ワンマン・ルージュ・オンステージ
大掃除中にジャンプ発掘と、BGM代わりにVtuber視聴と、暇つぶしにネトフリ、は全てイコールであることを悟った今日この頃
手練れ二人による包囲、不慣れな二人も巻き込んだ4対1の構図は、なるほど確かにルストといえども容易に崩せるものではなかった。ワンマンパワーで無双できる幕末と違ってネフホロは数の暴力が最終的な戦力差に直結しやすい。
つまりこのまま行けばルストが斃れる未来は十分視野に入っていた、逆に言えば銃特化と軽量級の二人がそれだけ手練れだったという事でもある。兎にも角にも味方管理が異常に上手いのだ、対人勢……ではない。味方の損耗がクリアに直結する戦いは大前提として全ステータス格上を集団で倒すレイド戦に見られる傾向だ。つまり奴らはネフホロでは割と希少な対NPCエネミーに長けたプレイヤー達ということだ。
如何にプレイヤーとは言え動かすシステムはゲーム準拠だ、つまりゲーム内の摂理に従うのが大前提。プレイヤーサイズの敵と見做して対ボス戦の動きを取り入れるのは不可能ではないだろうが……それを差し引いても地力の高さが(物理的に)下からの目線でも伺えるというものだ。
……だが、俺は彼あるいは彼女を責めるような事はしない。だってこれはゲームだから、さらに言えば勝利者になったとして何か具体的に得るものがあるわけでもないから。
確かにルストを撃破するという目的に殉じるというのであるならばあの二人に従うのが最適解だ、だが百人が百人それに満足するわけではない。レイド戦編成のいちパーツで甘んじる事が絶対の正義なんてルールはどこにもない、だから俺は彼あるいは彼女の行動を責めないが………思わず嗚呼、と呻くくらいには残念に思うのだ。
『あーっ! 包囲が崩れたーっ!』
『今のはタイミングが悪かったわね、あの隻腕のネフィリムが満身創痍ならトドメを刺せたかもしれないけど……』
手練れ二人による包囲耐久、そんな中で障害物扱いされていた恐らく未経験者であろうネフィリムの一機が一直線に真紅へと攻撃を仕掛けたのだ。
作戦の一部として甘んじる事を不満に思ったのか、本気で倒せると信じたのか。それは本人しか知らない事ではあるが、結果から言えば回避に専念せざるを得なかった隻腕の真紅に活路を開くことになったわけだ。いやそれとも……
「……誘い込んだ?」
「え?」
「いや、よく見てみると今突っ込んだやつが思わず近距離戦を仕掛けたくなる絶妙な位置に移動しているな、と……」
しかも銃特化と軽量級に対応するために左右に彼らを開く形に構えていたから、突撃を仕掛けた中量級から見ると背中を晒しているように見えるわけで……実際はブースターの搭載数とルスト自身のプレイヤースキルから産出される転回(旋回ではなく)速度的には隙ではない視覚的錯覚。
狙った? それとも偶然を活路に繋げた? どちらでもあり得そうなのがネフホロにおけるルストというプレイヤーだ。まぁモルド込みなら確実に狙ってやってのけるのが恐ろしいところだが……あいつ単品で後ろについた目であり戦術的作戦立案のブレインなのが厄介すぎる。
「ほら玲さん、あの位置どり見える?」
「はひゃっ、はいっ」
「あれ、今突っ込んできたやつが軽量級の射線を遮るように立ち回って銃特化までの距離を一気に詰めてるんだよね」
「なりゅほどっ!」
「で、銃特化の方もなまじ近距離でも戦える分迎撃に欲を出して…………ああ、回り込まれてブースターを斬られた。もう鈍足砲台だ、油断しなけりゃ無視できるダメージしか喰らわないだろうさ」
「そでしゅね!」
理解が早いのは流石って感じだなぁ。対人とは言えロボゲーなのにこの理解度だ、やはりゲーマーとはいえリアル性能が高いと応用が利くのだろうか……
「あーあー、こりゃダメだ」
もう一人のニュービーは完全に置物であることを是とした消極的行動しかとっていない、突っ込んだイノシシ君は蹴り飛ばされる際に首がへし折れているから多分感覚系がほぼお逝きになっている。包囲円の中心点を担っていた銃特化の機動力が潰された時点で実質的に軽量級と隻腕の真紅によるタイマンが成立してしまった。
総合的な機動力で見れば軽量級の方が速いのかもしれない、ネフィリムはパーツが完全消失していない限りは時間経過で完治とまではいかないがある程度性能が復活する。なので性能ダウンは免れないが銃特化が回復するまで逃げる………という選択肢も取れない、なにせこの戦法の要であり生命線は二人しかいないのだ。軽量級が逃げればルストはなんの妨げもなく銃特化を仕留めるだろう。つまり軽量級は自分が生き残りつつ銃特化を守るために戦いを挑むしかない。
