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タンホイザーの地平に真理を見る

素振りの甲斐あって一発ホームランでギャラトラ編を片付けました、スペースオペラは長引くというのが今回の教訓です

───まぁ本当に裏切ったら即座にヘルメットを爆破するからなぁ


日本の資本を牽引する一角であろう男がまるで小学生の悪戯か何かのように物騒な事を漏らした事を俺は忘れない。

絶対不殺、されど絶対必中の弾丸が素顔丸出しなGカップムネ肉氏に命中……その身体が吹き飛ばされる中で、俺とパイソンは動き出す。


『とどめを刺せ!!』


「言われずとも!!」


「あ、まって回復ー」


「あ、はい」


だが、こちらが王手を指すよりも先に動いたのは眉間にヒットエフェクトを貼り付けたGカップムネ肉氏だった。


「ドローン起動!!」


「何っ!!」


備えが良すぎる、さてはどちらにせよ敵対したら即座にこちらを始末するつもりだったか鶏肉さんめ……!!


「やってくれたな……どうせグレートウォールの爆発も仕込みだろう!」


『ご明察、ダメージはあるが計算されてのものだ』


「大砲二門か……これは、勝敗も決したか……」


『白旗でも振るかね?』


力ない笑みを浮かべて艦長の椅子に掛け直すGカップムネ肉氏、その笑顔を見て脳裏に凄まじく嫌な予感が駆け抜ける。

あの笑顔には既視感しか感じないのだ、具体的に言うといろんな奴がこれと同種の笑みを浮かべる状況に被害者加害者第三者として立ち会ったことがあるしなんなら当事者として自分がこの笑みを浮かべたことがある。


この、脱力から辛うじて笑顔だけ浮かべたような口の形と、それと反比例するようにギラギラと輝く眼差しは──────


「成る程、うん、分かった。ならば諸共に死ね」


──────自分諸共他者を破滅させるヤケクソの笑顔だ。


「何この揺れ!?」


回復すらも億劫とばかりに椅子に腰掛けたGカップムネ肉氏が何か操作した直後、明らかに平常のそれとは程遠い揺れがテラトン級全体を襲う。

凄まじく嫌な予感がしつつも、ブラインドドラゴンとは別のハンドガンでドローンを撃墜しながら恐らくこの船を二人称視点で見ている愛板氏に怒鳴るように問いかける。


「予想と違うことを願いたいけど状況は!!」


『予想通りだよ、最悪なことにね……中枢に過負荷をかけて自爆特攻か!!』


「ああその通りだとも! この際諸共に死ね! みんなで仲良く再スタートだ!!」


クッソが、俺も絶対同じことやるから素直に罵れねぇ!! そりゃ気に食わない奴が満身創痍で自分が死を宣告されたら諸共死ねと足首掴むわな!! 資産があっても人が追い詰められた時にやる事は一緒ってなぁ!!


『止められるか!?』


「無理だな、完全に引きこもった重課金プレイヤーを仕留めるのにかかる時間とこの船が自爆する時間、どっちが速いか比べてみるか!?」


ここまで来て自爆両成敗なんて湿気た結末になんぞさせるか、俺は晴れやかな気分でシャンフロ再開するんだよだったらどうする勝ちの目を見つけて拾い上げろ!!


「パイソン! なんか案あるか!!」


「テラトン級のことはテラトン級に任せるしかないでしょ! はい愛板さん!!」


『一隻は収縮再現終焉砲ビッグクランチ・レーザーで叩き落とす、だがその船は近すぎる! 旗艦で撃墜できたとしても余波でこちらも堕ちかねない………!』


「よーし十秒くれ状況まとめる!!」


射程距離の問題でこの船は落とせない、この際俺達がこの船ごと諸共に消し飛ぶプランも受け入れようかと思っていたところだが、先手を取られたのが痛過ぎた。

Gカップムネ肉氏は激突させてから自爆するつもりなのか、中枢機関のオーバーロードがまだなのかは分からないが、今の状況は詰みとまではいかないが王手の一手前と言うべきか……


「…………要するに、今欲しいのは「距離」と「時間」……そうだな!?」


『要約すれば、な! だがどうする、手があると言うのか?!』


「外に出られればワンチャン!!」


こいつ(・・・)の使用条件は宇宙空間にプレイヤーが直接出向く必要がある、どうにかして外に出られれば………だがテラトン級の装甲は内側からブチ抜くにしても容易ならざることは明らか。そして出口を今のGカップムネ肉氏が素直に開いてくれるとも思えない。いや、マジでどうする!?


