このCAFE規制の強化に踏まえて、各自動車メーカーが廉価なEVを市場に投入した。ルノーのサンクを始めとして、日系メーカーも新型モデルを相次いで投入している。こうした新型車効果が需要を刺激し、EVの市場は堅調に成長した。もちろん、欧州中銀(ECB)が利下げを進めたことで、金利負担が軽くなったことも見逃せない。
とはいえ、こうした規制の強化に伴う市場の活況は、あくまで人為的かつ一過性のものだ。廉価版のEVを投入したとはいえ、関税を課されたはずの中国製EVの方が依然として高い価格競争力を持っており、各自動車メーカーの苦境は続いている。それもあって、各自動車メーカーはEV以上にHVの販売に注力しているのが実態である。
実際に数値を確認すると、HVは2025年1-10月期の累計で15.6%増の310万9362台と、こちらも過去最大の登録台数である。事実上の日系メーカー潰しの意味合いも強かったEVシフトだが、結果的には、HVに優位性を持つ日系メーカーに塩を送る事態となっている。この辺りも、EUのEVシフトの大きな誤算だったと言えよう。
さらなる目標の延期の可能性も
2025年のEU市場の活況は作られたものであり、当然ながら長くは持たない。結局のところ、2035年までの新車EVシフトは不可能であるというコンセンサスが形成されたからこそ、EUは新車EVシフト目標を後ズレさせたわけだ。実態としては放棄でも、名目としては延期という体を成すところに、EUの問題点が集約されている。
EUの主要国のうち、フランス政府は最後まで新車EVシフト目標の維持に積極的だった。このことが示すように、この新車EVシフト目標は欧州委員会とフランス政府の意向を強く反映して設定されたものだと考えられる。またウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長と、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の関係は非常に近しい。
そもそもEUの規制運営は、フランスの規制運営の影響を強く受けている節がある。そもそもフランスは“強い政府”が経済をコントロールすることを重視する。EUもまた強い姿勢を示さなければ、加盟27カ国を一つの方向に導くことができない。ゆえに、加盟国間の利害が対立することを承知で、加盟国の経済のコントロールを試みる。
こうしたメカニズムである以上、EUでありフランスの権威が失墜すれば、加盟国はバラバラとなってしまう。いかにして体面を保ちつつ、規制運営を修正するか。そのための手段が規制の実施の延期であり対象の限定となる。特に規制の実施の延期に関しては、それをさらに延期することで、実質的な適応の撤廃を図ることも可能となる。
したがって、2040年までに延期された今回の新車EVシフト目標は、今後、さらなる延期が視野に入る。実態として、すでにCO2排出削減目標は下方修正され、さらに100%削減を目指すことをやめたという点で、EVシフト目標は放棄されたに等しいが、今後はより明確に、さらなる延期というかたちで、目標は修正されていくだろう。