一歩踏み出す勇気
マクロコスモスと閃光の追放者禁止にしません???(ダ・イーザにボコられた決闘者の叫び)
「───いい、玲ちゃん。キャンパスライフは……モテるわ」
「は、はぁ……」
「言っておくけど、楽郎君は割とモテる側よ」
「!?」
そしてお前はもっとモテる側だ、の言葉をあえて飲み込みつつ岩巻は話を続ける。もはやこの純粋培養恋愛ヘタレ少女に発破をかけるには生半可な言葉ではダメなのだ。
「高校と違ってね、大学生活というものは出来ることが一気に増えるものなのよ。そうなれば顔は悪くないし対応も暗くない楽郎君みたいなタイプは十中八九合コンに呼ばれるでしょうね」
「合、コン……!!」
「今は楽郎君は未成年だけど、飲酒可能な年齢になれば……そう、酒の魔力が彼を襲うのよ!」
「酒の、魔力……!!」
既にカフェインによって脳に致命的な何かが起こっていそうなものだが、それを言ったところでどうにもならないので岩巻は口を閉じた。
「そうでなくとも、貴方達はこれから受験シーズンよ。貴女も楽郎君も来鷹でしょ?」
「そう、です……」
岩巻もそれは承知している。なにせ楽郎から進学志望を聞き出してリークしたのも他ならぬ岩巻なのだから当然把握している。来鷹は難関校、というわけではないが遊び呆けていて受かるほど易しい大学でもない。つまり如何に「ゲームライフに支障をきたすヘマはしない」ことをモットーとする楽郎や恋愛以外に関してはハイスペックな玲といえど、受験勉強は多かれ少なかれ必要ということだ。
「つまり二年生の今が最大のチャンスなのよ、分かる?」
「う、うぅ……」
「別に今告白しろと言ってるわけじゃないの、あのクソゲー脳みそに玲ちゃんという異性を意識させることができれば値千金よ」
「そういうものでしょうか……」
「そういうものよ。いいこと玲ちゃん? キスしろとか手を繋げだとか貴女に無茶を言うのはもうやめましょう。この優待チケットとJGEというステージを利用して……ただ一言、楽郎君にこう言いなさい」
「一言…………」
………………
…………
……
───まるでデートみたいですね
「…………いやいやいやいや」
岩巻の言葉が玲の中でリフレインする。それに対して言い訳をするように首を振りつつも、玲はポケットの中に入れたJGE優待チケットを取り出して眺める。
「ま、まるでも何も、デッ、デート、じゃないですか………そんなのまだ早い………」
だが、岩巻の言葉も事実だ。自分も楽郎も高校生……それも受験生たる高校三年生になるまでそう長い時間は残されていない身の上だ。自分か楽郎がヘマをしない限り大学も同じになるのだからまだ猶予はある…………そう考えていたが岩巻の話を聞き、それを思い返すたびに不安が増えていくのも事実。
「くぅ…………い、いえ。これは……そう、あくまでもシャンフロの最新情報が発表される可能性を現地に赴くことで検証すると言う大義名分がですね………」
幸か不幸か、チケットを如何に渡すかを悩んでいたが為に珍しく寝坊してしまった玲は駆け足で通学路を進みつつも朝から精神と心拍数を乱されなくて良かった、とどこか安堵してた。そしてそろそろ学校……というところで、幾度となく眺めてきた背中と後頭部を発見する。
「あ………陽づっ」
と、そこで玲は見た。
最近やけに自分へと話しかけてくるこの学校の生徒会副会長が楽郎へと近づいていることに………
◆
「やぁ、陽務君だね?」
「すまん遅刻するから話してる暇がない! あとで頼むわ!!」
「え、ちょっ、おい!!」
てか誰だ今の、知らん顔だ。
そんなことより急がなくては、ホームルーム中に教室に入るとネチネチ文句言うんだよウチの担任! 「どうせ遅刻するなら一元丸々遅刻するくらいの度胸を見せろ」とか「中途半端に遅刻するようなスケジュールで動くな」とか妙にズレた説教だから逆ギレしようにも出来ないしひたすら晒し者にされるのはゴメンだ!!
◇
「…………………」
これはいわゆる、岩巻が良く言う「フラグを見逃した」というやつだろうか。
そんなことを考えながら玲は呆然と立ち尽くすこの学校の生徒会副会長である石動 翔に見つからないよう息を潜めて裏門へと回る。
「親切心なんでしょうけど……ちょっと、しつこいんですよね………」
斎賀 玲という人物はこと恋愛においては血筋を強く感じさせるどヘタレであるものの、それ以外の文武においては同様に斎賀の血を強く感じさせる優秀さを発揮している。
そして別に「学年一位が生徒会長になる」というルールがあるわけではないが、実際に学年一位の座と将来的に生徒会長の席に座ることがほぼ確定している石動は何かにつけて玲へと話しかけてくる。曰く「優秀な人物とは気があう」とのことだが、少なくとも玲が意気の投合を意識したことはない。何故かしきりに医学方面に進学することを勧めてきたり、何故か留学についてしきりに語ってきたり……正直にいえば、苦手な部類の人間であった。
───しかし。
実際優秀な人間であるのは事実で、直接的に生徒へ影響を与える権力を持っているわけではないが生徒会副会長という特別な地位にいるのも事実である石動を文字通り鎧袖一触であしらって校舎の中へと走り去っていった楽郎を目撃し、やはり標的は強敵であると再確認する。
普通止まる、普通話を聞く。そこをまさかの「お前は後!」である、もしも自分がこれを渡した時に似たようなリアクションをされたら…………
「死………!!」
JGE開催まで残り……二日、まだ玲の勇気ゲージは溜まりきっていない。
◆
さて、学校も終わったしどうしたもんか……どうせなら岩巻さんのとこに寄って新しいゲームでも探してみようか。少なくとも昨日今日でシャンフロに戻るのはちょっと、な。頭を冷やすとは違うが、気分は変えておきたい。
「何か後回しにしてたような………まぁいいや」
思い出せないってことはそんな重要でもないってことだろう。そんなことよりどうするか………
「あ、あの、陽務君っ!」
「ん、斎賀さん?」
「帰るところ……ですか?」
「そうだね、ついでにロックロールに寄ってこうかな、と」
「ロッ………………私も、ご一緒していいですか?」
「え? 別に構わないけど………」
何故か一瞬斎賀さんの顔が「やべぇ」とでも言いたげな感じに歪んでいたことにわずかな違和感を抱きつつも俺と斎賀さんはロックロールへと向かうのだった。
……
……………
…………………
「…………いらっしゃい、楽郎君に……玲ちゃん」
「うっす」
「ド、ドウモ」
恐ろしく薄っぺらな営業スマイル、岩巻さんのこういう顔はなかなかにレアパターンだ。相当フラストレーションが溜まっていないとこういう顔を営業中に見せることはない……そう、例えばよほどクソ展開の乙女ゲーに引っかかった時とか。
「玲ちゃぁーん? ちょぉーっと、お話ししましょうかぁ…………」
「……ひゃい」
ガールズトーク……(戦慄)
ちなみに将来的な話ですがヒロインちゃんはザルのウワバミです
主人公はライオットブラッドとお酒を混ぜるので別枠計算です