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五万円砲

割と書いてて楽しい宇宙戦

「じゃあラストワン参加者の君はこれだ」


「………鹿?」


「えーと? いや、これはガゼルのようだね」


おおガゼル、サバンナの血が騒ぐぜ。なんだかんだトムソンガゼルとかチーターに落ち着いたけどやっぱりライオン相手に有利は取れないんだよなぁ………咆哮に小怯み効果があるのがズルすぎる。

愛板氏が用立てた「変装メット」はそれぞれがなんらかの動物の形をしており、瞬く間に傭兵団がメカニカルアニマル軍団へと大変身を遂げた。本人の趣味、というか孫の動物好きに付き合ってるうちに動物に詳しくなったので折角なら……ということらしい。和やかな空気は続く質問への回答「一個三千円」で凍りついたとだけ言っておこう。鉄砲玉部隊だけでも軽く五、六十人いるんだけど……………


「そのメットは秘匿回線で総旗艦艦長……つまり私に連絡する機能がついている。多用すると相手に捕捉されるので本当に重要な時だけ連絡をよこしてほしい。そして五人程から要望があったので輸送船を用意した、速度と耐久はそれなりにあるが小回りが利かないのと武装は前時代(アップデート前)レベルのものだということは覚えておいてほしい」


いいね、無課金で獲得できるやつじゃなくて課金しないと入手できない方の輸送船だ。周囲には「なんで動く的にしかならない輸送船なんか……」とせせら笑っている奴らもいたが、正直乗り込む前提なのに戦闘機なんか用意してもらってる時点でアホなんだろうなぁ、と微笑ましい気分になる。向こうさんに着艦許可でも貰うつもりなんだろうか?


「なぁあんた」


「ん?」


どうやら声をかけられたのは俺であるらしい、振り返るとそこには(サイ)のメットを被った大男がこちらに視線を向けていた………でかい、2メートルはありそうなアバターだ。


「あんただろ? 輸送機を頼んだ奴」


「まぁ、そうで………そうだ、な。五機あるから五人のうちの一人か」


ロールプレイヤーっぽさを感じたので敬語ではなくタメ口で応える。犀男……無駄に高性能なメットの効果でプレイヤーネームが動物名に置き換わっている「ライノ」何某は考え込むように顎辺りを撫でていたが、意を決したようにこちらへとこう頼んできた。


「俺ぁ極振りタイプでよう………まぁ、なんだ、乗り込む手段が自前で用意できなくてな」


「あぁ、乗りたいと。でもいいのか? 撃墜爆発四散の可能性がゼロとは保証できないぞ」


「そん時ゃそん時だ、元より負けた時の補填目当てなとこもあるしな」


まぁ、鉄砲玉からすれば夢を追いつつも、愛板氏が勝とうと負けようと自分が死ぬ前提で補填を目当てにするのは間違ってはいないか。


「いいよ、サンラク航宙(クルーズ)に乗せてやろう。今ならなんとお値段タダ」


「本当ですかぁ? だったら私もご一緒したいでーす」


「ぬおっ」


にゅいっ、と顔を出してガゼルと犀の間に割り込んできたのは哺乳類ではなく爬虫類系のメットを被ったプレイヤーだった。


「スネーク?」


ニシキヘビ(パイソン)だってぇ」


「あー………………で? 相乗り希望?」


「そうそう。私は電子戦特化だから、さ………飛行機操縦するのもあんまし得意じゃないしぃ」


「だってさ、ライノさん的には?」


「え? あー、構わない…………ぜ!」


セーフ、ってことにしておこう。なにせ女性プレイヤーだし声も女性っぽい(・・・)のだが………なんというか、言動の節々が妙に「ぶってる」というか………なんというかテンプレートなオカマっぽさというか………俺の邪悪感知能力が「ネカマ」の三文字を導き出してるんだが。いや、多くは言うまい……

どうやら他の輸送機を希望したプレイヤー達にも乗船希望者が集まっているようだ、わざわざ輸送機を希望するなら勝算があるのだろうと考えてのことらしい。メタルアニマルズがそれぞれ分かれていく中、俺の方にもさらに二人追加でやってくる。何も知らずにやってきた復帰直後のプレイヤーが動かす輸送機は不安だったようで人が避けていたようなのだが、他の輸送機が満員になってしまったのであぶれた二人が仕方なく………だ、そうだ。


「それ本人に言う?」


「いやぁ、事実だしなぁ………あ、ウルフでーすよろしく」


「フォックスだ」


狼、狐、蛇、犀、ガゼル………ガゼルって牛なのか? それともヤギ? まぁいいや、五人ってのはワンチームの人数としては悪くない。というか鉄砲玉を五つに分けるって少なすぎる気がしてならないんだが。

なんなら一人一隻輸送船に乗って大増殖撹乱作戦とかした方がいいんじゃないか?


「で、どこに突っ込むんだ? 本丸狙いか?」


「いや流石にアドリブ」


最初から本丸を狙えるとは思えない、向こうも重課金である以上はNPC限定だったが直接乗り込むプレイングに対策を入れていないとは思えない。少なくともアプデ前における乗り込み対策はショックパルスでNPCを気絶させることだったが……もし敵性エネミーの技術が使えるようになっているとしたら、まず確実にアレ(・・)が飛んでくる。


「さて、時間か……」


「よう、頼むぜパイロット」


「任せとけ、デブリのカーテンだって潜り抜けてやるよ」















モスコミュール宙域。


『こちらは至高のA大船団、愛板である。オープン回線にて失礼』


『これはご丁寧に、こちらは双丘の大艦隊、Gカップムネ肉です……そしてこちらは此度の戦において同志として力を貸してくださる連合の者です』


『左右田……んぉっほん! 愛板さん、今日はお手柔らかに……』


『いやはや、年甲斐なく心躍りますな』


『最長で一週間でしたかな? 三日保てば良いですが……』


『いやいや往復勢は侮れませんよ海鶏さん、それに愛の地平線号にはアレがありますからね』


往復勢とは別銀河からホームである地球までの往復を可能とする者達を指す言葉である。恒星間すら超えた銀河間を自在に移動できるだけの船を持つ者……即ち、歴戦の重課金プレイヤーを指す言葉だ。


此度の戦、プレイヤーの総数で言えば数十vs四と双丘の大艦隊が不利ではあるが、総合的な戦力で言えば六対四……あるいはそれ以上の戦力差がある。


故にこそ、


『では戦を始める前に最後に愛板殿、降伏の意思は?』


『ハハハ何をおっしゃるか、全員宇宙の藻屑に変えてやりましょうぞ…………このようにねぇ!!!』


『なんですと!!?』


愛板が選んだ戦術は、総旗艦ではなく(・・・・)三番艦グレートウォールの全出力を攻撃に転換した収縮再現終焉砲ビッグクランチ・レーザーによる初手最高火力の奇襲であった。



収縮再現終焉砲

愛の地平線に搭載された「アレ」とは別に愛板が秘密裏にグレートウォールに搭載した究極兵器。一発撃つのに実質五万円かかる上に一週間のリキャストと搭載艦の機能半停止とデメリットも多い


アレ、についてはのちのち

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― 新着の感想 ―
ライノにヴァッシュの影を感じた
593話を見て読み返しに来ました!めちゃくちゃ普通に言ってた笑
あまりに自然な身バレ普通に見逃しちゃったね!
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