ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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さあ、エンジン掛かって参りましたァ!!(作者の他作品比)


第102話:間違い

「プピファァァァァーッ!!」

 

 

 

 その外骨格は、より分厚く、より堅牢に、そして──より屈強に。

 腕は膨れ上がり、機械のように継ぎ目が刻まれていく。

 頭部には巨大な第二の角が生え、その雄々しき姿は神話の英雄が如く。

 隣に立つアルカは、変身を遂げた相棒の肩を叩くと「行くよ」と小さく告げる。

 頷いたヘラクロスは、標的目掛けて腕を向けるのだった。

 

「──”ミサイルばり”!!」

 

 腕のハッチ状になっている部分が開き、ヘラクロスが前のめりになる。

 そして、角が赤く光ると、腕から幾つものミサイル状の針が飛び出し、カバルドン目掛けて射出されていく。

 それらは正確にカバルドンの頭部を狙い撃ち、ぐらり、と身体を揺らすのだった。

 まともなポケモンの攻撃は通りはしないと思われていた巨大なカバルドンだったが──相手が悪かったとしか言いようがない。

 全てのポケモンの中でも最高クラスの攻撃種族値を誇るメガヘラクロスの一致抜群技。

 更に特性はスキルリンク。連続で当たる技は、全て吸い込まれるように標的に命中する。

 耐えられるのならば、最早それはポケモンを逸脱した何かとしか言いようがない程に、強力な攻撃だ。

 それはカバルドンの分厚い皮膚に突き刺さり、炸裂し、藻に塗れた表層を破壊していく。

 

「カッパババババァァァァ!?」

「すごい、効いてる……オニゴーリ達のフリーズドライもあまり効かなかったのに……!」

 

(メガヘラクロスの特性は”スキルリンク”! 連続技は必ず5回当たるぜ! メガシンカ前提なら、連続技を中心の技ビルドが良いと思うぞ)

 

「おにーさんが言ってた通りだ……ッ! ミサイルばりが破壊的な威力になってる……!」

 

 腕と腹から放熱したヘラクロスは、更に次弾を装填していく。

 しかし、怒り狂ったカバルドンがこちら目掛けて背中の甲羅に開いた穴から水を噴き出してくるのだった。

 

【カバルドンの ねっとう!!】

 

 全方位にぶちまける勢いで放たれたそれは、ヨイノマガンの身体を濡らすべく襲い掛かった。

 しかし。放たれた水は全てヨイノマガンに届くことなく静止してしまう。

 

「ごめんね。君を助ける為、そして君に故郷を壊されないために、()必死なんだ」

 

 カバルドンの周囲は既に、無数のシンボラーが取り囲んでいた。

 彼らの展開した”ひかりのかべ”がカバルドンの技を受け止めたのだ。

 トドメと言わんばかりにヘラクロスが狙いを定め、再び”ミサイルばり”を放つ。

 此処からならば、狙い放題。次々にそれはカバルドンの身体に突き刺さっていき、そして次々に炸裂していく。

 どかん、どかん、と煙が上がり、カバルドンの抵抗も弱々しくなっていく。

 だが同時に、ヨイノマガンとアケノヤイバの放つサイコパワーが限界だったのか、カバルドンの身体がぐらり、と揺れたのが見えた。じっくりとだが落ちている──

 

「マズいッ!!」

 

 落ちる。そう考えると、もう居ても立ってもいられなかった。

 アルカは、ヨイノマガンの身体から一気に──空目掛けて飛び出した。

 

「頼むよ──ハイパーボール!!」

 

 アルカの握ったボールはカバルドンの腕にコツン、と当てられ──巨体を小さなボールの中へと封じていく。

 しばらく、それはカタカタと音を立てながら揺れていたが──カチリ、とロックが掛かったのが聞こえるのだった。

 だが当然、重力に従ってアルカの身体は、空から落ちていく。

 しかし不思議と彼女は恐怖を感じなかった。

 落ちる彼女に追いつき、お姫様抱っこで受け止めたのは──ヘラクロスだった。

 無茶に次ぐ無茶に、流石に呆れたような顔をしていたが。

 

