ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第101話:忍の戦い方

 ※※※

 

 

 

 ──1時間後。

 潰れて壊れたおやしろの前に、テング団の団員とアルネ。

 そして、メグルにキリ、そしてアルカの3人が相対していた。

 アルネの脚は包帯塗れになっており、自力では立てないようで、部下に肩を貸してもらっている。だが、愛しの姉を前に最早そんな事はどうでも良いようだった。

 

 

 

「──良かった。ちゃあんと姉さんを連れてやってきた」

「……アルネ」

 

 

 

 不安そうな顔で彼女は言った。 

 

「おい、アルカ!! 行くな!!」

「……ごめんなさい、おにーさん。やっぱりこれしか……無いんです」

 

 一歩。また一歩、とアルカは歩を進めていく。

 メグルが悔しそうに唇を噛み締め、キリが目を伏せる中、アルネは仮面を外した。

 無感動な瞳に光が灯っており、そして不気味な程上がった口角が露になった。

 そして、一歩前に出ると──アルネは団員達の腕を振り払い、抱き着いてくるのだった。

 

「やっと、やっと戻ってきてくれる……姉さん……」

「……アルネ。もうこれ以上、関係ない人たちを傷つけるのはやめてほしい」

「うん、うん、分かってる。大丈夫」

「おいアルネ!! お前……アルカをどうするつもりだ!!」

「……決まってる。姉さんを──テング団の一員として活躍できるように、改造する」

「……は?」

 

 メグルは思わずぽかん、と口を開いてしまった。

 改造、と言う言葉は人間に使って良いものではない。

 それをアルネはまるで機械を組み替える感覚で使ってのけた。

 

「──大丈夫。姉さんの頭も、四肢も、全部皆に認められるように、私が……私が作り変えてあげる。私の、理想の姉さんが完成する」

「ふざけやがって……ッ!!」

「……良いの? 町にカバルドンを落とすよ。沢山の人が死ぬ。逃げた人も全員皆殺しにする。それが嫌だから姉さんを引き渡したんでしょう?」

「ッ……こいつ」

 

 メグルは歯噛みした。

 どこまでも救いようがない女である。

 唯一の肉親である姉でさえも、己の願望を実現させる道具としか思っていない。

 元より生命を生命と思わない外道故驚かなかったが──此処まで来ると一周回って清々するレベルであった。

 

「ふざけんな!! アルカはお前の人形じゃあない!!」

 

「メグル、って言ったっけ」

「……」

「弱いなら、大人しく引っ込んでおくべき。それがヒャッキの掟。弱いヤツは何も守れない」

「ッ……!」

「おやしろも、姉さんも、町も。貴方たちが弱いから守れなかった。それだけ。恨むなら弱い自分を恨めば良い。尤も、フェーズ2には誰も勝てっこないけど」

 

 姉が戻ってきた上にフェーズ2を発見したからか、偉く上機嫌な様子でアルネは言った。 

 そして、両隣に居る団員達に彼女は目配せする。帰るぞ、と言わんばかりに。

 しかし──団員たちは返事をしない。動きもしない。

 

「……? どうしたの皆」

「……ヒャッキ地方には忍者というものがいない……とアルカ殿から聞いた」

 

 鈍い金属音が響く。

 遅れて、パキッと割れるような音が聞こえて、アルネの手首から──メガキャンセラーのバングルが音を立てて砕け散った。

 彼女は思わず、アルカを突き飛ばすが、もう遅かった。支える相手はおらず、アルネは砂の上に尻餅をついてしまう。

 アルカと思しき人物は、アルネを見下ろしながら至って冷たい声で言い放った。

 

「実戦経験が圧倒的に足りないでござるな、三羽烏。凡そ自分より弱い相手としか戦ったことがないのでござろう」

「ッ……姉さんじゃ、ない……でも、姉さんだった……まさか!!」

「だから、こんな初歩的な罠に引っ掛かる──尤も、細胞レベルで対象のコピーができるメタモンの擬態を見破れる人間など、そう居はしないでござるがな」

 

