原因:お前だけそんなツラしてたから
「ハローワールド! ハロージャパン! 特設ステージから愛を込めて!」
「あ、えと、こんにちわ!」
「ジャパン・ゲーミング・エキスポ、特別ステージイベント「フューチャーリアリティ」! 実況進行は私! 意外とプライベートじゃVRやりまくってる天音 永遠と〜?」
「ゲーミングチーム「電脳大隊」から来ました、夏目 恵です! よろしくね!」
「ん〜? 夏目ちゃん、表情が硬くないカナ? ん?」
「は、ははは………あの天音 永遠と共演して緊張しない女性はいませんよ……」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ………今日はなかなかキメてるねぇ、永遠審美眼的にも得点高いよっ」
「わ、わーい、褒められちゃった……」
「んふふー、夏目ちゃんはGGCで選手としても出場してたから、この程度緊張のうちにも入らないのかな?」
「い、いや、どんな大会でもイベントでも緊張はしますよー」
「そっか、そうだよね。やっぱどんな現場でも緊張は保たないとね」
「あ、天音さんほど自然体で入いられるのも、凄いと思うけど……ですけどね???」
「そだねー……これ緊張ほぐれるかなぁ………まぁいいや! 今回はスワローズネスト社やユートピア社などなど、いろんなハイテク企業の全面協力のもと、メガフロート・サイト全域に張り巡らされたARホログラムでどこにいても最新情報をお届けしちゃうよ! フフフ、何が飛び出るかはお楽しみっ!」
「いや、緊張していると言うか初っ端からアドリブだらけだからというか……」
「アドリブこそが我が人生! それじゃあ皆! 今日は骨の髄まで楽しんでいこーっ!!!」
◆
「( ‘ᾥ’ )」
「そ、そんな絵文字もあるん、ですね………」
え、なに俺今どんな顔してたんだ……ああ、リアルで外道文房具にエンカウントした時の顔か、大体どんな顔かわかった気がする。
「あの……………」
「ん?」
「その、なんとなく………そんな気はしてたんですけど、ペンシルゴンさんって………」
「あー………うん、本人がアレでプレイしてるのもあるけど、一応個人情報だから……な?」
「は、はい……見た目そのまま、なんですね……」
「いや、あれ一から作ってるらしいぞ」
「え」
少なくとも「アーサー・ペンシルゴン」はフルスクラッチで作ったアバターってのはいつだったかに聞いた。面倒な時はシステム側のリアルフェイス反映を使ってるらしいが、基本的に一から自分の顔を完全再現するらしい……なんだその無駄な努力と思わなくもないが、一から作るからこそ天音 永遠を騙る何者かのロールプレイが捗るらしい。悪趣味の極みかよ。
とはいえまさか奴がここに来ていたとは。いや来るなとは言わないが夏目氏となにやってんだあいつ。なんか一般列に並んでる入場者の割合が微妙に女性多めだったのはそういうことだったのか……イベントの出演者までは調べていなかった俺が悪いとはいえ、なんつーサプライズだ。
「どうする? 冷やかしに行く?」
「冷やかし…………そう、ですねっ、気になる情報も……あるかも、しれません、から」
「ふっ……玲さんならそう言うと思ったよ」
「え? え?」
十中八九シャンフロの情報も出るだろうし、ガチ廃人の玲さんからすればこのイベントこそが本命といっても過言ではないだろう。ガチ廃人とはゲームに捧げる人生の割合が常人のそれよりも倍以上ある者を指す、そんな玲さんがわざわざ現地に足を運んだのだから、役に立つ情報を出してもらわなければ困ると言うもの。まぁそこらへんに理解のある岩巻さんがわざわざチケットをくれた辺り、情報入手確率は高そうだ。
「(´ᆺ`)」
「え? あの、え? えと、そのぉ………」
「いやいや、なんでもないよなんでもない。俺も気になってたし行ってみよう」
ここからでも見れるだろう、というのはこの際言いっこなしで。なんの偶然かまたしても奴に俺の素顔を見せることはなくなったのが運命のいたずらを感じずにはいられないが……ていうか奴に関しちゃ邪教徒経由で既に顔バレしてそうなんだよなぁ。
とりあえずイベント会場の方に……あ、ここでも優待チケットが役に立つのか。もうこれロックロールに足向けて眠れないな?
