカバーするかを見て指導します」と教育のポイントについて語る尾崎2佐

 艦艇に初めて配属される若手海士に対し操舵や見張りなどの基本を学ばせる教育、海曹や幹部の指導力を向上させる教育、艦艇長をはじめとする乗員の異動などに伴うチームワークのビルドアップまで、幅広く用いられているF−NAT。今日も艦艇乗りを鍛える「トレーニングジム」の役割を果たしている。

不審船対処など、危険な任務に臨む隊員を鍛える

画像: 緑色の帽子と腕章を着用しているのが指導官。私服を着ている不審船の乗員役も、指導官が務め、訓練を重ねる

緑色の帽子と腕章を着用しているのが指導官。私服を着ている不審船の乗員役も、指導官が務め、訓練を重ねる

 各護衛艦の乗員によって編成される「立入検査隊」。必要に応じて不審船に隊員を乗り込ませ、積み荷や船舶書類、船内区画の検査を行う「立入検査」を担っている。

 基本的な教育は第1術科学校で行われるが、立入検査隊員の訓練指導を行うのは、同隊指導部の「立入検査班」だ。

「任務をまっとうし『無事帰ってきました』という報告を受けたときがうれしいですし、やりがいを感じます」と語る草場曹長

「私たちは各護衛艦から集まった隊員に訓練指導を行います。初級者から上級者まで隊員のレベルに合わせた指導を実施し、任務を果たせるように教えます」と語るのは、立入検査班の先任指導官である草場海曹長。

「訓練は1つひとつの動作に意味があり、原理原則を理解してもらうことを重視します。立入検査は時として身を危険にさらす任務。修得することが多々あります」と続ける。

画像: 停泊中の作業船を使って立入検査の訓練を実施。けん銃を構え、不審船の乗員にどう対処するかを指導する

停泊中の作業船を使って立入検査の訓練を実施。けん銃を構え、不審船の乗員にどう対処するかを指導する

 立入検査隊の隊員は、ソマリア沖・アデン湾に艦艇を派遣して行われる海賊対処行動でも活躍。隊員は海賊船にボートで接近し、時には移乗して対応する。

「立入検査隊は有事でなくても実任務を行うことがあります。それだけに全員が生きて戻れることが一番大切。指導官として厳しく指導するのは、彼らのためを思ってのことです」と草場曹長は付け加えた。

(MAMOR2025年7月号)

<文/臼井総理 写真/村上淳(相馬2佐) 写真提供/防衛省>

艦艇乗りをより強くするトレーニング・ファイル

※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

 自衛隊体育学校・第1教育課の教官直伝、6つに割れた腹筋、いわゆるシックスパックを作り上げるための筋トレ3種目を自衛官が実演してくれた。

 腹直筋、腸腰筋、腹斜筋を鍛えるトレーニングは、キツイが効果が期待できること間違いなし!

1:クランチ

腹直筋の上部に作用し、上腹部の引き締めが期待できる。

画像: 上腹部を引き締める!「クランチ」【MAMOR 2025年2月号 あなたも筋肉チャレンジ】 youtube.com

上腹部を引き締める!「クランチ」【MAMOR 2025年2月号 あなたも筋肉チャレンジ】

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2:Vシットアップ

腹直筋全体に効き、腸腰筋にも作用して体幹強化が期待できる。

画像: 腹直筋に効果アリ!「Vシットアップ」【MAMOR 2025年2月号 あなたも筋肉チャレンジ】 youtube.com

腹直筋に効果アリ!「Vシットアップ」【MAMOR 2025年2月号 あなたも筋肉チャレンジ】

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3:バイシクルクランチ

腹直筋、腹斜筋、腸腰筋に効き、脂肪燃焼、体幹強化も期待できる。

脂肪燃焼、体幹強化も!「バイシクルクランチ」【MAMOR 2025年2月号 あなたも筋肉チャレンジ】

youtube.com

(MAMOR2026年2月号)

