導きの北極星
やることが多すぎる……っ!
リニアを降りて、何故か今年だけやけに混んでいる気がする首都東京の地にやってきた俺と斎賀……もとい玲さん。考えてみればゲーム内じゃ玲氏玲氏と呼んでいるのだから大差ない気がしてきた。
「なんかやけに混んでるような……」
「多分、みんなJGEに行く人達なのでは……」
まぁそんな気はしてた、だって皆同じ方向に向かっている上にちょくちょく何らかのゲームのグッズと思しきシャツやカバンを持ってる人を見かけるからだ。
「これ早く来たのが仇になったかもしれないな……」
「お、押し流され……」
「玲さん北口から出るのは無理だコレ、東口から出て向かおう……玲さん? 聞こえてる? 玲さん?」
「ふひゃあい」
今のは肯定なのだろうか、とにかくはぐれないようにしつつ一般チケット共の洪水が如き混雑から抜け出す。
優待チケットと違って奴らは長い列に並ぶ必要があるからな……しかしなんつー混雑だ、GGCの時より酷くないか? ええいどけどけ! 有象無象の一般チケット共め、優待チケット様が踏み潰してくれ足踏まれたぁ!!?
く、凸凹カップルのでかい方に踏まれたのか……しかも互いに何か言う前に混雑に呑まれて見失った。これだから人混みって奴は! 広域殲滅魔法が欲しくなる……離脱! 離脱する!!
……
…………
………………
「人通りは普通な筈なのにガラ空きに見える」
「そ、そうですね……」
遠目からすし詰めの人混みが見える、そちらと比べればまぁまぁの混雑で済んでいるこちら側が物凄く空いているように見える。
「あ、こっちからでも……少し、遠いですけど、会場までのルートはあります、ね」
「あ、調べてくれてありがとう」
「い、いえ! これくらい、全然……っ」
とりあえず開場時間までは余裕を持たせてはいるものの、コスモバスターを彷彿とさせる大混雑を見た後だと不安感がふつふつと湧いてくる。戦艦アシスト縛り……7面……弾切れ………うぅ、頭が痛い。最高評価取るために縛り強制は違うだろ……そういうのってプレイヤーがするものであってさせるものじゃないじゃん……
「程々が一番、程々が……」
「………?」
王道をマンネリと言いたい気持ちは分かるが、外し過ぎればそれは邪道と言うのだ……
いや、どれだけ鬱陶しくても人は人、手を出したらアウトだ。それに俺や玲さんは優待チケットを持っているのだ。つまりあの人混みの群れと比較して我々の方が「上」ということだ。憐憫と慈愛を以て見守ってやろうじゃないか。
「しかし、一日限定のイベントにしては結構な盛り上がりようだな」
「そうですね……あ、あれは………リッキー、でしたっけ?」
「へ、へー……」
どこを見てもJGE、JGE……コンビニでは出展企業のタイトルなのだろうゲームとのコラボ商品が販売され、恐らく良作のゲームキャラ達が描かれた看板によって会場へのルートが表示されている。結構有名なキャラクターであろうことは分かるのだが、名前がサッパリ分からない辺りにクソゲーマーとしての業を見た気がした。
玲さんの記憶に間違いがなければリッキーという名前であるらしいキャラクターの案内に従って進んでいけば、離れていても誤魔化しきれない喧騒と増えていく人間の数………そして、最後に角を左へ曲がれば、そこには長蛇と例えても不足するほどに大量の人達が並ぶ列。
「これ、全員入るのか……?」
「五年前に、作られた新東京国際展示島ですし……チケット制ですから、入る……かと」
科学の発展によって「国土が狭いなら新しく作ればいいじゃん」を真面目に実行できるようになったんだから人類ってすごいよね。馬鹿でかい人工島として作られた巨大メガフロートは数多くのニート………もとい、アマチュアゲーマー達を労働力として徴収したと聞く。つまり今、ゲーマー達の祭典として使われているこの展示島はアマチュアゲーマー達の血と涙と汗によって………………いや、大半はロボティクス労働力だから言うほど汗流してないな。
「えーと、優待チケットは一般列とは別で………」
『Welcome to Japan-Gaming-Expo !!』
「うおビックリした!?」
財布から声が!? ジャパニーズツクモガーミ!?