「大丈夫。万が一の時は、君が助けてくれるって信じてたからね?」

「プ、プピファー……」

 

 あまり心配させないでくれよ、という顔をしたヘラクロスに「ごめんごめん」と返したアルカはハイパーボールを握り締める。

 ──カバルドン、捕獲成功。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 カバルドンの身体が消えたのを見て、アルネの顔からは精気が無くなっていった。

 虎の子だったカバルドンが捕獲されたのを察したのだ。

 カリカリカリと指の爪をヒステリックに噛んでいたが、次第に──先ずはこの場にいる全員を始末してしまおうと考える。

 

「……冗談じゃない。冗談じゃない! おやしろを破壊出来たのに、姉さん一人連れて戻れなかったんじゃあ、私のプライドが許さない……ッ!」

「もう大人しく帰った方が良いんじゃねえか?」

「貴方にだけは言われたくないッ!」

「尤も大人しく帰すつもりはないでござるがなッ!!」

 

 ヘイラッシャが突貫したのを避けても、今度は後ろから”りゅうのまい”で素早さを上げたバンギラスが突貫してくる。

 2匹をまとめて爆炎で吹き飛ばそうとするフーディンだったが、あまりにも2匹が頑強過ぎて粉塵爆破如きでは傷一つ付いた様子がない。

 

「ヘイラッシャ、アクアブレイク!!」

「バンギラス、ストーンエッジで狙うでござるよ!!」

 

 二匹の連携がフーディンを的確に襲う。

 札で守ろうとするが、バンギラスとヘイラッシャの火力を前に受けきることが出来ていない。

 ましてや、効果抜群の物理攻撃など、紙耐久のフーディンにとっては受けてはいけない攻撃だ。

 ギガオーライズ・フェーズ2で幾ら耐久が向上したと言えど、所詮フーディン族はフーディン族。

 当たれば倒れる程度の装甲でしかないのである。

 かと言って”ハッカイ・コトリバコ”はノオトづてで既に対策が取られてしまっており、破られてしまえばフーディンが倒れるという諸刃の剣。

 更に2匹にいっぺんに弱点を突ける技が無いので、片方を狙えば片方に狙われるという地獄のような状況が生まれてしまっていた。

 故に、オニドリルを繰り出して地面弱点2匹をいっぺんに倒すことにしたアルネであったが、

 

「──アクアブレイク!!」

 

 速い。想定以上にヘイラッシャが速過ぎる。

 突貫したヘイラッシャは、出て来たばかりのオニドリルに体当たりし、そのまま向こうまで吹き飛ばしてしまうのだった。

 

「オニドリル──やれやれ、拙者一人では突破されていたでござるな。ナイスでござるよ、メグル殿」

「へへへっ、露払いなら任せてください!」

 

 この時点でアルネは悟る。バフにバフを重ねたこの2匹を、フェーズ2とはいえ相性不利のフーディンで相手出来ているのが奇跡のようなものなのだと。

 幾ら準伝クラスの種族値と言えど、メガシンカで禁止伝説級の種族値を手に入れたバンギラスと、全能力2倍になっている上に特防に補正が掛かったヘイラッシャに勝てはしない。

 しかもバンギラスは動きの中に”りゅうのまい”を取り入れており、徐々に速度を上げていっているのだ。

 

(あの動きって、リュウグウさんのギャラドスがやってたやつだよな……!?)

 

 ともすればキリという人物がキャプテンの中で序列二位に位置付けられている理由も、おのずとメグルは理解できた。

 キリは、あのリュウグウの常軌を逸したレベルの育成法に追いつくことが出来る、数少ない人間なのだ。

 

「やっぱキリさんすげえ……ッ!」

「そ、それなら──ッ!! フーディン、後ろの二人に”サイコキネシス”!!」

 

 ぴたり、とメグル、そしてキリの身体が硬直し、そして浮かび上がった。

 

「しまッ──!?」

「……先ずはトレーナーから片付ければ良い! 簡単な話だった! フーディン、オオワザ──”ばくえんあらし”!!」

 

