改良主義は日本車メーカーの強み
EU、もとい欧州は理想主義的な存在である。ある理想を掲げて、それに向かって内外をけん引しようとする。そうしなければ、欧州の多くの国をまとめることはできないし、また欧州が一つとなって世界に影響力を及ぼすことができない。一方で、その欧州がライバル視する米国であり中国は現実主義的な存在であり、性格がかなり異なる。
例えば中国は、EUがEVシフトを重視するなら、安価なEVをどんどん生産し、それをEU市場に投入しようとする。一方で、日本は改良主義とも言える存在だ。ある課題を克服するに当たって、一つ一つ、課題をクリアし、バランスを取ろうとする。一見すると迂遠だが、大きな流れが変わったとき、その方向をすばやく修正できる。
自動車の電動化であり脱炭素化そのものが揺るぎないメガトレンドであるとして、問題は炭素の排出をどう削減していくかにある。そのためには多様な手段があるべきで、その複数の手段の中で競争が行われ、合理的な手段が選択されることが望ましい。強い政府が経済をコントロールすることを好む欧州は、こうした経済原理を忘れている。
その点、日本は改良主義の機運が色濃い。日本でも政府による産業政策を強化すべきであるという機運が高まっているが、それはコントロールではなく、あくまでアシストであるべきだ。コントロールの性格が濃くなれば、それこそ日本の強みである改良主義の機運が萎み、欧州の轍を踏みかねない。この点はきちんと整理すべきだろう。
今回のEUのEVシフト目標の延期であり、実質的な放棄は、EUが持つ政策運営の上の問題点を体現した出来事である。政府と経済の関係を考えるうえで、学ぶ点は非常に大きい。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)