医療崩壊はもう始まっている〜混合診療解禁はいつ来るのか〜
2040年には外科医不足でがん手術が半年待ちになる——そんな予測がSNSで話題になっています。しかし、これは未来の話でしょうか。公立病院の83%が赤字という現実を見れば、崩壊はすでに始まっていると言わざるを得ません。
手術半年待ちの世界
外科医が足りなくなれば、手術の順番待ちは長くなります。イギリスでは公的医療で心臓手術や人工関節手術が半年から1年待ち。日本でも同じことが起きようとしています。
半年待ちとは何を意味するのか。がんなら進行します。ステージIで見つかっても、手術の頃にはIIIになっている。根治できたはずの患者が手遅れになる。これは「不便」ではなく命の問題です。
待機リストが長くなれば、必ず「割り込み」の需要が生まれます。数百万円払ってでも今すぐ手術を受けたい。そう考える人が出てくるのは当然の流れ。高額自由診療で手術する病院が登場し、外科医を高報酬で囲い込む。「命の順番を金で買う」時代への突入は、もはや避けられないかもしれません。
国民皆保険という聖域
国民皆保険は「日本の誇り」として神聖視されてきました。ここに手を入れると言った途端、野党もメディアも「弱者切り捨て」の大合唱になる。政治家にとっては票を失うだけの自殺行為に見えます。
しかし現実は待ってくれません。病院は赤字で潰れていく。外科医は減り続ける。高齢化で医療需要は増える一方。制度を守ろうとして制度ごと崩壊するという最悪のシナリオが近づいています。
病院が潰れてからでは遅い。医療機能は一度失うと取り戻せません。建物や設備の問題だけではなく、散り散りになった医療スタッフ、特に外科チームを再構築するのは事実上不可能。地域から外科医療が消えたら、それっきりです。
現場はすでに動いている
表向きは「平等な医療」を掲げながら、病院は生き残りをかけて独自の策を講じています。
全室個室の病院。高額個室患者の優先対応。寄付者へのゴールドカードとコンシェルジュサービス。実はこれらはすべて合法です。差額ベッド代は患者の「希望」であれば徴収できる。寄付は診療報酬の枠外。入院の順番は医療機関の裁量で決められる。
混合診療禁止の建前を維持しながら、実質的な二層化は静かに進んでいる。制度だけが昭和のまま取り残されているのが現状です。
海外の医療制度はどうなっているのか
日本だけが特殊なわけではありません。各国それぞれの形で、医療費と公平性のバランスに苦しんでいます。
イギリス(NHS) は税金で運営される完全公的医療。患者負担は原則無料ですが、その代償が長い待機時間です。心臓手術や人工関節置換術は半年から1年待ちが常態化。緊急性のない手術は後回しにされ続けます。富裕層はプライベート保険に加入し、私立病院で即座に手術を受ける。結果として二層化が進んでいます。
アメリカ は民間保険中心の制度。保険に入っていれば待ち時間は短く、最先端の医療を受けられる。しかし無保険者は約2500万人。医療費は高額で、盲腸手術に300万円以上かかることも珍しくありません。「払えなければ治療を受けられない」という残酷な現実があります。
ドイツ は公的保険と民間保険の混合型。国民の約9割は公的保険に加入し、一定所得以上の人は民間保険を選べます。民間保険加入者は予約が取りやすく、個室対応など優遇される。公的保険でも医療水準は高いですが、明確な二層構造が存在しています。
フランス は公的保険に民間の補足保険を組み合わせる形。公的保険でカバーされない自己負担分を民間保険で補う仕組みが一般的です。混合診療は普通に行われており、患者は追加料金を払えばより良いサービスを受けられます。
どの国も「完全な平等」は実現できていません。違いは、二層化を制度として認めるか、建前で隠すかだけ。日本は後者を選び続けてきましたが、そろそろ限界が見えています。
混合診療という現実解
混合診療の解禁は「金持ち優遇」と批判されがちですが、実態は逆です。
今の制度では「全員平等に待つ」か「完全自由診療で全額自己負担」の二択しかありません。混合診療が認められれば、保険診療で基本部分をカバーし、手術の優先枠や執刀医の指名を自由診療で上乗せできる。中間の選択肢が生まれます。
民間保険でこの上乗せ部分をカバーする商品も登場するはず。がん保険や先進医療特約に加入する人は多く、「保険で医療の質を買う」ことへの抵抗感はすでに薄れています。
医療機関にとってもメリットがあります。赤字の保険診療を自由診療部分で補填できれば、病院経営は安定する。外科医の待遇改善にもつながり、流出に歯止めがかかる可能性もある。
いつ混合診療は解禁されるのか
政治的には誰も鈴をつけたがらない聖域。日本医師会、厚労省、野党、メディア——反対勢力は根強い。
現実的に見えるシナリオは二つあります。
一つは、財政危機や医療崩壊が顕在化し「もう選択の余地がない」段階で、なし崩し的に解禁される道。もう一つは、制度を変えないままグレーゾーンが拡大し、事実上の二層化が定着する道。
いずれにせよ「全員に同じ医療を同じ負担で」という時代は終わります。
どうせ二層化が避けられないなら、正式に制度化した方が健全です。こそこそやるより透明性が高く、公正な仕組みになる。混合診療解禁は崩壊しつつある医療を持続可能にするための、現実的な選択肢ではないでしょうか。
崩壊が先か、解禁が先か。残された時間は多くありません。
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