視聴者に情報を伝えるうえで重要な役割を担うアナウンサー。フリーアナウンサー・武田真一さんはどんなことを意識してきたのか。AERA 2025年12月22日号より。
【写真】「本当に思っていること以外は口にしません」と話す武田真一さん
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──高校生時代にはバンド活動に熱中。大学生時代には演劇にも関心を持ち、将来は言葉の世界で仕事を、と意気込んだ。
コピーライターを目指していたのですが、就職活動では第一志望の大手広告代理店に落ち、友人に誘われて受けたNHKの内定を得ました。アナウンサーとしての採用でしたが訓練も何もしていないし、他局のセミナーに行ってみれば同期の女性が見事にグループディスカッションを言葉巧みに仕切っているし。こんな達者な人がいるなんて、自分にはとても務まらんわいと思いました。私が学生のころに書いた歌詞や演劇で発したセリフなどは言葉遊びで、ただの自己満足でしかなかったと気づかされました。
アナウンサーが自分の感覚で好きなように話しても、視聴者の皆さんの役には立たないんです。視聴者に届かなければ、その言葉が何の意味も持たなくなる世界。「物事を伝えるための道具としての言葉」という考え方は、当初は窮屈に感じました。
本当に思っていること以外は口にしない
──アナウンサーとして初めてテレビに出演した時のことは苦い記憶として残っている。
何かあいさつをしろと言われて、「えー、今日はお日様が照っていて、とてもいい天気ですね」と言ったんです。そうしたら後でものすごく怒られました。「お日様ではなく、太陽」という指摘よりも響いたのは「いい天気とはどんな天気だ」という問いでした。自分にとっては“いい”天気でも、雨が降ってほしいと願っている農家さんにとっては違う。
ここから学んでいったのは、自分の言葉がどう聞こえるのか、聞き手側にしっかりと立つということです。

















