有り得ざる非現実性ワンショット
さて、一時間のアドバンテージを得た上でJGE会場へとやってきた俺達ではあるが。
「流石は島丸ごと展示場なだけはある、な……」
「隣同士……座って……………あ、え! そ、そうですね! 凄く、広いです………」
そう、広いのだ。めちゃくちゃ広い、具体的にいうと衛星地図でもそんなに拡大しなくても全体が見えるくらい広いのだ。流石は最新鋭……の一個前世代のメガフロートだ。本場アメリカでは連結型メガフロート群なんてものが大真面目に建造されてるらしいし、究極島群オメガフローティオンとかにならない? ならないか。
「展示場内をバスが通ってるのかこれ………とりあえずどこから行こうか? シャンフロブースから行く?」
「そ、そうですね。一緒……い、一緒にやってる! ゲームです、からっ」
やはりシャンフロ廃人たる玲さん的に最初は外せない、ってことだろう。まぁ俺もちょっと離れているとはいえ、メインでやっているゲームだし混雑は必定なので先に行ってしまうのもアリだろう。と、いうわけで優待チケット持ちの大半が向かっているシャンフロブースに来てみたわけだが。
「AR凄いなオイ」
「ジーク、ヴルム……!」
そう、シャンフロブースへと到着したバスを出迎えたのは巨大なメガフロート・サイトの天井まで届くような巨大なドラゴン………今尚記憶に新しいシャンフロに七体のみ存在するモンスターの一体、天覇のジークヴルムであった。尤も、単なるARかつあくまでも飾りとしての再現らしく、俺や玲さんを見て何か言ったりはしなかった。まぁ当然か、ここにいるのは斎賀 玲と陽務 楽郎であってサイガ-0とサンラクではないのだから。
「とりあえず前情報で見聞きしたNPC画集とやら、を………………………」
「あ」
俺の視線が物販コーナーへと向き、そこで固まる。俺の動作に気づいた玲さんも同様に視線を動かして……そして俺が固まった理由に気づいたのか短く声をあげた。
話が変わるようで変わらないが、この手の画集を販売する場合………サンプルとして何枚かの絵を先に見せる、という手法がある。どうやらシャンフロ画集でも同様のようで、ゲーム世界内の画家達の作品というのも間違いではなく、一枚一枚が明確に違う筆で描かれていることはわかる、のだが………
「タイトルは…………「墓標の乙女」「天舞の白布」「巨王と騎士」………………」
えー、まぁ、はい、うん。一枚目はあれですね。
俺は見た事ないけど、激しく覚えがある巨大な墓標剣の上に立つ喪服の女が描かれてますね。
うー、うん、あー、おう。二枚目はあれですね。
俺は見た事ないけど、激しく覚えがある白布に目だけ描いた出来損ないのハロウィン仮装みたいな奴が宙を舞う絵ですね。
ははは、あー………うん。三枚目はあれですね。
これは見た覚えがある、確かですね………フィフティシアの前のイレベンタル? だったかにある巨大な剣の像の前に聖騎士っぽいのが立ってる絵ですね。
「「……………」」
そっと顔を見合わせる俺と玲さん、いや違うな厳密には互いにサンプル画像から目をそらした結果、互いに目を合わせることになったと言うべきか。
いや、だって………俺じゃん。一枚目は新大陸で名前忘れたけど絶体絶命おじさんにドヤ顔ポエムかました時のやつだし、二枚目はサードレマ大脱出の時に被った祭衣・打倒者の長頭だし、三枚目はイレベンタル? だったかで待ち合わせしてた時の玲氏じゃん………
「こ、こんなことも、あるんですね………」
「謎の喪服女と謎の白頭巾は同一人物ではない、そういうことにしておこう……」
いやほら、サンプルはあと七枚くらいあるしこんな偶然もあるのかもしれないというか……うわぁ、「剣の覇者」ってタイトルのこの絵、凄く見覚えのある奴が描いてあるように見えるぞぉ……
「玲さん……………」
「タニンノソラニ、デスヨ」
Your Sister…………いや、他人の空似ですねはい。あーでもこの、「海割りて」と「聖女の祈り」とか普通にイラストとしてほしいなぁ……見覚えのある聖輝士についてはノーコメントで。
「……まぁ、画集ならこの値段も妥当か」
6000円………ちと高いが、ちと高いが!!! 買って損はない、購入!!