「あーでも優待でも混んでるなー」
俺の中での印象は猛毒メンタルと筋繊維がポテトの人、ってイメージでしかないのだが世間一般的にはモデル界とプロゲーマー界におけるスターな訳で。なるほど、これを主目的としてくる人も多いのだろう。空いてる席は………あぁ、あった。二列目の隅っこか………まぁ程よく近く程よく遠いってことで。
「空き席あったよ、いこう玲さん」
「は、はいっ!」
「(ó﹏ò)」
はいすいませんね、はいごめんなさいねこっちから横切らないと向こうまでいけないんですよ。はいごめ……おらっ、どけや優待チケット様のお通りだぞ!! いや間違っても口には出さないけど。口に出したら噛ませになるタイプのセリフだからな、ゲーマーこそ言霊信仰をすべきだ。言葉に出しても乱数外すのはなんでだろうね、やっぱ神に唾吐く勇気こそがゲーマーの本質なのかもしれん。
「(꒪ȏ꒪)」
「あの、どういう感情なんですか、それ………」
「いや、一瞬こっちを見られたような……」
「まぁ、目立ちます、から、ね………」
いや、流石に気のせいか? あいつ、全角度から完璧なアングルで挙動するとかいう意味のわからない特技があるし「今俺の方を見た」ムーブをかましただけかもしれない。邪教徒曰く「永遠様は目で語り横顔で語り背中で語るお方」らしいので…………全身が口か何かかよ。
「(눈_눈)」
「あ、ハングルも対応してるんですね……」
ハングル使う顔文字って俺今どんな顔してるの? 自覚してる限りでは天音永遠の奴を疑念の眼差しで見てる感じだけど。
『…………』
『どうかした?』
『………んー、ちょっとど忘れ?』
『え………あー、進行を忘れるなんてう、うっかりさんね〜……』
『喉に棒でも突き刺さってんのかってくらいの棒読みありがとう! でも大丈夫! 実はスワローズネストさんから秘密兵器をお借りしているのです…………じゃーん! 最新式の眼鏡型ARデバイス〜!!』
『実は私も持ってまーす……』
夏目氏のアドリブ力が悲しいほどゴミなんだが、カッツォのやつもそうだがプロゲーマーなのにロールプレイ技能低すぎない? シルヴィア・ゴールドバーグとか見習えよ、常時映画の面白黒人枠みたいなテンションしてるんだぞあの最強ゲーマー。
「………ん?」
なんだ、着信? メール……じゃないな、SNSの方で個人チャットが開設されてる? こんな時に誰だ………
【おいそこの面白フェイス】
鉛筆騎士王:後ろにカッツォ君いるの気づいてる?
「は?」
後ろにいるのは邪教徒らしきティーンエイジャーだが…………………………ハッ!!?
「(゜Д゜)」
『すごいよねぇこれ………堂々とカンペとか目の前に表示してるのに本人しか見えてないんだものねぇ……』
『そういうのは言わないお約束でしょ天音さん』
『そだねー』
ニヤァ………と人当たりの良さそうな笑みを浮かべる天音 永遠。だが後ろに回した手で端末か何かを操作しているのだろう、個人チャットの画面には奴の本性が明確に文章化されていた………
鉛筆騎士王:楽しいイベントになりそうだねぇ……
サンラク:いっそ殺せ
そりゃ絵文字とはいえ一人だけやたら辛辣なツラでこっち見てる「顔を隠した」見覚えのある体格の男がいたらカマの一つもかけますよっていう
Q.何故カッツォではなく夏目ちゃんが鉛筆と共演してるの?
A.「鉛筆と二人で司会進行とか絶対無理」という本音こそ隠しているがカッツォが夏目ちゃんにガチめの泣きを入れて代わってもらった。一緒にフライドポテト食べに行っただけで請け負っちゃう夏目ちゃんも夏目ちゃん。