あなたの為のレクイエム 後編
精鋭達によるゲージ全ブッパ、ドンペリポテト
vs
サイレントマジョリティーの怪物、歌って踊れる本能寺
ゴジラvsデストロイア的なワクワク感
「戦う気力は血と共に失われた。削げたのは肉だけではない、闘志……心に燃ゆる炎すらもが消えかけていた」
俺はドルダナがどう生きて、どう戦って、どうくたばったかなんて知らない。だが顔すら知らないその男が最後に何を成し遂げたか……それだけは知っている、それを知っているのは俺とあのゴルドゥニーネだけだ。
「だが諸君、戦士は常に武器と共に在った。それは武器は常に戦士へと寄り添っていたということだ……己が片割れを見よ!! 諸君らが信じ、諸君らが命を託す武器達は! その身砕けぬ限り、彼らは戦い続ける! そうだろう諸君!!」
ペの字もディの字も「山場は反論を許さない勢いで詰めて行く」という点においては奇妙な一致を見せる。ならば俺もセオリーに従っていこうじゃないか。
「言葉はない、だがその輝きは千の言葉よりもなお雄弁にドルダナへと語りかけた!!」
巨人族達が各々の武器に視線を向ける、一呼吸分の隙間を開けて……すかさず叩き込む。低く、静かに、だが絶対に聞き間違えないようはっきりと。
「───諦めるのか?」
コン、と鞘に納められたアラドヴァルがいやに響く音で床を叩く。まるで俺ではなくアラドヴァルが喋ったとでも思ったのか、全員の視線がアラドヴァルへと注がれる。
「諦めるのかドルダナ、私を握る者よ。お前が屈するのであるならば私もまた刃を収めよう、武器とはそういうものだ……だが」
ゴン! と先程よりも強く床を打つ。
「アラドヴァルは折れていない、私はまだ戦える! たとえ炎が通じずとも! 私はまだ戦える、答えろドルダナ、お前はもう戦えないのか? 応えろドルダナ! 私を握り、立ち上がれ!!」
しゅらりと抜き放たれた漆黒の刃が炎を覗かせる。打ち直す時に色々ぶっ込んだから当時のアラドヴァルとはもはや別物だろうが、アラドヴァルの名を担っている、ただそれだけの事実が俺の言葉に絶対的信頼を付与する。
「ドルダナは立ち上がった、手招く死の誘惑を払う手……握るはアラドヴァル! おお、想起せよ諸君! 死を振り切り、死へと走る英雄を!!」
「おお………」
「四体の蛇がドルダナへと襲い掛かる、錆びた肉体に滴る血潮、末期の熱が、赤い生命が! 錆びを焼き消す!!」
座れ座れ、他のお客様のご迷惑だ。
「もはや刃がゴルドゥニーネ本体へと届かぬ事は百も承知、だがドルダナは知っていた! 勝利と栄光は必ずしも同一ではない、敗北……なれど輝く救いがある! 死してなお成し遂げる偉業を、人は矜恃と呼ぶのだ!!」
そもそもなんでこんな熱烈吟遊ロールやってるんだっけ俺、まぁいいや結構楽しいしもう止まれねぇ!!
「駆け抜ける足、一歩地を踏む度に力を増していく。握りしめた手、血と汗のぬめりを捩じ伏せる程に強く! 睨む眼光は槍の如く!!」
「おお、ドルダナ!」
「巨人族の英雄!!」
「槍を、剣を振るう者!」
「燃えよ魂、血肉を糧にただ一撃を!!」
人という生き物は! テンションが上がると見境がなくなるのだ!!
抜き放ったアラドヴァルを渾身の力で床に突き立てる!!