「………外に、出られればいいの?」


「おう!」


「なら今度は私が時間をもらおうかしら、マチョヶ崎君!!」


誰!? ああ、細マチョヶ峰君のことか! 今の今まで後ろで微動だにしないから機能停止したものとばかり思っていたが、どうやら最後の最後に戦力として使うために温存していただけだったらしい。

軋みながら立ち上がったバトロイドに危険を感じたのか、俺たちを攻撃していたドローンがターゲットを変えるがそんなナメた真似をすれば俺がフリーになるというもの。


「させるかよっ!!」


別宇宙(コスモ・バスター)じゃ腰だめ撃ちは必須技能だ、いるところにはいる達人級(TA勢)ともなれば腰だめマシンガンで狙撃するとかいうド級の曲芸すら出来るという……俺はアサルトライフルでしか腰だめ狙撃が出来なかった。どんな界隈にも人外プレイヤーっているもんだ。


「行け行け行け! そんな長くは食い止められんぞ!!」


「支援感謝感謝……あ、そうだ」


「なんだよ!!」


猛攻の中にねじ込んだ僅かな間隙で振り向けば、そこにはバトロイドの背中にしがみついたパイソン。奴はひらひらと手を振ると、ただ一言。


「シャンフロでも宜しくね? ツチノコさん」


「はぁ!?」


身バっ……いやどこでバレた!?

それを問い詰める間もなく、マチョヶ崎君が全身から火花を散らしながら人工筋肉に渾身の力を充填して走り出す。


目指すはGカップムネ肉氏……ではなくこの部屋の壁、厳密には外の光景が見えるガラス張り、比較的防御の薄いテラトン級の泣き所……!!

別れを告げるために振られた手にはいつの間にか全員が持っていた爆弾……そして。


「っしゃあ!!!!」


何か一瞬、物凄くドスの効いた声が聞こえた気がしたのだがそれは発生した爆発によってかき消え、この場にいたドローンや俺を吹っ飛ばした風圧が反転してこちらを引っ張るような力を持ったことでパイソンの自爆が目的を達成したことを悟った。


「っ!!」


引き寄せる流れに逆らわず、しかし身を委ねるのではなくむしろこちらから乗りこなしてやるのだとばかりに全力疾走。ドローンの攻撃は最低限の回避で対処、後ろで何かGカップムネ肉氏が叫んでいるがもう遅い。


気づけばパーティ欄には俺の名前しか残っていない、ウルフも死んだようだが今の今まで敵の増援が来なかったという事実がやつの奮闘を伝えてくる。ならば迷う事はない、他の奴らが体張った以上はこちらも無茶を振って勝利をこじ開ける!!


「集まれバドゥガモス! 来やがれ超次元! そして、開けタンホイザー!!」


宇宙空間に身一つで飛び出した俺は、制限時間の課せられたメット内の空気を思い切り吸い込んで超文明自律構築金属制御端末を起動、眼下で突撃していくテラトン級ではなくその最後尾、さらにその先を見据える……変化はすぐに起きた。



───バドゥガモスにはある「疑問」があった。

あのメタルクラゲは基本的に母体と呼称される巨大な個体から子供のように通常個体が這い出してくる事で出現する。なのぇバドゥガモスに対する最も有効な攻撃はマザーの撃破、ここまでは誰でも思いつく。

だがこのマザー、ある程度弱らせると逃走行動に入る。そして一定時間内に倒せなかった場合……消えるのだ、それも明らかにテレポートと思しき動きで、だ。


では消えたマザーはどこに消えたのか? そしてそもそもバドゥガモスとはどこから現れるのか。



その答えは目の前にあった。



「こ、これは……」


亜空間に繋がっているのだろうワームホールから這い出してきたマザーにも劣らぬ巨体を誇る四色四体のバドゥガモス達。

黄金と、白銀と、白金と、金剛……四つの輝きが円を描いて渦を巻き、もはやクラゲの姿すら見えないほどの速度で廻る輝きが圧縮されるかのように中心点に収束して、光が消え………俺はその光景を生身の肉眼で直視していた。


「事象の地平線……」


バドゥガモスとは、失われた超宇宙とは、無間の宇宙に見遣るあの地平の先にあるものは───!!