あなたも筋肉チャレンジ

 自衛隊には数多くの部隊があり、中には自隊のテーマソング「隊歌」を持つ部隊もあります。その歌詞を読むと、国を、地元を愛する気持ち、家族、仲間を想う気持ちが表されて、各隊員の心意気が伝わってきます。

 そんな隊歌にあなたも触れてみてください。

東北唯一のヘリコプター部隊「第2対戦車ヘリコプター隊」

画像: 八戸駐屯地公式サイトより(https://www.mod.go.jp/gsdf/neae/hachinohe/sp/sp5-400-troops.html#2ah)

八戸駐屯地公式サイトより(https://www.mod.go.jp/gsdf/neae/hachinohe/sp/sp5-400-troops.html#2ah

 八戸駐屯地(青森県)に所在する陸上自衛隊の部隊。東北唯一の対戦車ヘリコプター隊で、装備する対戦車ヘリコプターや観測ヘリコプターで防衛警備、災害派遣などの任務を行う。

「第二対戦車ヘリコプター隊隊歌」の歌詞を紹介

海峡のぞむ 八戸に 集う武士 幾百ぞ
トウ ロケット ガン 胸に抱き
ほふく飛行で 敵求め 初弾必中 我が愛機
我等はみちのく
第二対戦車ヘリコプター隊

八甲田 名久井 仰ぎみて 海鳥友に 回転翼たて
操 ガナー 連携 必勝の ヘリボン掩護 対ヘリ戦
地上の友と いざ征かん 我等は戦う
第二対戦車ヘリコプター隊

階上 田子 練武の地 有無の言葉 必通し
無事故の整備 我が誇り ファープの変換 軽やかに
必勝求め 肩を組む 我等は輝く
第二対戦車ヘリコプター隊

「第二対戦車ヘリコプター隊隊歌」の歌詞を解説

(1):対戦車ヘリコプターが武装できる3種の弾種で、「トウ」は対戦車ミサイル、「ロケット」は70ミリロケット弾、「ガン」は20ミリ機関砲のこと

(2):操縦席(後席)とガナー席(前席)が連携して任務を遂行する

(3):ヘリコプターにより部隊を機動・展開させるヘリボン作戦において、対戦車ヘリコプターが空中から火力で掩護をすること

(4):前方展開地に、不足した燃料と弾薬を再補給できる場所(ファープ)を開設すること

東北唯一の部隊としての矜持が伝わる隊歌

画像: 東北唯一の部隊としての矜持が伝わる隊歌

「1991年ごろ、当隊が新編された際に、部隊の団結強化と士気向上のために作られた隊歌だと聞いています」と答えてくれたのは、第2対戦車ヘリコプター隊(2対戦ヘリ)の本田3曹だ。

 名前は分からないものの、作詞者は当時の2対戦ヘリの隊員、作曲者は当時の第9音楽隊の隊長だという。

「1番の歌詞にある『ほふく飛行』とは、低い高度で地面を這うように飛行する操縦技術のことです。また3番の歌詞にある『有無の言葉 必通し』は、指揮の命脈といわれる通信班の任務で、有線通信と無線通信を必ず通じさせるという意味です。どちらも陸自の航空科職種で唯一の火力戦闘部隊である2対戦ヘリの、不変の矜持を感じさせる歌詞ですよね」と本田3曹。

 個人的には、3番の最後の「我等は輝く第二対戦車ヘリコプター隊」の歌詞がお気に入りなのだとか。部隊では、検閲の前に隊員の士気向上の目的で歌ったり、定年退職や異動する隊員の「見送り」の際に歌ったりするそうだ。

 部隊としてのプライドと伝統を守り抜こうという思いがあふれる隊歌を、ぜひ聴いてみて!

(MAMOR2025年3月号)

<写真提供/防衛省>

これが部隊のテーマソング

※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

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