新生!クッキングモンスターウィンプ!
当初の予定とは全く別方向に吹っ飛んでいったプロットですが余裕です、最初は彫刻家のはずでした
『モンスター不世出……解明!』
『討伐対象:FM'sクリサリス"戦災孤児"』
『エクゾーディナリーモンスターが撃破されました』
『称号【我戦故我在】を獲得しました』
『称号【終戦の暁】を獲得しました』
『不世出の奥義「戦砕琥示」を習得しました』
◆
とりあえずハイパーローテンションモードになった俺はFM'sクリサリスの消滅からすぐ、その場に倒れ伏す。いやはや、激闘の末に勝者が倒れ伏すシチュエーションとかイベントシーンでしか実現しないと思っていたがこんな形で体験することになるとは。
思えば今まで何度か使ったが完全な勝利で終わったのはこれが初めてか? よかったなクリムゾン頭蓋骨、これが勝利の美酒の味だ。
「おおぉぉぉ……サイナ〜、サイナ〜……」
「応答:回収作業を開始します」
さすが、出来るインテリジェンスは違うね。
迅速にFM'sクリサリス"戦災孤児"のアイテムを回収し、インベントリアと同期しているために俺のアイテムを回収できるサイナは散らばった武器も片付けると俺の方へと近づき……ん? 何故そこで思案する?
「……もしもし?」
「言及:どちらにせよ死ぬのでは?」
「どちらにせよって………いや、ちょっと待て」
回収して引っ張ってくのが面倒だからここで死ねと!? ちょ、待てコラポンコツ!! お前仮にも契約者に対してそんな使い捨ての紙コップみたいな……! ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てなさい!!
「いや誰が可燃ゴミだ!!」
「発想の飛躍に異常性を感知」
「いや待てサイナ……っそう、リデュースだ。この際リユースでもいい、人的資源だって……あー、使い潰していいわけじゃない」
「教導:契約者……いわばリサイクルです」
「潰す前提から離れろおばか!!」
むっ、百足と蜘蛛による戦闘の余波がこっちに!
「オイ馬鹿何やってる、勝手に消えるゴミなんて不法投棄しときゃいいんだよ!!」
「…………………了解」
シチュエーション次第じゃ涙も流せる言葉だが、生憎今のシチュエーションは「自分を捨てろと叫ぶゴミを呆れた目で見るサイナ」の図だ。
とはいえここにいては巻き込まれる、迅速にシグモニアの「戦域」から抜け出したサイナを尻目に、さてどうしたものかと思考を巡らす。まぁ出来ることと言ったら遺言を残すくらいだが……
「いい加減停戦協定とか結んだら?」
断末魔の呻き声を上げる前に倒れてきたフォルトレスに潰されて死んだ。本当仲悪いなこいつら……
……
…………
………………
「あっぶねぇ……そういやこれで使い切りだったな……」
がしゃん、と崩れ落ちたテントだったものから這い出しながら、男に戻った俺はぼやく。くそう、旧サンラクをすり潰して新サンラクにリサイクルってか? ペットボトルじゃねーんだぞ。
「だが勝利した……くくく、エクゾーディナリースキル……悪くなさそうだ」
不世出のスキル「戦砕琥示」、"戦災孤児に由来するそのスキルは倒した時の装備が原因なのか元々なのか、拳撃系スキルだ。
内容としては拳が命中した際に強力なノックバックを起こす。文章にすれば単純だが、攻撃した際に対象へ与えるダメージが高い程に衝撃の規模は小さくなる……だが、その逆もある。このスキルは与えるダメージが少ないほどに衝撃波の規模が増す。
生きてた頃のやつを思わせるじゃじゃ馬スキルだが面白い、衝撃波の上限が気になるところだが……検証よりも先にやる事がある。
「あー、なんだ……また住む?」
「わたしのねどこ……」
あー……完全に入り口が崩落してるな。ここが普通の荒地とかなら掘り返す可能性もあったかもしれないが……あー、うん。歩く地雷原と歩く城塞と歩く列車砲が不定期にドンパチするシグモニア前線渓谷じゃなぁ……発掘作業は無理だな、ついでに言えばあの「枝毛」も諦めるしかない。
惜しいといえば惜しいが、少なくとももう一箇所アレがある場所を知ってるのでこの際【ライブラリ】辺りを焚き付ければなんとかなるかな……いや、それよりも問題はウィンプの寝床だな。多少強くなったとはいえ、ここら辺はレベル99でも心許ない高レベル地帯だ。
「もうこの際前線拠点まで連れてくか……?」
征服人形の拠点はアウト、あそこだと居住じゃなくて収監とかそっち系になる。蟲人族の里は? いやダメだな、話が通じるだけであいつら蛮族だから。となると元エルフの里……うーん、あそこ現状唯一のレベルキャップ解放可能な場所だからユニークコンテンツを置くのはなぁ………ぬぐぐ、やはり前線拠点しかないか? スカルアヅチ内部なら、いやしかしあそこは生産職の顔役みたいなの繋がりで規模のデカいクランがよく入るんだっけか……いや? 待てよ?
「前線拠点、前線拠点………新大陸、支部……」
「な、なによう」
「ウィンプ、確かお前最近料理とかもやってたよな?」
調理器具をねだられたのは覚えていたからな、つまりこのヘタレユニークモンスターは料理に関する技能を持っている。それがスキルに裏打ちされたものなのか、NPCのフレーバーなのかはこの際どうでもいい。
重要なのはゼロではなくイチであるということ、説得材料の種火があるなら後はロールプレイで業火に変えてやればいい。
「方針が決まったぞウィンプ、お前は……そうだな、流浪の料理人ウィンプだ」
「は、はあ?」
「いいか、そのまんま前線拠点……人間の集まってるところにお前を連れて行くとほぼ確実に命を狙われる」
ユニークモンスターだからな、確実に「倒してみよう」となる奴が出るに決まってる。それを悪いとは言わないが都合は悪い。スカルアヅチは人の入りが多い、教会も聖女ちゃんが常駐してるのもあって同様……だがあそこなら人通りはそんなに多くないし何より俺の「顔」が利く。
「だから俺の職場に匿ってもらう、あそこはなら行ける気がする」
こいつのドヘタレっぷりを見るに……あ、そうだ測定できるじゃん俺。ええと?
「……バカな」
「どうしたんですわ?」
カルマ値………75。
馬鹿な……仮にも、仮にもお前……ユニークモンスターが……無尽のゴルドゥニーネが、人一人殺した犯罪者以下のカルマ値ってお前……!!
「お前もうちょっと無益な殺生とかさぁ……」
「むえきって……それわたしにもとくがないじゃない」
「ごもっともで」
どうせ殺るなら有益に殺っときたいよね、分かるよ分かる。俺も昔は殺し屋、暗殺者、狂戦士、高校生として常に有益な行動を心得て奔走していたものだ……いや最後の高校生に関しては時は金なり、という事がどれだけ洗っても落ちないくらい身に染みたが。
「問題提起:個体名サミーちゃんは如何するのですか?」
「流浪の料理人がモンスターをテイムしちゃいけないなんてルールはない、そうだろう? それに……」
あそこにいる馬鹿どもに比べりゃ健全健全、あいつら今超不健全な動機のために健全に働いてるらしいからな……俺も無関係じゃないのがまたなんとも。いや、忘れよう。
「目指すは前線拠点「蛇の林檎」新大陸支店……!」
蛇を隠すなら蛇の中、ってな。徹夜行軍だ!!
Q.つまりどういうスキルなの?
A.こら! と相手の頭を軽く叩いたら衝撃波で相手の首が折れる