四体のシークレットバドゥガモスによって形成されたあのオブジェクトの名はタンホイザーゲート、全出力を以って猛進していた大質量がそれ以上の力に捕捉され、ゲートへと引っ張り込まれていく。無論人間一人分しかない俺の身体などいともたやすくゲートへと引っ張り込まれていく。


そして丸に一本横線を入れたようなデザインのゲートに触れる直前、俺は世界が割れる音を聞いた。いや違う、疲労の極地にあったテラトン級の船体に亀裂の入った音だ。

愛板氏の旗艦が最後の最後まで温存していた切り札……収縮再現終焉砲ビッグクランチ・レーザーと対をなす単純火力においては最強の膨張再現黎明砲(ビッグバン・レーザー)、もう一つの五万円砲があまりに巨大な窮鼠へ引導を渡したのだ。



着弾地点が熱量に耐えきれず溶けていく、負荷に耐えきれず引き裂かれていく超重量、艦内から噴き出した酸素を喰らって紅蓮の花が咲く。

ついには真っ二つに割れたテラトン級がタンホイザーゲートに取り込まれていくのを先にゲートを潜りながら眺めていた俺は脳裏に何か引っ掛かりを覚えた。


「あ……?」


なんだ? 割と未練など欠片もないやり遂げたぜエンドに行けた気がするのだが、何が引っかかっている?

この際スパッと死んでテラトン級貰ってリスタートした方が色々楽な気がするがいやそれじゃない、今この光景を見て何かが引っ掛かったわけで……こういう時はちゃんと目で見たものを整理するべきだ。


船、テラトン級、宇宙船、超文明、ゲート……いや、テラトン級は消していい、これはこのゲームだけのワードだ。このゲームでやりたい事をやりとげたのならば、違和感は他ゲーに起因するはず。


船、宇宙船、超文明、ゲート……ゲート、ゲート、この場合は新展開とかそういうニュアンスな気がする。つまりカテゴリが違う。


なんらかの新展開を起こす要因として船、宇宙船、超文明……………優れた文明の船、文明のアイテム、文明、文化、人の手で作られたもの───


「あ」


その時、Gカップムネ肉氏の無念の断末魔を代弁するかのような特大の爆発が起きた。光と衝撃波が俺の身体を容易く吹き飛ばし、HPをゴリッと削りながら俺の身体がタンホイザーゲートのさらに先へと吹き飛ばされていく。

だがその光と衝撃波を知覚した情報が脳内で別のものに変換されて、雷の如く脳裏を駆け巡る。


ああ、そうか。なんでこんな、簡単な………ウェザエモンと同じタイプだと思っていた、違う、クターニッドと同じタイプなんだ。手の届く位置にゴールがあるだけで、鍵は最初から──────


そこでエリア移動のロードが入ったのか、俺の視界はホワイトアウトした。





……


…………


………………



モスコミュール宙域にて勃発した大艦隊同士による戦争行動は双丘の大艦隊盟主、Gカップムネ肉及び連合所属プレイヤー、ディアホーンの戦死によって終結した。

甚大な被害を受けた愛板であったが、想定外の名所が誕生したモスコミュール宙域の利権を勝ち取った事でその勢力を戦争前以上に盛り上げていく事になる。


此度の戦争……のちに「アンロック戦争」と呼ばれる一大プレイヤーイベントにて個人あるいは少人数によるによる強襲(ゲリラ)の有用性を示し、愛板陣営として多大な貢献をしたプレイヤー達には、愛板自らが課金したテラトン級宇宙船が進呈された。



───だが、その中に「ガゼル」の名を掲げていたプレイヤーの姿はなかった……


Q.サンラクどうなったん?

A.身体が消し飛ぶ前に超次元にワープしたので裸一貫縛りエンドコンテンツ攻略が始まった

なお愛板はタンホイザーゲート解放(モスコミュール宙域の利権を得たおかげでゲートに関するあれこれを独占できる)の礼も含めてテラトン級二隻をサンラクにプレゼントした、死んでリスポンすれば受け取れる。


Q.パイソンはどこでガゼル=サンラクと見破ったん?

A.578話

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― 新着の感想 ―
サンラククルーズ名乗ってからの乗船希望者だったのね
むしろサンラク名乗りで気づいたこそ、相乗り申請したのかなパイソン…… シャンフロ屈指のプレイヤーなら活路を見いだせるとか
前回でGカップムネ肉氏に『サンラク』って名乗った時にバレたやん!って思ったらもっと前に自分で『サンラク』使ってたな!!
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