 浮かび上がらされた二人の周囲に炎の粉が充満していく。

 それがフーディンの一存で爆ぜれば、2人は丸焦げで済めば良い方である。

 すぐさま二人を助けるべく、ヘイラッシャとバンギラスが飛び掛かろうとするが「動くなッ!!」とアルネが叫ぶ。

 

「……動いたら、粉塵を爆発させる……ッ! 二人の命は無い……ッ! 何なら、首から地面に叩き落としてやってもいい……ッ! 私はどうやったら生き物が死ぬか、ちゃあんと熟知してるから」

「ギラァ……ッ!!」

「ラッシャーセー……ッ!!」

「成程……古典的でござるな。しかし最早、正攻法では我々を落とせないと認めたも同然でござろう」

 

 アルネは返答する気にもならなかった。

 さっきと同じだ。フェーズ2の力を過信していたので、トレーナーを直接狙わなかっただけのこと。

 それを今になって、切り替えただけだ。

 

「ムーンフォース!!」

 

 主人を人質に取られ、無抵抗なバンギラスに、月の加護を受けた強烈な一撃が喰らわせられる。

 しかしなぜか倒れない。アルネは眉を顰めた。

 今度は、大量の起爆札をヘイラッシャに貼り付け、爆発させる。が、やはりこちらも倒れない。アルネの眉間の皺が増えた。

 

「おかしい……ッ! どう考えてもおかしい……ッ! 計算が合わない……ッ!」

「数値が足りてねえからだろ、むしろブチ抜かれたらどうしようって思ってたわ」

「うるさい! 何度か攻撃をぶつけていれば──」

「……それに加え、そのフーディン。先程までとは明らかに技の出力が落ちていることに気付いていないでござるな?」

「……?」

 

 馬鹿な、と言わんばかりにアルネはフーディンの方を見やる。

 肩で息をしており、目が血走っている。疲弊を全く隠せていない。

 

「まさか……ッ! いけない! ”ばくえんあらし”でそいつらを殺せ!!」

 

 それに気付いた瞬間、アルネは先にトレーナー二人を爆殺するべくフーディンにオオワザを指示する。

 しかし、もうフーディンには粉塵を爆発させるだけの余力は残っていなかった。

 ふぅ、と粉塵は消え失せて──フーディンは腕を地面に突いてしまう。

 

「ただのギガオーライズだって、負担が掛かって休めないといけないんだ。フェーズ2とやらが、ポケモンに負荷が掛からねえわけねえだろが」

「メガシンカも、鍛えなければ長い間続けることはできないでござるからな。持久戦に持ち込めば、勝手にそちらが息切れすると考えたでござるよ」

「あ、ああ、ああああああッ!!」

 

 フーディンの身体から光が消えて、ただのギガオーライズ状態に戻ってしまう。

 最早魔法の時間は解けたも同然だった。これは、長い間戦いすぎただけではない。

 伝説のポケモンでなければ持ち上げられないようなカバルドンを、何度も上空から叩きつけるような無茶をしたからである。

 その反動が今になって、フーディンに返って来ただけのことである。

 がはっ、と咳き込むと、アルネは二人を睨み付ける。もう、抵抗することなど出来なかった。

 周囲には、自分が怒りに任せて”ばくえんあらし”に巻き込んだ所為で、もう眠り状態が解けても起き上がれないであろうテング団の団員が伏せている。

 まさに自業自得。慢心の極み。

 おやしろを破壊して満足して帰っていれば起きなかったのを、余計な事をしたばかりに招いた窮地であった。

 ましてや、オオワザが不発した以上、フーディンには大きな隙が生まれてしまっていた。しかし。

 

「まだ、負けてない!! まだ──!!」

 

 周囲に大量の御札が浮かび上がる。

 残る全てを出し切らんとばかりに生成されたそれらは、巨大な九尾の狐の姿を象る。

 それらを前にして、バンギラスもヘイラッシャも飲み込まれてしまう。

 御札の海を前に、彼らは身動きすらままならない状態に陥る。そしてメグルとキリも、大量の御札を前に一歩も動けない。

 

「くっ、何処にこんな力が!?」

「こんな事も、あろうかと──ッ!!」

 

 メグルはオージュエルに触れる。

 ヘイラッシャの目が光った。

 口の中に居るシャリタツが、大量の御札の中にいるフーディンを捉える。

 オーライズしているのはヘイラッシャだけではないのである。

 

(この技は一度見ているから、マネできるはずだ──シャリタツ!!)

