クリティカル・ストライク!!
ゼロワンいい……(ケータイ捜査官について調べてたらフラゲ踏んだ悪夢)
ライジングとホッパーが初期フォームってのがまた味わい深い
モチベーションというものは維持するのも大変だが発生させるのもまた難しい。ましてプロゲーマー、人生の少なくない割合を特定のゲームに捧げる事をよしとした人種を別カテゴリに誘うというのは中々に難易度が高い。
だが期せずして俺が口を滑らせたことで夏目氏の心の中にモチベーションの火種が生まれた、そしてそれを見逃すペンシルゴンではない。
「あー、そういえば名前が違うしアバターも真逆だから気づかなかったなーっ、冷静に考えればアージェンアウルって銀と金って意味かーっ」
あまりの白々しさに俺が半目になり、玲さんの口が引きつるのもなんのそのと奴の口はぺらぺらとターボを開始する。
「いや、あの人はすごいと思うよ、うん。なんたって限られた時間の中で猛レベリングして攻略最前線まで追いついてきたんだからねぇ……あ、そういえば慧君も手伝ったとか言ってたかなぁ? そりゃあ(ユニーク自発できないけど)曲がりなりにもやり込んでる慧君とマンツーマンでレベリングすれば強くもなるよねぇ……あ、夏目ちゃ、間違えたシナモンちゃんもレベリングを頼んだら? 同じチームなんだし、ネ……?」
「そう、よね。うん、経験者に手伝ってもらうことはなんらおかしくはないわよね?」
「勿論! 二人もそう思うよね?」
「ソデスネ」
「は、はいっ、そういうの、とても大事だと思います……!」
三人がかりでヨイショされたことで夏目氏も満更ではないのか、早速携帯端末でシャンフロについて調べ始めたようだ。あ、夏目氏は序盤から攻略見る派かぁ……
「おっと、もうこんな時間か……ほら夏目ちゃん、そろそろ行かないと」
「そ、そうね……じゃあ、私達は行くから」
「が、頑張ってください」
「ありがと、顔隠しのお友達さん?」
しれっと俺=顔隠しを確定させやがったポテトの妖精を許さない事が確定したため、後でアージェンアウルに情報のリークを行うとして……
「あー、玲さん」
「は、はいっ!?」
「出来ればその、俺が顔隠しってのは内密に……まだ俺はそっちに進路決めてるわけじゃないからさ」
「分かりましたっ! お、お墓まで持っていきます!!」
いや、墓に行く時まで覚えてもらうようなことでもないんだがな? というかあわよくば忘れて欲しい。
そりゃ確かにプロゲーマーって職業にドリームがあるのは認める、その気になればメールひとつでプロゲーマーになれる立場にある俺が選り好みしてるのは他のプロゲーマーを目指す人からすれば相当調子乗ってる風にしか見えないのもわかる。
だがプロゲーマーにとってゲームは義務だ、趣味じゃない。その一点が俺のテンションを下げてしまうのだ。それに武田氏考案の将来設計が今の所上手くいってるので、わざわざ自分からご破算にするのも気が引けるのもある……つまり結論から言うと結論を先延ばしにしたい、具体的には高校卒業まではぐらかしたい。
「で、でも凄い……ですね。今、プロゲーマーと……お昼を一緒にしてた、んですよね……」
「あーうん、まぁ、そうだね」
プロゲーマー、そうなんだよあの人プロゲーマーなんだよな。野球選手と年俸で張り合える領域のプロゲーマーなんだよなあの人………ジャンクフード狂いという印象しか俺の中には残ってないけどプロゲーマーなんだよな。
駄目だな、職業よりも先に本人性能で印象が固まってしまう。それもこれも第一印象が俺にボコり倒された人でその後に自分からボロを出し、倒し倒されの関係を続けた上で未だにユニークシナリオを自発できない奴のせいだな。ありがたみがないんだよ。
「っし……じゃあ俺達もステージの方に戻る? フラゲで聞いちゃったけど一応次はシャンフロ特集だし」
「えと、あの……ルストちゃん達は、待たなくていいんでしょうか……」
「いや……」
◇
サンラク:ちなみに待ち時間今どれくらい?
ルスト:一時間
◇
「彼らはこの長蛇の腹の中に消えたから……」
「……優待チケットで、良かったですね」
いや全くその通りで。
……
…………
………………
『はいはーい! 皆一時間ぶり! お昼食べた? それともまだ? 私は夏目ちゃんと食べてきたよーっ!』
『えー? 私だけハブですか?』
『いやいや、エイトちゃんランチ配信してたでしょ。休憩中も配信するのは素直に凄いと思うよ?』
どうやらあの場にエイト氏がいなかったのは裏で配信をしていたかららしい。まぁ夏目氏以上に他人感が強いので来たとしてもアレなんだが……いや、まぁ、うん。
『それじゃあ皆さんお待ちかねっ! シャンフロに関する最新情報をお届けするから盛り上がってこうぜーっ!!』
わぁ、と大歓声が巻き起こる。
「( *¯ ⁻̫ ¯*)」
「あ、それやっぱり被るんですね……」
「まぁ、折角だし……」
日常生活でこれを使うことはまずないだろう、だから使えるところで使っておかないと。
とりあえず鉛筆のリーク通り、エクゾーディナリーモンスターの実装とワールドストーリー「王国騒乱」の進行……事前に聞いた通りの情報が発表されていく。
現場も中継も大盛り上がりだ、まぁ旧大陸側でもイベントは発生しているがレイド前提の大規模戦闘だったりでなんというか……やはり新大陸に行ったプレイヤーとそうでないプレイヤーとで差のようなものができていたのは事実だ。
大規模なイベントということに変わりはないが、戦争規模のPvPは新大陸じゃ出来ない旧大陸側の強みと言えるし、何より1パーティ単位で戦えるエクゾーディナリーモンスターの各地実装はユニークに無縁でレイドに参加するにも気が引けるプレイヤーにとっては福音なのだろう。
エクゾーディナリーモンスターねぇ……なんか確実に発生してそうなモンスター種に心当たりがあるが、帰ったらログインしてみようか。そんなことを考えていた時だった。
『んえっ?』
『どうし……え?』
『わっ』
壇上にいた三人がいきなり素っ頓狂な声を上げる。ペンシルゴンに至っては極めて珍しいことに表舞台用の表情にヒビが入るかのように顔が引きつっている。
誰か一人ではなく、三者三様ながらタイミングの共通する反応に観客席にも困惑の雰囲気が漂う。
「……ん?」
なんで今こっち見た? そんな見てるのを隠しもせずに……
『あー………うん、ええと? これ私が言っていいかな?』
『『ど、どうぞ』』
一体、何を──────
『えー、緊急速報っ! 只今、シャングリラ・フロンティアの方でユニークモンスター「冥響のオルケストラ」が閉幕しました……だそうでーす』
「……………」
「……え、あの……楽郎君?」
オルケストラ、クリア???
な、なるぽど? ライブラリがやったと? いや、別に悔しいとか思ってないですよ? ちょっと胃の下辺りへ激烈に重いメンタルダメージ食らっただけで……え、マジで? 先に見つけたユニーク先越された? いや、まぁそういうケースは珍しくもないし俺だってそういう経験はあるけどさ。
あの超絶クソ忖度オーケストラガード突破したの? どうやって???
「も、もしもーし……」
「(昇天)」
「しょっ……絵文字ですらない!?」
たまには「知らないうちにユニーク進められた側の気持ち」になるでごぜーますよ