彫刻家・伊八 没後200年の企画展 現代視点で再評価 千葉・鴨川
「波の伊八」の異名で知られる江戸後期の彫り物大工、武志伊八郎信由(たけしいはちろうのぶよし)(初代伊八)の没後200年を記念した企画展が、千葉県鴨川市郷土資料館で開かれている。造形力の高い彫刻家であり、優れたデザイナーでもあった伊八の作品を現代人の視点で再評価する。 【写真でみる】伊八が残した作品 伊八は宝暦2(1752)年に現在の鴨川市打墨で生まれた。神社仏閣の向拝(屋根の張り出した部分)や欄間などに装飾彫刻を彫る職人となり、南関東を中心に50点あまりの作品を残した。73歳で生涯を閉じたのは文政7年12月19日(1825年2月6日)で、今年は没後200年にあたる。 波の表現力に優れ、葛飾北斎にも影響を与えたとされる。このため同業者間で「関東に行ったら波を彫るな。伊八がいるから恥をかくぞ」と言われたと伝えられている。 寺社に取り付けられる部分への彫刻が彫り物大工の仕事だ。あまり立体的ではない作品が多いが、鴨川市の大山寺に残る倶利伽羅(くりから)竜(1803年ごろ)や獅子(個人蔵、1810年代)など、建物への取り付けを前提としない立体彫刻を残している。 20年以上伊八の研究を続ける鴨川市史編さん委員会主任委員の石川丈夫さんは「200年後を生きる我々からすると、伊八が彫刻家として高い技量と造形性を持っていたと評価できる」と話す。 卓越したデザインセンスをうかがわせる例として、真高寺(市原市飯給)山門の梁(はり)に彫られた「鳳凰(ほうおう)」(1791年)を紹介する。羽や胴体が植物のつるなどをモチーフに描かれ、羽ばたく霊鳥が生き生きと表現されている。「意表を突いた組み合わせで、古さを全く感じさせない。現代にも通じるデザイン能力を持っていたことがうかがえる」と石川さん。 今回の企画展では、房総半島南部の寺社に残る伊八の作品や写真を展示する。千葉大デザイン文化計画研究室が伊八作品の形状を三次元(3D)データにし、それをもとに3Dプリンターで制作したレプリカも並べる。 研究室は倶利伽羅竜の欠損した角を、称念寺(長南町)本堂の欄間にある伊八作品「龍三体の図」をモデルに復元する作業にも取り組んでいる。このプロジェクトの中心メンバーで研究室技術補佐員の高木友貴さんは「大きさも置かれていた場所も異なるが、それらのデータを取り込んだうえで、伊八の制作意図もくみながら復元したい」と話している。 企画展は2026年3月1日まで、午前9時~午後5時。年末年始と月曜(祝日の場合翌日)は休館。料金は大人200円、高校生以下150円。問い合わせは鴨川市郷土資料館(04・7093・3800)。【岩崎信道】