 

 その指示を受けて、ヘイラッシャはがばぁと口を開けた。狙い良し。撃ち方良し。

 後は、解き放つだけだ。

 

「スシーッ!!」

 

 

 

【シャリタツの たそがれのざんこう!!】

 

 

 

 シャリタツの両手から、極光が真っ直ぐに飛び、御札を焼き尽くし、そして──フーディンを撃ち抜いた。

 御札は次々に消えていき、拘束されていたヘイラッシャとバンギラスは地面に落ちる。

 そして、オオワザの直撃を受けたフーディンもまた、力無く地面に落ちてしまう。

 それでもまだ、執念深く起き上がろうとしていたがすぐさまヘイラッシャがその身体全部で押し潰し、今度こそ沈黙するのだった。

 

「よっし!! 今度こそ終わりだ!!」

「ラッシャーセー!!」

 

 更に、押し潰されたことで、身に着けていたオーパーツである勾玉も、ピキピキと音を立てて割れてしまう。

 そして逃げようとするアルネだったが、使い物にならない傷だらけの脚では逃がしてくれる味方がいなければ逃げることもできない。

 周囲にバンギラスのストーンエッジが突き刺さり──即席の牢屋が出来上がるのだった。

 

 

 

「……詰み、でござるな。三羽烏アルネ」

「ッ……!」

 

 

 

 ごろん、とヘイラッシャがフーディンから退く。

 倒れたフーディン。そして、尻尾に巻かれていたオーパーツの勾玉が砕けているのが彼女の目にも見えた。

 

「さあて、洗いざらい吐いてもらうでござるよ。テング団の目的。その他諸々」

「それとも、また仲間が助けに来てくれるのか?」

「……!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──数年前。

 

「……姉さんの所に帰りたいのだけど」

「お前の頭を、ヒャッキの文明を発展させるのに使わねえのは勿体ねえだろ?」

「……私が、ヒャッキの文明を発展させる?」

「そうだ。オニもキュウビも退け、テングの国が一番になるためには、技術革新が大事だよなぁ? より質の高い戦争が出来るってもんだぜ」

「……貴方は私が怖くないの?」

 

 アルネは──タマズサに問うた。

 

「私にとって全ては実験道具。貴方も例外じゃない。私の頭脳はいずれ、貴方を含めた全てを滅ぼすかもしれない」

 

 彼は「カッカッカ!」と笑い飛ばすと言ってのける。

 

「怖い? 俺様はヒャッキで最強の男・タマズサだぞ。ヒャッキが滅んでも、俺様だけは高笑いしていると思うぜ」

「……ッ」

 

 その目を見た時、アルネはこの男ならば本当にそうかもしれない、と思ってしまった。

 底知れない目だった。

 自分と同じ、何かが欠落したような──

 

「それに、ヒャッキを滅ぼす程の頭脳を持つお前だからこそ、俺様は──テメェを娶ったんだぜ」

「……ん」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「こ、これで完成した……! 私だけの完璧な姉さんプランが……!」

 

 屍の山を築き上げて、オーライズを完全なものとし、量産化したアルネの功績はテングの国に強大な戦力を齎した。

 その上で彼女は、姉であるアルカをテング団として置くための計画を立てていた。

 座学も運動もてんでダメな彼女を、そして自分を恐ろしいものを見るような目で畏れる彼女を隣に置く方法を。

 それは、アルカ自身を改造して完全な姉へと作り変えるという、最早本末転倒も良い所な計画であったが──そんな矢先だった。

 アルカが消息を絶ったことを知ったのは。

 この日から──アルネの研究へのモチベーションは大幅に減退した。

 原因であろう叔父を実験動物とし、使い捨てたが、それでも気は晴れなかった。

 周囲は皆、アルネを恐れて近付くことすらしない。

 そんな時。タマズサだけは、アルネの傍に居た。

 

