一点張りサイバーマッスル
アイスボーン 楽しい(遺言)
テラトン級戦艦。戦艦と名はついているが、生産プラントに特化した船も存在するしNPCへの好感度稼ぎのために豪華客船のようなカスタムが施されたものも存在する。あくまでも「戦闘能力も備えた超巨大宇宙船」がこのゲームにおけるテラトン級だ。
俺は最近別ゲーでテラトン級をさらに超える地方サイズの超超超弩級恒星間移動用宇宙船を見たのでちょっと物足りなさを感じているが………いや、それよりも重要なのはテラトン級戦艦の種類だ。
この超弩級サイズの宇宙船だが、基本的に建造できるルートはそのテラトン級の「型」によって変わってくる。
例えば愛板氏が初手にブッパした際に砲台として機能した三番艦「グレートウォール」は兵装型にカテゴリされる、船ではなくあのビッグクランチ砲を運用する前提で砲撃システムを戦艦として建造したようなテラトン級だ。これはNPCを乗船させられる数が少ないし、戦闘機なども搭載できないと制限が多い代わりに瞬間的な破壊力は戦争初日に示された通りだ。
では本題、俺達が現在攻略しているディアホーン氏保有の二番艦「六角御殿」は一体如何なる「型」に分類されるのか………
答えは見た目通りというか、複数のギガトン級パーツをくっつける連結型と呼ばれるタイプだ。でっかいネジやら装甲やらを組み合わせて一隻の船を完成させるのではなく、既に完成品の戦艦を最小で五、最大で三十連結することで初めてテラトン級として定義される。六角御殿は当然三十連結、このタイプでは最大規模のテラトン級戦艦だ。
『このタイプのテラトン級は連結に使われているギガトン級の数だけ役割を分散させることができる。建造コストはかかるがテラトン級自体の保有数を少なくできるメリットもあり……』
「つまり?」
『便宜上「本体」と呼称するが、本体は常に中心にある。そしてテラトン級は船と船同士のゲートだけは閉鎖できない仕組みになっている』
「マップデータは手に入れたわ、地図一枚手に入れるのに随分と時間かけちゃってごめんなさいね?」
「つまり………」
「最短ルートで残り2ブロック、それでこの六角御殿の中枢に辿り着ける」
「いいねェ! ボス戦だ、盛り上がってくるじゃねェか」
戦争二日目終盤、主導権を奪ったことで心強い味方となった筋肉ドロイド………全員で相談の結果「マチョヶ峰君」と命名されたバトロイドの力もあってか、破竹の勢いで進撃した俺達はついにこの六角御殿に王手をかけようとしていた。マチョヶ峰君ではない。
彼のおかげで攻略は大幅に楽になったと言える、なにせ「力技でぶち破る」という選択肢が増えただけで時間も手間も減ったり増えたり………ま、まぁ総合的に見れば楽になったと言える、だろう。
「で? 自爆でもさせればいいのか?」
『いや、これ単体との戦いならそれでもいいかもしれないが今回は中枢に到達した時点で二つの作戦を実行する』
作戦?
あまりに自然に会話に入ってきているが、恐らくこの中で最もやることが多いはずの愛板氏はそんなことを微塵も感じさせない声音で作戦内容を説明し始めた。
『いいかね、テラトン級戦艦というものはあれはあれで制約が多い。例えば一人のプレイヤーが複数のテラトン級を運営する場合、必ず一番艦とそれ以降の艦は転送ゲートで繋がっていなければならないし、複数のプレイヤーによる連合が組まれた場合は、各プレイヤーの保有する一番艦は他プレイヤーの一番艦と直通しなければならない』
当初はNPCのストライキ用のデメリットだと思われていたが、今この状況を見ればその意味合いはもう全くの別物になっていることは誰だって分かるだろう。
乗り込んでくる獅子身中の虫という存在が、単なるNPCのやんちゃを手助けする要素を艦隊の終焉を招きかねない危険なギミックに変えたのだ。
『運営も中々に味のあるアップデートをするものだ……恐らく向こうもセキュリティを強化しているだろう、だからこれは時間との戦いだ』
「……作戦を聞こうか雇用主殿」
『此度の戦争における紳士協定についてはすでに知っているだろう、だがアレには一つだけ穴がある』
「敵艦、敵プレイヤーへの攻撃的アクションの禁止……あ、そういうことか」
「どういう事だよガゼル」
ちょっと待て、それってつまり……え、このゲームそんなことも出来るようになってるの?
『鍵は君だパイソン君、今日の戦争期間終了十分前に私の方から三艦使って大規模なハッキング攻撃を六角御殿に仕掛ける。私の船は宇宙戦闘に特化しているが流石に連結型のテラトン級一隻のセキュリティリソースを全て釘付けにすることくらいは出来る』
「あー……つまりぃ、外側と内側両方からハッキングを仕掛けてこの船を乗っ取る……ってことぉ?」
「え、出来るのそんなこと!?」
ウルフの驚愕も尤もだ。厳密には違うが基本的に宇宙船のサイズはセキュリティの強度に比例する。如何に最高級のハッキングアイテムを支給されているとはいえ、一人のプレイヤーがテラトン級をハッキングするのは不可能だ……テラトン級は、だが。
『理論上は可能だ、一隻型のテラトン級では無理だがギガトン級の集合体である連結型であれば本体を除いた全ての連結ギガトン級のリソースを剥げばパイソン君が担当するのはギガトン級一隻分のセキュリティリソースになる』
「それでも無理なんじゃない? ギガトン級を十分で攻略だなんて……」
『いや、主導権を奪う必要はない。ハッキングして欲しいのは本体が他の構成ギガトン級に対して発する命令コードの発令だ』
……
…………
………………
二日目、モスコミュール宙域にて繰り広げられる大激戦もあと十分で終わる……依然として警戒はしているもののどこか気の緩みが出始めるその瞬間に、それは仕掛けられた。
『電子攻撃開始、作戦時間は十分……十中八九、六角御殿最奥にはガーディアン……船を守る最後の砦がいるはずだ』
「言っとくけど、私に回避とかそういう自己対処は求めないでね? 別ゲーでも基本的に後衛張ってるんだから」
「心配ない、大船に乗ったつもりでいろよパイソン」
「おいガゼル、もうここ大船だぞ」
「……開くぞ、ボス戦だ」
「頼むよマチョヶ峰君……」
さーて、何が出てくるかな。
◇
「ふっふっふ……どうやら私の蜂の巣に不躾な虫が入り込んだようだ……だが彼奴等の命運もここまでよ、六角御殿の最終防衛ライン「XX-H ヤマタヒュドラ」三体による面制圧で蜂の巣の塵になるがいい……!」
『おお、ディアホーンさんアレを三機とは中々やりますな』
「はっはっはっ! なぁに、ポケットマネーですよ」
『うーむ、我々的には本当にポケットマネーだから威張っても特に何にも感じませんねコレ……』
『ん? しかし大丈夫なのですかロッカクさん』
「何がです?」
『ヤマタヒュドラって確か有線接続だから、真正面から突っ込んでくるNPC相手ならともかくプレイヤー相手だと割と弱点丸出しのような……』
「………………ふぅーーーーーーーー」
『ディアホーンさん、まさか知らずに………!?』
『総員六角御殿に攻撃用意』
「待った! 待った!!! まだ分からない! まだ分かりませんよムネ肉さん?!!」
アプデ後ギャラトラあるある
カタログスペックと実際の性能に齟齬がある、コンセント抜けば機能停止する殺戮兵器とかね