「カリフ制=テロリズム」という前提は、歴史的にも学術的にも成立しません。
それは制度の定義を無視し、現代の一部過激組織の行為を、1400年以上続いた政治制度全体に短絡的に当てはめる誤謬です。
① カリフ制の歴史的定義
カリーファ(Khalīfa)とは、
まずアラビア語で「代理」「継承者」を意味し、預言者ムハンマドの死後、イスラム共同体(ウンマ)を統治する政治的指導者を指します。
歴史上の主要なカリフ制は以下の通りです。
1-正統カリフ時代(632–661)
2-ウマイヤ朝(661–750)
3-アッバース朝(750–1258)
4-オスマン帝国(1517–1924)
これらは国家体制でした。
テロ組織の定義(非国家主体による無差別暴力)とは根本的に異なります。
② テロリズムとの定義的違い
一般的な国際定義において、テロリズムとは、非国家主体、無差別攻撃(殺人や爆撃)、恐怖による政治的圧力を特徴とします。
一方、歴史的カリフ制は
* 国家主体
* 法制度と裁判
* 外交関係(ビザンツ帝国・中国・欧州諸国と条約)
を有しており、定義上テロリズムではありませんでした。
③ 現代過激組織との混同という論理破綻
いわゆるイスラム国「ISIS」などが自称した「カリフ制」は、イスラーム法学者の大多数から彼らの行なってきたこと全てに対して「正統性なし」と明確に否定されています。
参照リンク⇩
rissc.jo/open-letter-to
(写真も要約を添付しときます。)
これは、例えばキリスト教を名乗る過激派が犯罪を犯しても
→ キリスト教国家制度全体が否定されないのと同じです。
自称と正統性は全く別物です。
④ 日本の文脈との比較について
「日本には天皇がいるのだから、カリフ制は不敬だ」という主張も、制度理解として成立しません。
天皇:
* 象徴的・宗教的権威
* 政治権力は憲法上持たない
カリフ:
* 政治・行政・司法の長
* 国家元首
役割も性質も全く異なる制度を同一視するのは、比較対象の誤りです。
日本の天皇制と対立概念として扱うのは学術的に不正確です。
・結論
カリフ制は歴史的国家制度であり、テロリズムは現代の非国家的暴力行為のことです。
両者を同一視することは歴史の切断・定義の混乱・感情的レッテル貼りに過ぎません。
制度批判を行うのであれば、
歴史・定義・文脈を正確に理解した上で行うべきです。
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