「果たして、ドルダナ最期の一撃は龍蛇の一体、その背に深く深く突き立った……焼き滅ぼす事叶わねど、灼熱の刃は蛇の肉に食らい付いた……幾度皮を脱いだとて決して抜けぬ程に」
「さらばアラドヴァル、さらばドルダナ。言葉なく剣は刺さり、言葉なく英雄は墜ちていく……」
ふぅ……と、長く息を吐く。蝋燭の火を消してしまうように、この物語はもう終わりといえ意思を伝えるように。
「───そして時は流れ今。僭越ながらひとりの小人がゴルドゥニーネへと挑み、幾星霜を経て朽ち果てど、約束を……英雄の武器としての務めを果たし続けていた剣を脱いたのだった………ご静聴、感謝します。あと床ぶち抜いてゴメンネ」
痛いほどに静かな「大使館」の中で、空気を読んで床下を燃やさず焼き溶かしていたアラドヴァルを抜いて鞘へと仕舞う。
ガチッ、とアラドヴァルの刃が完全に鞘へと収められたその音があたかもスイッチであったかのように……
「!!!!!!!!!!!!!!」
一般的女性の数倍規模の肺活量を持つ巨人共の大歓声が誇張ではなく館を激震させた。
「……きゅう」
「エ、エムルーっ!!」
ヴォーパルとはいえ兎であるエムルの身体から力が抜ける程の大音量で盛り上がる巨人族達。ある者は武器を掲げて咆哮し、またある者は滝のように涙を流し……規模が規模だからドン引きも数倍だ。
「うぐっ、ふぐっ、ゔゔゔゔゔ………っ」
「いやいやいや……そんな泣くなって……」
「ゔゔゔゔぁぁぁああ………」
精神幼女ことフィオネさんは顔面が全体的にぐじゅぐじゅしてるし、此奴だけではなくいい歳したおっさん巨人族が髭を鼻水でコーティングしてたりするので控えめに言って地獄絵図だ。
「あー……日を改めようか?」
「いや……いや、大丈夫だ。アラドヴァルのサンラクよ……ドルダナの最期を伝えてくれたこと、感謝する」
いや、九割脚色だし俺個人の意見としてはどれかの龍蛇に吹っ飛ばされた拍子に巻き添え食らった個体に刺さった説が有力なんだが……いや、あえて言うまい。
華々しい敗北とかあんの? という俺の中のロマン否定派は心の中で眠らせておけばいい、リアル以外のものが見たくてゲームやってるのにリアリスト気取ってどうすんだ。
心なしか目元に擦った跡が見える気がしなくもないディルナディアは僅かな瞑目ののち、俺へと視線を向ける。
「随分とあっさり信じるんだな?」
「それは我らオディヌ氏族がドルダナと縁深い氏族である事と、それにまつわる理由があったからだ」
「あん?」
じっと俺を見つめ……いや違う、見ているのは俺だが俺ではない。首に巻かれたマフラー、すなわち気絶したエムルを見ている?
「ドルダナの物語、血肉異なれど魂で絆を紡ぐ同胞との旅……ドルダナが共に竜を狩った仲間達……」
───勇敢なる巨人族ドルダナ
───豪放なる鉱人族チダン
───聡明なる獣人族レリロ
「そして……旅をするヴォーパルバニー」
「!!」
───ヴァイスアッシュ
「巨人族に伝わりし「旅兎との約束」……白灰の血に連なる兎を引き連れしアラドヴァルのサンラクよ、ドルダナが聞き届け、オディヌ氏族が紡いできた三つの約束……今度はお前が耳を傾けよ」
マジかよ、ここで「致命兎叙事詩」関連のイベントだと? いや、だが重畳と言えば重畳……致命兎叙事詩はヒントが少なすぎるんだ、今に至るまでだって殆ど他のEXユニークの進行に連動しているようなものだ。
「……いいぜ、その言葉聞こうじゃないか。だが……」
「うむ………話すには少し湿り気が多すぎる、か」
ていうか……
そもそも俺、ここに何しに来たんだっけ?
本当は自分で会いたかった、されど目覚めは遠く………