「安心しろよ、アルネ。お前の姉さんなんだろ? そう簡単にくたばるわけねーって」

「……」

「時空の裂け目の先でまた会える。姉妹の縁が、そう簡単に途切れるわけねえじゃねえか」

 

 いつどんな時も。

 タマズサは彼女の隣に居た。

 アルカは彼女を恐れた。

 しかしタマズサは彼女を恐れなかった。

 何をしても笑って許してくれる。

 絆されるには十二分な理由だった。

 アルネは研究を再開した。今度は──近くに居てくれたタマズサの為に。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

(本当は、分かっていた。こんな計画、無意味だって)

 

 

 

 アルネは、姉の心がすっかり自分から離れていることなど分かっていた。計画を達成しても虚しいことなど分かっていた。

 イッコンで再会した時、仲間達と居るアルカを見て──無理矢理連れ戻せなかったのは、とっくにその結論に至っていたからだ。

 それでも縋らなければどうにかなってしまいそうだった。たった一人の姉だから。

 故に、フーディンがフェーズ2に目覚めた時、今ならアルカを取り戻せる、と考えてしまったのだ。

 力を示せば相手は従ってくれる。そう思っていたから。

 しかし結果はどうだろうか。結局彼女はこの場に現れることすらなかった。それが何よりの拒絶の証であった。

 おやしろは破壊できたものの、オーパーツは破壊され、そして孤軍。

 全て自分で招いた事だ。

 

「ひとつだけ、教えて。メグル」

「何だよ」

「なぜ、姉さんのために、戦うの? 弱い癖に……大人しく引っ込んでいれば良かったのに」

「好きだからに決まってんだろ」

 

 メグルはパッと断言した。

 

「だから、お前なんかに渡すつもりは無い。あいつはお前を怖がってるからな」

「……何で、姉さんが好きなの。そんなに」

「え? 何でって言われても──」

 

 口ごもると──メグルは指を折って数えながら言う。

 そうした後で上手く言葉に出来ず、メグルはふっと笑みを漏らした。

 

「……わっかんねーな……わっかんねぇけど……近くに居たいって思うんだ。それとあいつ、好きな物を見た時、すっごく目を輝かせて熱心だから……その顔が俺、好きなのかも」

「……」

 

 アルネは黙りこくった。

 彼は、そのままのアルカが好きになった。

 しかしアルネは──理想のアルカを自分の中で作り上げ、それを押し付けようとしていた。

 そして同時に、何故自分がタマズサを好きになったかを思い出す。

 

(ああ、そうか。姉さんに手を付けようとした時点で、私は間違ってて──)

 

「さて、もう良いでござるかな」

 

 キリが近付く。尋問の為に。

 

「……テング団は、何を狙っているのでござるか。まさか”赤い月”の場所が分かったとか──」

「……貴方たちに話すことは、これ以上何もない」

「ならば力づくでも吐かせるでござる。自白剤は、拠点にたんまり用意してるでござるよ」

「……ううん。これで終わり。だから、ない。タマズサに、迷惑は掛けられないから」

 

(私の計画は無意味だったけど、せめてテング団の計画は……邪魔できない)

 

 べぇ、と彼女は舌を伸ばす。

 そこには──御札が貼り付けられていた。

 そこに書かれていた文字は「爆」。

 それを見て、キリはメグルを掴んで地面に臥せる。

 

 

 

(私は一体、どこで間違えたのかな──)

 

 

 

 轟ッ、と音を立てて炎が彼女を包み込み──爆ぜた。

 人が焼ける嫌な匂いがメグルの鼻腔を突き抜ける。

 何が起こったのか分からない二人が起き上がると、後に残っていたのは、黒い灰だけ。

 しかし、確かに悪臭が周囲に漂っており、それが何を意味しているのかはメグルにも理解できた。

 

「……抜け目がない、と言えばその通りでござるが……!!」

「……ッ」

 

 目の前で人が果てる。

 その瞬間を目の当たりにし、メグルは──言葉も出なかった。

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