戦艦崩しの一芸人達
『どうだね? 六角御殿の行動範囲と資金から推定した戦闘用ドロイドの脆弱性は……』
「成る程確かに、これなら下手に武装するよりグラップルする方が効率いいかも」
「俺が殴っても踏ん張るのにガゼルが捻るとポコポコ首が取れんの納得いかねー!!」
「関節だっつってんだろ……あとせめて顔面狙え」
「もうやだ隊長、SFやってるはずなのにこいつらだけ原始的格闘術なんだけど……」
「……ま、近接技能なんてパラメータが出来たらそりゃそこに注ぎ込む奴もいるだろう」
ごめんなさいね、最近アクションゲーばかりやってたからつい癖で。まぁでも操縦技能も取ってるからパワー極振りのライノほど脳筋じゃないはず。
機先を制し、挙動を遮り、異形を正す。破邪の聖拳イアイフィスト流は貫手のストライクで関節技も出来る。
アプデ後ギャラトラは「動作技能」にパラメータが複合されている、というちょっと特殊なステータス方式なので同じ動きとはいかなかったが、STR、AGIの複合パラメータである「近距離戦闘技能」とDEX、VITの複合たる「小、中型機操縦技能」のお陰か、不満の少ない仕上がりになっている。
「パイソンからの連絡は?」
「なんか「仕事が増えた」ってボヤいてた」
「……という事は、「仕事」がこっちに来たということだろう。ガゼル! ライノ! お客さんだ!!」
「バカ言えフォックス! 来客者はこっちだろ!!」
俺が繰り出す友達の家でのくつろぎっぷりは水晶群蠍君達のお墨付きだ、なにせ俺がちょっと顔を出すだけで赤ん坊からおじいちゃんまで総出でサッカーしに殺到するくらいだからな……もはや生涯の友と言っても過言ではないのでは? 照れるぜ。
『おお、異星獣制圧用大型バトロイド。それも人工筋肉の格闘型とは中々シブいチョイスだ……』
「具体的に言うと!?」
『動きが生き物クサイんだ、そのタイプ』
気軽に話しているが、おそらく今この瞬間も一秒毎に人間千人消し飛ばしてもお釣りがくるような大火力の応酬を繰り広げているのだろう愛板氏の言葉通り、アンドロイド系カラーの持つ「整い過ぎたフォーム」とは異なる、金属よりは柔く金属よりもしなやかな人工筋肉で構築された3メートルはあろう装甲と筋肉の巨人がこちらへと近づいていた。
その後ろには殺戮特化アンドロイド、さぁどうする………?
「ライノ、あれと取っ組み合い出来る?」
「流石にパラメータ以上のパフォーマンスは無理だろ」
「関節叩いてもこっちの手が折れそうだからなぁ」
「じゃあ銃使う?」
『ちなみにあのタイプの外殻は素材が装甲系戦艦のやつの流用だから』
「艦載転用系じゃないと貫けない奴じゃん!!」
「あんま弱音を吐くなウルフ……俺も心が折れそうになる」
いやいや諦めるには早いぞフォックス&ウルフ、ここで突然覚醒して戦艦砲撃級のパンチを習得できれば……いや無理だろどうするんだ。
割と詰みに追い詰められた俺達に引導を渡すべく、クマとゴリラを混ぜて装甲で固めたような筋肉ドロイドがゆっくりと腕を振り上げ……そして比較にならない速度で振り下ろした!!
『いい身体してるわね、喧嘩屋さん達? ちょっと腕相撲でもしない?』
「ライノ行けよ、俺はパワーとスピードを程よくテクニックで活かす主人公タイプだからパワータイプが適任だろ?」
「俺、21世紀初頭漫画よく読むから知ってるぜ、こういう時に力を試してやるぜ! とか言って挑むパワーキャラって八割噛ませだよな」
「二割になれよ、今がチャンスだぞ」
『ロッカクさん美味しい蜂蜜とセキュリティの緩いお人形をありがとうパーンチ!!』
振り下ろされた巨腕は俺達ではなく、腰に捻りが加わったことで後ろからついてきていた殺戮特化ドロイドの群れをボウリングよろしくまとめて吹き飛ばした。
筋肉ドロイドの頭上に表示されたアイコンは持ち主であるディアホーン氏の色を塗りつぶすようにこちら側のカラーへと変わっている……成る程、こういう弱点もあるのか。
「すっげぇ、あれ盾にして進むだけで勝てるんじゃねぇか?」
『んー、テラトン級複数保有者として悪いニュースを伝えてもいいかね?』
『今見えたけど聞くわ』
『最低でも100機は作れるんじゃないかな、そいつ』
嘘だろ重課金、群れちゃいけないタイプのNPCだろこれは。
のっしのっしとおかわりされた三機の筋肉ドロイドの姿を肉眼でも確認した俺達は思わず笑顔が引きつる。
『あー待って、同型なら背中のエネルギー供給筋肉をブチ切れば倒せるわね。へー、人工筋肉がケーブルでありポンプなのねぇ』
「だとよ、流石に打撃じゃ壊せないよなぁ……」
「残念だったな、俺はナイフを持っている」
「うわ! 重装甲加工用断裁ナイフ!? クッソ高い奴じゃん……」
『譲り渡した分の働きはしてくれたまえよー』
無論!!
