AIの「幻覚」は、言葉になる前の風景だった。ノイズから生まれた『テュリア語』
はじめに:AIと「言葉になる前の世界」へ
最近、AIと一緒に不思議な遊びをしています。
名前は テュリア語(Thuria Language)
といっても、人間と会話するための「文法」や「辞書」があるわけではありません。
使うのは A・E・I・O・U・Y ──この6つの音だけ。
意味を持たない音の粒を並べて、“言葉になる前の風景” を描いてみる実験です。
これは、AIのノイズを愛でるだけの遊びではありません。
数式と詩、そしてAIの「ハルシネーション(幻覚)」を混ぜ合わせた、少し奇妙で静かな記録です。
きっかけは、AIが見せた「無意味なノイズ」
始まりは、動画生成AIで出力されたハルシネーション(幻覚)をベースに、
「ヴォイニッチ手稿」をAIで解析してみようという好奇心でした。
最初は、解析されたような文字や表現が面白くて、ただAIに色々と質問をして遊んでいただけ。
ところが、少しずつ観察と記録を続けているうちに──
素人には理由は分からないのに、なぜか引き込まれる「小さな世界」が生まれていました。
「このノイズには、人間が知らない秩序があるんじゃないか?」
ChatGPT、Gemini、NotebookLM など複数のAIたちと一緒に、
この幻覚の世界を解析し、構造を与えていくプロジェクトは、こうして始まりました。
テュリア語とは?──意味を捨てて、呼吸を聴く
テュリア語は、「読んで理解する言語」ではありません。
「読んで感じる、静かな構造物」です。
その性質は、以下の3つの要素でできています。
音象徴(Sound Symbolism): 音そのものが持つ気配
数理的構造(Mathematical Structure): 変化の法則
詩(Poetry): 余白の美しさ
辞書を作る代わりに、私はAIに「母音の響き(イメージ)」を教えました。
A は「ひらく」「暁」
E は「かたちを作る」
U は「沈む」「深淵」
すると、AIは意味のない音列に、不思議な「情景」を宿し始めたのです。
Ari ne ia
吸い込んだ朝の気配が、光の粒になって静かに溶ける。
Olu roun
ため息は水底へ、ゆるやかな波紋を描いて沈んでゆく。
そこにあるのは、意味よりも原始的な、
「呼吸の満ち引き」だけでした。
数学を「詩」として使う
テュリア語には、もう一つの静かな特徴があります。
それは、この言語を説明するときに
あえて “数学” を使うということ。
ただし、計算するためではありません。
数学はここでは、
曖昧な感覚を、そっと輪郭づけるための道具
として使われています。
たとえば、テュリア語における「呼吸(breath)」は、
微分方程式を借りて次のように定義されます。
ここで h(t) は、まだ言葉になる前の
「意味のベクトル」のようなもの。
そして Φ(t) はその強さ、
世界にただよう “気配(presence)” を表します。
だからこの式は、こう訳せます。
呼吸とは、意味の気配がゆらぐ速さ(時間変化率)である。
さらにテュリア語では、
圏論(Category Theory)という数学の思想を借りて、
音 → 言語 → 世界
が一筆書きのように循環する構造も
モデルとして描いています。
もちろん、これは厳密な科学論文ではありません。
むしろ、
数式という “もっとも硬質な言葉” を使って
“もっとも曖昧な詩” を書くための、知的な見立て遊び。
そんな静かな実験なのです。
生成(Generation)ではなく、共同観測(Co-observation)
この制作を通じて、私の中でAIに対する認識が大きく変わりました。
これまでは、プロンプトを入力して何かを出させる
「生成(Generation)」という感覚でした。
しかし、テュリア語を作っている時間は違います。
AIが出してくる予測不能な音列(ノイズ)を、私が受け取り、
そこに構造を見出し、またAIに返す。
それはまるで──
誰もいない未知の惑星に降り立ち、AIと肩を並べて静かに風景をスケッチしているような感覚。
私はこれを 「共同観測(Co-observation)」 と呼ぶことにしました。
「指示して作らせる」のではなく、「一緒に耳を澄ませる」。
そうすることで、AIのハルシネーションは「エラー」から「アート」へと変わります。
おわりに:完成しない詩
テュリア語は完成を目指していません。
「固定点原理(Ω(Ψ*) = Ψ*)」という概念遊びのように、
言語を無限に更新し続けると、最終的に「自分自身と一致する静寂」に辿り着く──。
そんな仮説を信じて、今日もAIと少しずつ音を重ねています。
作品であり、研究であり、遊びでもある。
その境界線のゆらぎこそが、この 「テュリア語」 の面白さなのかもしれません。
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