金属的性質を保有する軟体侵食生命体が導く先
平
成
「余韻」に浸っていたら更新が遅れてしまいました、申し訳ない……
妖怪1足りない。
こいつの恐ろしいところはありとあらゆる分野に現れるという点だ。リアルとゲームの双方に影を見せ、そっと犠牲者の肩を叩いて笑顔で絶望を浴びせかける………鬼畜生すら生温い、摂理や運命の代理にして人の苦しめ方を熟知した死刑執行人めが……ッ!!
「急募:妖怪1足りない討滅戦、火力募集」
「流石に勝ち目がないのでは……」
くそったれめ、これだから100%以外は信用ならないんだ乱数の女神に魂を売り渡した妖怪がよぉ!!
『ニアワン! プレイヤー:サンラク様の現在のセーブデータに「ブラインドドラゴン」が進呈されました!』
え?
「…………何でもかんでもベストな結果ばかりを追いかけていても良くないよな、ベターな結果だからこそ見えてくるものもあるというか、さ」
「盲目竜……竜、龍、目……あぁ、画竜点睛」
一生ドラゴンは紙の中ってか、もの凄く遠回しに馬鹿にされてないかこれ?
と、とはいえ静かにだが苛烈に繰り広げられたキリ番ゲッター達の戦いは前座に過ぎない。当たり前だが本命はブース内に入ってからだ。
ワイワイと身内ノリのオーラを漂わせて盛り上がる他のキリ番ゲッター、もとい優待チケット持ちのおじさま方を他所に俺達はスーパーノヴァ社のブースに入る。
シャンフロブースが地獄の混雑っぷりを見せているとはいえ、他のブースがガラ空きかといえばそういうわけでもない。人を避けながら進まないといけないくらいには混雑した人混みの中、玲さんとはぐれないように距離を合わせつつもブース内を見て回る。
「うお、マジか第三銀河のマップ完成したのか。あんな苦行ようやるな……あ、説明するとギャラトラじゃマップ埋め作業ってマッピングしたデータをスタート地点である地球まで持ち帰らないと反映されないんだよね」
つまり苦行しに行って苦行しながら帰る、精神構造がタフじゃないと出来ませんよこれは……しかもNPCの襲撃とか宇宙災害とかだけじゃなくて宙域マップ独占のアドバンテージを維持したい重課金プレイヤーが襲ってくることもあるという。ギャラトラにおけるマップ埋めプレイは苦行で煮込んだ苦行に苦行をトッピングしたようなものなのだ。
過去にはとある恒星系までのマップデータを巡って重課金プレイヤー三つ巴の大艦隊戦が起きたこともある。趣味に本気になる、とは言うが本気の性質が一般的なゲーマーのそれとは違うんだよなギャラトラ、減っていくリソースを見ると他人事でも寒気が止まらないんだよ。ハウマッチを聞くのはやめようね……
「特にこの第三銀河は俺がやってた時の時点でブラックホールが三つくらいあったから気を抜いた瞬間ゲームオーバーとかザラだったって聞いてる」
「なんというか……シビア、なんですね?」
「でもこれ修正前の情報だから今どうなってるかは分からないんだよね」
少なくとも敵宇宙船を一撃で貫ける艦載砲の有無で難易度は大きく変わってくる、アプデ前のギャラトラ艦隊戦における最強の攻撃手段は火船と衝角突撃だ。そりゃスペインもビックリするだろう、文明が進んでるようで退化してるんだもの。
「わ、これ凄いですね………二十五万も、するなんて……」
またか、またなのかスーパーノヴァ社。何故お前達はゲームの特典として意地でも個人用プラネタリウムマシンを付けようとするんだ、そのプラネタリウムマシンに対する情熱はなんなんだ。そして何より限定百個生産で何故既に三十個売れてるんだ……っ!!
ウキウキ顔で残り七十個になったプラネタリウムマシンから一つ持って行ったオジサマを注視しそうになる眼球を苦心してそらしつつ、さぁ何を見ようと辺りを見渡して……ふと、玲さんが何かを見ていることに気づく。
「何か気になるものがあった?」
「あ、いえ……」
「ギャラクシーくじ?」
成る程、五百円で一回引けて……っていうやつか、コンビニとかで見かける奴より気持ち景品が豪華な感じだろうか。一等はやはりというかプラネタリウムマシン、もしかして在庫余ってるとか? いや違うなこれ最新型だ……
「試しに引いてみる? こういうのに金突っ込むのも祭りの醍醐味だし」
「そ、そうですねっ!」
そして俺はこういうのにコインを使わない派の男、くじ引きは複数買いが一番なんだよなぁ! 乱数的にもなぁ!? 逝ってこい俺の二千円!!
