《結婚、そして出産したのは平成初期。女性がフルタイムで働き続けることは多くない時代だった》
夫の実家は千葉県鴨川市内で書店を経営し、夫の母も子育てをしながら働いてきたので、私が獣医師を続けるのをサポートしてくれました。子供たちもおばあちゃんっ子です。
夫は学生時代に北海道で1人暮らしをしていたので、家事もできて子供が大好きな人です。いつも優しいので、子供たちもお父(とう)が大好き。ファミレスに行くと2人ともお父と座りたがって、ボックス席で私1人に向こう側に3人という座り方になる。これにはちょっと腹が立ちましたけれど(笑)。ちょっとした言い合いでも、娘から「パパをいじめないで」と言われたことがあります(笑)。
長男が小学生のころ、当館にテレビ局の取材があり、人気アイドルと私が一緒に番組に出演したことがありました。放送の翌日、長男は学校で友達から「お前の母ちゃんスゲー」と言われ、「うちではフツーの母ちゃんだよ」と返したのだそうです。これはうれしい出来事として、今でもよく覚えています。
《2人の子供は独立し、孫も誕生した》
「警察の世話になるようなことはするな」以外は、勉強に関してもあれやこれやと言うことはしませんでした。大切なのは、心身ともに健康に過ごせるようにすることです。そうすれば子供は育つということを海獣たちからも教わってきました。後年、子供たちが家を出るとき、「うちの常識は非常識だから」とよく言って聞かせて送り出しました。
長女も長男も反抗期的な時期はありました。海外留学に行きたいと言われ、無理だと実情を話したことも。バブル崩壊以降、ボーナスが出ない時期もありましたし、ないものは出ません。
子供たちは大学を卒業後、それぞれ就職しました。水泳をしていた長男はスポーツ系の学部で入学したと思ったら、途中で「生物をやりたい」と転科し、現在はドローンで生物を調査したりしています。娘は大の犬好きですし、動物好きは親からの遺伝ですね。
その長男には子供が2人います。上の子は3歳で、魚に興味が出てきたころです。自動車メーカーに勤める長女もこの夏、出産しました。勝俣のおばあちゃんが子供たちを育ててくれた恩返しは、生まれたお孫ちゃんたちに返さなくちゃ。
私の実家も夫の実家も親戚の集まりが多く、わいわいと過ごすのが好きな家同士です。子供たちもこの大きなファミリーの中で面倒を見てもらいながら育ちました。これは子供たちの成長にとって、とても良かったことだと思っています。
《夫の浩さんは平成28年、鴨川シーワールドの館長に就任し、現在も務める》
初代の鳥羽山照夫館長から見てきましたが、水族館の館長には多くの動物、そして職員の生活を預かる重い責任があります。私も獣医師として館長の方針に従い、運営に携わっています。
とはいえ、うちではフツーの父ちゃんとフツーの母ちゃんです。朝起きたら、犬の散歩と掃除、犬に餌をあげるのとコーヒーをいれるのは私。育ち盛りの子供がいるころは「飯を食わせる」が最大のミッションでしたが、今はもう子供たちも独立したので、適当にやりましょう。仕事から帰ると、まずはワンコをなでなでしながら缶ビールをプシュー。夏には庭に熟したゴーヤを収穫。ゴーヤチャンプルーをつくるのは母ちゃんか、父ちゃんか。(聞き手 金谷かおり)