いや違う、喋ったのは財布じゃない。その中に入っている優待チケットだ。どうやらJGE会場に一定以上接近することで内蔵された何らかの機能が動き始めたらしい。財布から取り出したカード型チケットから小人サイズのキャラクターがARホログラムによって出現しており、愛想のいい笑顔で明後日の方向を向いていた………あ、向きを直せと、はい。
『私はJGE公式キャラクター、ポラリス! 優待チケットの入場方法について説明させていただきます!!』
「おお………地味なところに科学力が突っ込まれている……」
「ちょ、あの、チケットはどこに……」
君の尻から声が響いてるよ、とは言わない方がいいだろうか。
とりあえず公式のキャラクターであるらしいケモ度10%程度のシロクマ少女がやけに大仰な動きであっちだ、こっちだ、と案内を開始する。これもしかしてチケットの座標を参照してる………? 単なるカードだと思っていたが、これ実は相当なシロモノなのでは。
「あ、やっぱゲートからして別枠なんだ」
「というか、それでも結構並んでる人達が……」
優待されるのは別に俺達だけではないということだろう、大混雑を構成する人々と比べて表情に余裕のある者達が並ぶ列に俺達も続く。メガフロート・サイトはその名の通り海の上に浮かぶ巨大建造物だ、そして現在日本の地と浮遊島とを結ぶ橋はどこにも存在せず、秋の海を眺めているわけだが……どうやら時間が来たらしい。
手のひらに載せて眺めていた優待チケットの上に立っているポラ子がキュピーン! とSEを響かせてジャンプし、なんとなくくるくる回していたせいでまたしても明後日の方向を見ながらしゃべり出した。
『時間が来たよ! 優待チケットをお持ちのお客様は一時間早く入場することができます! さぁさご覧ください! メガフロート・サイトに繋がる浮上展開橋が現れまーす!!』
メガフロート・サイト名物、海底に設置された油圧伸縮する柱が海上で開くことで橋を形成する浮上展開橋か。海底から白波を引き裂いて現れた巨大な板が開脚するように開かれ、等間隔に現れた同様のギミックが次々に連結……海上のメガフロートへとつながる長大な橋が完成する。
そしてサイト側から次々に………えーと、あれだ、なんだっけ、ゴルフカート? あれをゲーマー好みに改造した感じのビークルがやってくる。確か母方の叔父さんがゴルフ狂だったっけ……泥酔した状態でゴルフクラブをフルスイングして自室の天井にすっぽ抜けたクラブが突き刺さったという……引き抜いたそれにエクスカリバーって名付けてホールインワン達成してる辺り最高にイカれてるぜ。
「おお……至れり尽くせりだ」
そしてなんとなく理解している、一般チケットの方々がこのビークルの恩恵にあずかることは多分ないだろうなという事を………………資本主義って残酷ね、赤く染めとく? まぁそれやらかした外道文房具を暗殺したこともあるし、俺もまた資本主義の一員ということか。
・JGE公式キャラクター「ポラリスちゃん」
電子の極北から突如として現れたしろくま系ナビゲーター、JGEの公式キャラクターは毎年一般公募から選考されるが今年は審査員の性癖(要所要所のパーツは厚着用なのに全体的に見ると肌の露出が高いアンバランスフェチ)を読んだとあるイラストレーターの作品が選ばれた。
JGEにやってきた人々を導く北極星の妖精であり、好物はキビヤック。発酵する前につまみ食いしちゃうお茶目な一面もあるぞっ!(なお口元にモザイクが入る)
スワローズネスト社のアイデアで優待チケットにARホログラムのギミックが仕込まれたがプロトタイプはスマホ二つ重ねたくらい重くなってしまったため、創世さんが片手間で軽量小型化した上に色々と改造した。
そして軽量化優待チケットを解析したことでスワローズネスト社のAR技術が地味に向上した、ラックが高いぞヤシロバード。