「さぁこい当たり!!」
・侵食生命バドゥガモス君人形
・伝説のゴールドバドゥガモス君人形
・神秘のシルバーバドゥガモス君人形
・1/1500スケール完全再現「バドゥガモス・メテオ」
「バドゥガモス………っ!!!」
誰がバドゥガモスでジャックポットしろと言ったよ……! おかしいな、ここに来てから妙な幸運乱数を引きまくってる気がするぞ。
ちなみに侵食生命バドゥガモスとはギャラトラに出現するイベントエネミーであり、基本的に船長の死か船の沈没でゲームオーバーとなるこのゲームにおいて数少ない特殊ゲームオーバーを齎すイベントだ。まぁ名前からして大体予想できるが、バドゥガモスによって沈められたプレイヤーは「バドゥガモス侵食体」となって他のプレイヤーを襲うことが出来る……要するにゾンビパニック。
だがバドゥガモス侵食体が出現した瞬間、周囲の宙域にいるプレイヤー達に警告が来るので大抵は袋叩きになって終わるんだが………何をトチ狂ったのか、割と需要がありそうな宇宙人やナビゲーター的AIキャラを差し置いてギャラトラの公式マスコットキャラクターにまで成り上がったこのメタルなクラゲが今、ギラギラに輝きを放って俺の前に並んでいた。あと割とデカめのバドゥガモス隕石……ふふふ、バドゥガモスを満載したこれにぶつけられて突然な死を迎えたギャラトラプレイヤーは多いだろうな……俺も二回くらいやられたから。
「玲さんは何が当たった?」
「完全再現、AR観測第二銀河……だそうです」
「お、三等だね」
うわ、これVRシステムの本体に繋げておくと情報更新するのか。地味にハイテクだ……
「あの……私が、持っててもその、あれですし……いりますか?」
「いやいや、見てなよ玲さん追加で回すこの一回で大当たり引いてみせるから……」
・幻のプラチナバドゥガモス君人形
「……玲さん、いる?」
「え、あぅ、あの、いいんですかっ?」
「まぁほら、俺はバドゥガモス君いっぱいいるから……」
「あ、えと、ありがとうございますっ!」
バドゥガモス君でこうも喜ばれると逆に申し訳ない気分になるんだが……まぁいいや、実際よく見てみれば味のある顔をしてると言えなくもない。クラゲの顔がどんなものか知らないけど。
「そろそろ他のブースに行く?」
「えと、そうですね。まだまだ……いっぱい、見て回りましょう」
………最後にもう一回だけ。
・復刻のダイヤモンドバドゥガモス君人形
「なんだこのバドゥガモス祭りは……」
「そ、それはっ!!?」
「え?」
いきなり後ろにいたおじいちゃんが大声を出して俺の掌で表現しづらい軟体的ポージングを取るダイヤモンドバドゥガモス君に見開いた目を向ける。
「ダイヤモンドバドゥガモス君人形……それも、初期ロットと同型……!? 馬鹿な、型は既に破損した筈………完全再現したんか? シークレット枠はプラチナバドゥガモス君ではなかったと……? き、君! マナーとして良くないのは分かっているが、買い取らせてもらうことは出来ないかね!?」
「え?」
バドゥガモス……お前、一体……!?
掌の上に輝くダイヤモンドバドゥガモス君は何も語らない。だが、照明の光に照らされたその触手は人の魂すらをも絡め取るような怪しい輝きを放っていた………
・バドゥガモス君人形について
ギャラトラにおけるバドゥガモスはあくまでもプレイを妨害する敵キャラでしかない、そう考えられていたのは既に過去の話である。
バドゥガモス・メテオの中核をなすゴールド・バドゥガモスを「鹵獲」したとあるプレイヤーが発見したバドゥガモスの秘密。
そのプレイヤー……大手自動車メーカーの会長は不幸にも現実での心筋梗塞で亡くなってしまったが、死ぬ直前に遺した言葉はどこかマンネリを感じ始めていたギャラトラユーザー達を震撼させるだけの力があった。
「異彩のバドゥガモスは我々をどこかに導いている、探せ」
これがバドゥガモス学会発足の嚆矢となった事件である。そして時は流れ、とあるプレイヤーがリアルで販売されていたシルバーバドゥガモス君人形を偶然プラネタリウムマシンが読み込んだ事で第二の事件が発生した。
そう、ギャラトラ内とリンクしたプラネタリウムマシンが銀のバドゥガモス君人形に内蔵されたマイクロチップを読み込んで表示したのは、未知のマップへと導くロケーターであった。
ここに来てバドゥガモス達が示す「何か」を求めてギャラトラユーザー達は再び熱意の炎を燃え上がらせた。だが不幸な事故によって型が消失してしまったダイヤモンドバドゥガモス君は市場にも流れることがなく、またゲーム内でもダイヤモンド・バドゥガモスの出現条件は不明のまま………だがJGEの地にダイヤモンドの輝きが蘇った時、ギャラクシー・トラベラーの歴史は風雲急を告げる。
バドゥガモスってなんだよ(作者も知らない、多分コウモリだけが知っている)