 どろどろ、とアルカの身体の表面が溶ける。

 中から現れたのは、忍び装束に身を包んだキリだった。

 そして、紫色のどろどろは固まっていき、表面に顔と口が浮かび上がる。

 

【メタモン へんしんポケモン タイプ:ノーマル】

 

【細胞を組み替えることで、見たものに変身することができる。】

 

「メタモンは……忍者の諜報活動に必須でござるよ」

「貴ッッッ様!!」

「……マージで完璧に引っ掛かるとは思わなかったぜ。幾ら三羽烏と言えど、所詮はお子様だったってことだな」

「迫真の大根演技だったでござるよ、メグル殿!」

「それ褒めてねーだろ!!」

「ファ! ファ! ファ! 脅威はこれで全て無力化できたな」

 

 今までメグルの隣に立って、キリの忍装束を身に纏っていた人物が高笑いを上げて仮面を脱ぎ捨てる。

 キョウだ。

 そして、彼の背後にはモルフォンが現れる。

 テング団の団員たちが一瞬で昏倒したのは、モルフォンの”ねむりごな”を吸ったからである。

 メグル達が素直にアルカを連れてくるだろうか、と疑う気持ちは勿論アルネにはあった。

 しかし予想外だったのは、連れてきた部下たちが全員一瞬で無力化されてしまったことであった。

 どんなに厄介なトレーナーの集団でも、ポケモンを出す前に眠らせてしまえば脅威ではない。

 苦無を突きつけ、歩けないアルネにキリは言い放つ。

 

「……さて。王手でござるよ。おやしろを壊した罪、その身で償ってもらうでござる。先ずは、何故今になって総出で攻め込んだかを答えてもらうでござる」

「姉さんは!! 姉さんは何処!!」

「教えるわけがないでござろう。これは拙者の尋問でござる。先ずは答えてもらうでござるよ」

「……そう。そう!! この期に及んで、オヤシロを壊されていて。まだ逆らうの」

 

 その時だった。

 アルネの目がカッと開き、黒い靄が溢れ出る。

 それでキリの身体は一気に吹き飛ばされてしまった。

 彼女の持つオージュエル。そして、瓢箪の中にいるフーディン。

 その2つが共鳴し合っている。

 

「……許せない」

 

 そして、それに伴ってアルネの周りには強烈なオーラが纏われていた。

 その圧が凄まじく、近付くことすらできない。

 瓢箪から音を立てて、フーディンが現れると、余計にオーラは強くなっていった。

 

「キョウ殿! 手筈通りに! 後は任せてほしいでござる!」

「承知。しっかりやれよ若きキャプテン!」

 

 キョウはそれを見ると、地面に煙玉を投げ付ける。玉からは白い煙が噴き出し、数秒後にはキョウはモルフォン共々消えていた。

 嵐が吹き荒れ、それが火の粉を吸い上げていく。

 倒れたテング団の団員たちも巻き込んで、竜巻は吹き荒れ──そして爆ぜた。

 現れたのは、九つの尾を持つ獣・ワカツミタマの姿を借りたフーディンであった。

 

「あろうことか姉さんの偽者で私を欺くなんて……許せない……ッ!! 姉さんは私のモノ!! 返して!!」

「アルカはモノじゃねえッ!!」

「キャプテンを隠れ蓑にして戦っているような貴方に……何を言われても響かないッ!!」

「ハッ、誰から言われても同じでござろう、外道!!」

 

 メガキャンセラーは破壊された。

 キリの手からはバンギラスが現れ、二人を守るようにしてフーディンに立ち塞がり、咆哮する。

 そしてメグルもボールを2つ投げて、シャリタツとヘイラッシャを繰り出した。

 

「吹き荒れろ嵐。砂よ、我らの味方となれッ!!」

 