スピードはあるが小回りの一点においては真紅に及ばず、武装的アドバンテージはホーミングの甘いミサイルポッドと連射優先で火力はあまり良くないレーザーライフル。対する隻腕の真紅はビームチェーンソーのみ…………であるが、それは自前で用意した武器でしかない。
あの真紅は左腕こそスナイパーライフルと一体化した武器腕だが右腕の方は手の甲側の手首からチェーンソーの刃が伸びているタイプ、つまり物を握る手そのものはフリーなのだ。そしてネフホロ2はシャンフロシステムが用いられているとなれば絶対に「アレ」ができる。
「置物君からランチャーをカツアゲして………うーわひでぇ、偏差射撃だ。あいつ人の心はねぇのかよ……」
銃特化にトドメを刺すフリを見せて動きを絞ったな? 軽量級は装甲を削った上であの速度を出している。当然攻撃を喰らえば攻撃側の数値以上のダメージが出る。しかもよりにもよってランチャーである、ネフホロ世界でも時代錯誤な実弾カテゴリの中でも当てれば超耐久特化重量級すらグラつかせる火力イズジャスティス・ウェポンだ。
「大破……いや半壊か、偶然だろうがいっそひと思いに墜としてもらった方が潔かったな」
「………………」
状況が状況だ、これが普通のエネミー戦だったら体力回復の隙を味方に埋めてもらえたかもしれないがネフホロの対人戦は回復アイテムが持ち込めない。まぁゲームセットかな。
「あの、」
「ん? どうかした?」
「もしかして…………あの真紅のネフィリムを操作してる方、楽郎君のお知り合いですか?」
あー…………
「( ̄ヘ ̄)」
「あ、その、教えたくないとかだったらその、不躾な質問を………」
「あれ、多分、ルスト」
「…………えっ。本当、ですか?」
「少なくともあの戦法であれだけ動けるやつって言うとルストくらいしか思いつかないかな」
いやルストさん、最後に残った一機に「来いよ」とゼスチャーするのは半分イジメだろ……まぁそりゃバトロワルールな以上、勝利者は一人かもしれないがほぼ七人全員自力で屠ってるやつ相手に置物選んだ奴が戦いを挑むわけないだろ。
結局、バッサリ一刀両断された置物君の撃墜をもってバトルロワイヤルは決着。観客は大盛り上がりだが実況解説の方はルスト一機に肩入れするわけにもいかないので凄まじく実況しづらそうであった………
『さ、さて! それじゃあ今プレイしていた人達にインタビューしまーす!!』
「あ」
「あ」
◇
鉛筆騎士王:あ
サンラク:あー………
◇
これ、目を瞑ったほうがいいかな。
リアルバレレース! まさかのトップにルストが躍り出たーっ!!!
余談。旅狼におけるメンバー毎のリアルバレ「お察し」一覧
・サンラク
本名を知ってるのは鉛筆、カッツォ、ヒロインちゃん。顔が割れてるのはヒロインちゃんだけ。ただし鉛筆はいつでもサンラクのリアル情報を知ることができる。というか住所バレまでしてるんですけどね奥さん(二つの意味で)
・鉛筆
イコール天音永遠と知ってるのはサンラク、カッツォ、ヒロインちゃん。ただし「普段の立ち振る舞いがあまりに自然体」という理由から京極も薄々感づいている
・カッツォ
リアルを知ってるのはサンラク、鉛筆のみ。ネカマというのもあるがプロゲーマー魚臣慧とユニーク自発できないマンが繋がらないのが強み
・ヒロインちゃん
リアルを知ってるのはサンラク、京極、鉛筆。京極に関しては遠戚だし鉛筆は姉の友人、サンラクは想い人とリアルでの関連が濃い
・秋津茜
リアルを知るもの、皆無! 逆に誰のリアルも知らないという隔離領域。身近に一緒にVRをプレイする友人がいないのでゲーム内での友好を大切にしている。……やはり光属性じゃったか! まぁちょくちょく竜威吹使ってるし竜人化で青肌黒目とはいえ素顔晒してるので顔バレという点では結構……
・ルスト
今話まではモルドのみがリアルを知っていた。次話でサンラク、ヒロインちゃん、鉛筆に顔がバレる。そして未来の時間軸でカッツォも録画を見るので顔がバレる。まさかの大規模リアル顔バレ……まぁアピールしてないだけでシャンフロのアバター自体リアル顔の2Pカラーなのでノーダメージなのが強い
・モルド
お前も道連れなんだよ
・京極
リアルを知ってるのはヒロインちゃんのみ。ただし「龍宮院流になんらかの所縁のある人」という点では旅狼内全員にバレている。つーか幕末プレイヤーにもバレている。ドヤ顔で説明して速攻天誅されるから君はあるてぃめっとちゃんだし萎びたほうれん草なんだぞ