一万円札を渡す手に未練タラタラな俺と違って、なんの葛藤もなく一万円札を手渡していた玲さんに資本主義の冷たさを感じてしまった…………うう、コミーくんは俺を受け入れてくれるの……???
さっそくジャパニーズ資本主義最強の切り札が一枚消えてしまったわけだが、元々出費は承知の上だ。いつまでも気にするものではないし……それに、もう一個の目玉である自キャラの肖像画ってのが気になる。なるほど、専用のマシンでログインして………へぇ、「背景」「ポーズ」「装備」諸々を設定して肖像画にするってわけね。そんで、使えるのは自キャラが行ったことがある場所や遭遇したことのある敵、持ってるor持っていたことがある装備だけと…………面白い。
これをこうして、こうやって……ククク、こうすれば……ポーズはプリセットから……これか? これかな? いや、こっちの方がいいな………
「出来た……力作だ」
背景はシグモニア前線渓谷中央、大量の水晶群蠍系列のモンスターに囲まれるサンラクが水晶群老蠍を玉座代わりにして踏ん反り返っている構図だ。タイトルは「刹那的栄光」……流石に蠍オールスターに囲まれたら即死するわ。
一回五百円か……もう一枚作ってもいいかな、後ろ並んでないし。絶対に実現させるという願掛けも兼ねてオルケストラをフルボッコにする光景でも作るか? えーと、オルケストラは……これか。
「ん?」
あれ、背景から選んでいたっけ? いや……モンスターを選ぶ画面だ、じゃあなんで背景ごと切り替わった?
「んん?」
なんだこりゃ、バグか? それとも何か不具合か? 背景がモンスターオブジェクト扱いで登録されてるのかよこれ。背景の劇場ごと拡大縮小できるじゃねーかこれ。
つまりこれをこうすると……なんだこりゃ、ルルイアスのど真ん中に小屋サイズの劇場が生えてる珍妙な絵が完成してしまったぞ。
「どうすんだよこの不具合……」
いや……よくよく考えたらオルケストラとエンカウントできてるプレイヤーは現状知ってる限りじゃ俺含めて二人だけなので困るのは俺とミレィだけなのか。
俺はバグには割と寛容な男、普通に使えばいいだけの話……あ、いいこと思いついた。
「考えてみりゃ、これが一番マウント取れるよな……っと」
このプロマイド作成マシンではアカウントのキャラクターが遭遇したモンスターを配置することができる。であれば、おそらく現時点で俺だけが作り出せる一枚がある。
ジークヴルム、ウェザエモン、リュカオーン(影)、ゴルドゥニーネ(あの個体とウィンプの両方)、クターニッド、オルケストラ、そしてマシンに表示された名前でその存在が確定した最後のユニークモンスター……不滅のヴァイスアッシュ。
サイズがデカいジークヴルムとクターニッド、リュカオーンを背後に設置し、割と人間サイズであるゴルドゥニーネ、ウェザエモン、ヴァイスアッシュを手前に、そして私怨マシマシなので手乗りサイズに縮小した劇場をポージング「その手に載せて」の姿勢であるサンラクの掌の上へ。
「パーフェクトかよ……」
名付けて「七星の観測者」、ユニークシナリオEXの全てに関わった者にのみ与えられる称号をそのまま使わせてもらった。
うーむ、ハガキサイズに印刷するだけなら五百円だが、これはもうちょっと豪華にしておきたいな。
「あ、そういえば玲さんは………って、」
「あ」
ふと気になって横を見れば、そこには丁度のタイミングで最高額であるホログラムスタンド(一万円)を購入している玲さんと目が合った。
資本主義!!!!
えぇ!? 別に付き合ってるわけでもないのに想い人のキャラクターと聖杯使用した自キャラのツーショット作って迷う事なく一万円ブッ込んだ奴がいるってマ!!?!?