【キリのメガリングと バンギラスナイトが反応した──】

 

 極光が放たれ、光の殻がバンギラスを包み込む。

 地を揺るがす程の叫びと共に、岩の鎧は更に肥大化し、鋭利になり、巨岩の怪獣がその場に降臨した。

 砂嵐が吹き荒れ、そして放たれる悪のオーラを前に、フーディンの粉塵も念動力も掻き消されそうになってしまう。

 

【メガバンギラス よろいポケモン タイプ:岩/悪】

 

「な、何、これは……!? 伝説のポケモンも優に超えている……ってこと!? これが、このポケモンのメガシンカ……!?」

「これがメガシンカ……!? よし、俺も──守られてばっかじゃねぇ!!」

 

 メグルはオーバングルを指でなぞる。

 オージュエルが妖しく光り輝いた。

 がばぁ、とヘイラッシャの口が開く。中のシャリタツの首には、青い宝石がぶら下げられていた。

 

「オーライズ”シンボラー”!!」

 

 一瞬ヨイノマガンの姿が浮かんでは消えた。

 ヘイラッシャ、そしてシャリタツを光が包み込む。

 魔眼がヘイラッシャの額に現れ、そして岩でできた羽根が宙には浮かんでいる。

 そしてその身体を守るようにして鎧で覆われた。

 

【ヘイラッシャ<AR:シンボラー> おおなまずポケモン タイプ:岩/エスパー】

 

「オーライズ……!? これは、ヨイノマガンの……!」

「拙者がメグル殿に託したのでござる。今のメグル殿ならば、使いこなせると信じて!」

「ふざけるな! フーディン、サイコキネシスでデカナマズを浮かばせて!」

 

 ギィン、とフーディンの目が光る。

 しかしヘイラッシャの身体は浮かび上がらない。

 そればかりか、身に着けられた魔眼が光ると念動力が跳ね除けられてしまった。

 カバルドンでさえも浮かび上がらせることができるはずのサイコキネシスが通用しなかったことに、アルネは驚愕する。

 だが、無理もなかった。今のヘイラッシャの耐久力はあの巨大なカバルドンを上回っている。

 砂嵐の影響を受けたことで、ヘイラッシャの特防は1.5倍。更にシャリタツが中に入っているので全能力が2倍になっているのだから。

 

「まともに撃ち合えないなら、数値で受けてしまえば良い。至極簡単でシンプルな話だったんだ。今のヘイラッシャは()()()()()()()みてーなもんだ! んでもって、紙耐久特殊アタッカーはどうやったってバンギラス2匹分は倒せねえ!!」

「2匹の強固な壁で技を全て跳ね返す。それがメグル殿のフーディン対策でござるよ」

「加えて! エスパータイプにエスパー技は効果今一つ! お得意の念動力は、通じない!」

「……勝ったつもり? 私にはまだカバルドンが居る」

 

 アルネは瓢箪を投げ上げる。

 そして、フーディンが念動力でそれを遠くへと吹き飛ばした。

 方角は町の方。そして、しばらくすると──巨大なカバルドンが宙に現れる。

 

「確かに念動力は貴方たちには通じないかもしれない。でも、カバルドンを落とすことならできる……いや、落とすッ!! 何度も何度でも落とすッ!! 全員、潰れてしまえば良い!!」

「……出したでござるな。カバルドンを」

 

 ぽつり、とキリが呟く。

 それと同時に、ヘイラッシャとバンギラスが一気にフーディンに飛び掛かった。

 カバルドンの浮遊と並行し、フーディンは2匹を抑え込むために爆炎を巻き起こす。

 だが、砂嵐で特防が強化されている上にタイプ相性で不利な二匹には然程ダメージが入っていない。

 今度は起爆札を大量に巻き起こすが、重厚な岩の鎧を砕くには至らない。

 業を煮やしたアルネは、先に町を壊してしまうことにした。

 