刃渡りという変えようのない制限はあるが、斬れ味に関しては絶対の信頼が置けるって事は実質相手のVITを完全無視できるってことだ。
こちら側についた筋肉ドロイドの股下を潜り抜け、巨躯故に律儀な縦列でこちらへと近づいてきた的筋肉へと肉薄する。無論殴りかかってくるわけだが……
「もうさ、定石ですら安い言葉なんだよな……」
パワー型の敵が振り下ろした腕は隙であり足場であり……天才も鬼才も凡才も、こういう敵をデザインすれば必ず組み込む必然の如き流れ。中にはこの必然を意図的に崩す奴もいるかもしれない、だがそれは「それが正しい」という前提の否定だ、結局のところ必然から逃れられた訳ではない。
「まず一体!」
「ようガゼル! 俺もボウリングがしてぇから上手いこと避けろよな!!」
「事前に! 言え!!」
このゲームにおいて個人携行できる武器の上位ティアーは何かしらテラトン級戦艦に関わりを持つ。
何者にも媚びず、与せず、対しないとある老人が保有する銀河最強の刀は一振りで戦艦に切れ込みを入れると噂されているし、そうでなくとも戦艦の装甲を加工する為の特殊なカッターと同じ素材のナイフであったり、艦載砲をそのまま振り回すガトリングキャノンであったり……つまるところを言えば俺以外の奴らが使ってるものもまた、尋常ならざる武器という事だ。
「踏ん張らねぇ人形なんざ小指でも倒せるってなぁ!!」
噴進打撃作業槌、よくある推進力で加速して殴るハンマー……ではなく、例えるなら棚の引き出しが勢いよく飛び出してくるかのように前後へ稼働する打撃面をジェットエンジンによる噴射で叩きつけるという……まさしく噴射そのもので殴りつける生産購入可能な中では最高クラスの打撃武器が機能停止した敵筋肉ドロイドを仰向けに吹き飛ばす。
テラトン級戦艦を相手に文字通り大工作業するためのハンマーだ、たかだか3メートルの金属と人工筋肉の塊に受け止められるはずがない。逆に言えば反動でライノが面白い独楽になって吹っ飛んでいたがそれは無視。
突然自分の方に倒れこんできた敵筋肉一号に対し、後ろにいた敵筋肉二号はダメージの最も少ない対処……つまり受け止めるというアクションを選んだ。
「なんていうか、俺も近接極振りにしたくなってくるわ、爽快感ぱねーもん」
弾丸が飛ぶ、こちらについた筋肉ドロイドも含めれば実に四体の巨体を正確に避ける弾丸が殺戮特化ドロイドを次々に倒していく。なにせ先程からどうにもヘタれた言葉が多いがキルスコアが一番高いのは間違いなくウルフだ。
複合照準機能付銃、プレイヤーが顔に装着する(あるいはヘルメットに組み込む)専用のゴーグルとセット運用する事で保有、あるいは同盟を結んだテラトン戦艦搭載のセンサーのシステムを間借りしてほぼ確実にプレイヤーが狙った場所に当てられるというFPSプレイヤーが見たら噴飯ものか失笑もの間違いなしの銃……結局のところ最後にものを言うのは艦隊戦だからこそ許された超性能大型拳銃。
要求パラメータが恐ろしく高い以外はアクションが不得手なプレイヤーでも百発百中になれるそれと、本人の優先順位のつけ方もあってか雑魚狩り担当として既に百体以上はキルスコアを稼いでいるだろう。
敵筋肉二号の背中を這うケーブルを切断、こうなれば最早流れ作業。倒れる敵筋肉一、二号に動きを封じられた敵筋肉三号は鋼の屍を踏み越えてタックルをかました味方筋肉ドロイドによって転倒、あとは流れ作業で処理。
「っし、先進もう」
『ドア開けといたわよー、あと私も移動するからちょっと待って』
「いやー、殺戮特化のアンドロイドが弾薬ドロップしてくれて助かるわー」
「なぁこれ反動どうやればいいんだ?」
『一応チュートリアルでは反動で逆回転して尻で叩く、みたいなことは書かれていたがね』
そんな中、ぽつりとフォックスが呟いた。
「……なんか俺だけあまり活躍していないような」
五分後。
「「『「助けてフォックス!!」』」」
「どいつもこいつもパズルゲーに弱すぎる……!!」
プレイヤー用のミニゲーム的セキュリティシステム、制限時間内にクリアできなければ輪切りか、蜂の巣か、強制退去か……しかしながらその全てを最速でクリアした狐頭のプレイヤーは、今度もまた鮮やかな手つきでパズルを解いたのだった。
愛板やGカップムネ肉は所謂プレイヤー間での争いや協力などを楽しむ対人勢
中にはひたすらこの宇宙の果てを目指す求道勢もいる