「早くカバルドンを落とせフーディン! そいつらに相手にしながらでも、あの町は壊せるはず──」

「……だが、現実はそうではないでござる」

「カバルドン、まだ落ちてないみてーだぜ?」

「!?」

 

 アルネは町の方を見やる。

 巨大なカバルドンは脚を動かすばかりで、ずっと空中に縛り付けられたままだ。

 そして、空に浮かぶ巨獣目掛けて何かが飛んで行くのが見える。

 カバルドンとほぼ同じスケール感の、羽根を生やした鳥もどきが──羽根をはためかせて飛んでいる。

 

「バ、バカな……そんな事が! ヨイノマガン1匹だけで、カバルドンの落下を抑え込んでいるの!? サイコパワーにサイコパワーをぶつけて!?」

 

 約30分の砂浴で完全に破壊された箇所を修復したヨイノマガンは、町の上空に現れるであろうカバルドンを前に待機していた。

 しかし、ヨイノマガンのサイコパワーだけでは、フーディンのサイコパワーに対抗することはできない。

 ましてや、あの大質量を受け止めることなど不可能だ。

 だが、それはあくまでも、ヨイノマガン1匹での話である。

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「ルカリオ、気張るッスよ!!」

「ガルルルル……ッ!」

「モルフォン、頼むぞ。微力でも良い! ヨイノマガンの助けをするのだ!」

 

 忍者達がテング団員たちの掃討を行う中、カバルドンの真下の位置では、エスパー技を使えるポケモン達がヨイノマガンに力を送っていた。

 エスパータイプではないポケモン達も、サイコエネルギーを送っており、カバルドンを抑え込んでいる。

 ノオトも、そしてキョウも。

 そして忍者達も、町の住民たちも。

 全員がポケモンを結集させ、ヨイノマガンを助けようとしている。

 だがそれでも、フーディンのサイコパワーに加え、カバルドンの大質量を抑え込むことはできない。

 故にひぐれのおやしろは協力を求めた。1000年以上もの間同盟を結んできた、最も旧き友人に。

 

 

 

(はいー♪ アケノヤイバの俊足ならば、1時間もせずにクワゾメに着くのですよー♪)

 

 

 

 空を飛び、カバルドンへ向かうヨイノマガンの頭部には、よあけのおやしろのヌシ・アケノヤイバが乗っていた。

 旧家二社のヌシ──これまで幾度となく共に戦い、サイゴクに来たる災厄を払い除けて来た伝説のポケモンが今此処に揃ったのである。

 

 

 

「エリィィィィス!!」

「ケェェェェェレェェェェスゥゥーッ!!」

 

 

 

 結果。

 フーディンがカバルドンを落とそうとする力よりも、カバルドンを抑え込む力が勝ったのだ。 

 しかしそれでも、伝説の2匹は自分の能力の全てをサイコパワーに回さなければならない。

 つまり、カバルドンを完全に無力化させるための最後のステップに進むことはできないのである。

 故に最後の一押しは、伝説の力と同等の力を以てカバルドンを捻じ伏せるしかない。

 

「後は……ボクが……やるんだ……ッ!!」

 

 雨が降り続く中、彼女は覚悟を決めた様子でずっとヨイノマガンに掴まっていた。ヨイノマガンの外周部は城壁のようになっており、そこに人が掴まって立つだけのスペースが確保されているのである。

 

(……だとしてもすっごく怖かったけどね……!)

 

 アルカの隣には──ヘラクロスが彼女の身体を支える為に立っていた。

 そしてメガリングが光ったのを見て、にっと笑みを漏らした。

 

「……おにーさんが、皆が、ボクが居ても良いって言ってくれたんだ。ボクだって……!!」

 

 それに触れると共にヘラクロスの身体が光り輝く。

 

 

 

「──行くよヘラクロス。メガシンカだッ!!」

 

【アルカのメガリングとヘラクロスナイトが反応した──!】

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