ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第六章:戦火滾る災獄
第96話:カバルドン包囲網


 ──サイゴク地方の地下を貫くようにして通る莫大な霊的エネルギーの流れを”霊脈”とサイゴクの民は呼ぶ。

 それがもたらすのは、ポケモンへの新たな進化や、自然の恵み。そして、人にとってもポケモンにとっても過酷な災禍の数々。

 従って、霊脈は健全な開発をも阻むとされている。山を切り開こうとすれば、漏れなく祟りと言わんばかりに山崩れや土砂崩れが起き、木々を切り倒せば漏れなく祟りと言わんばかりに嵐が吹き荒れて、それはポケモン達をも巻き込んだとされる。

 サイゴクのキャプテンが──特にリュウグウが自然開発に対し慎重になるのは何も自然活動家被れだからではない。

 真の意味でこのサイゴクの自然を恐れているからである。現に科学では説明できない災禍が、今まで何度も起こっており、何人も人が死んでいる。

 一方、おやしろによって守られた5つの町とその周囲にある町は、霊脈の影響を受けずに大規模な開発がされており、今に至る。

 故に、口に出さずとも歴代のキャプテン達は薄っすらと分かっていた。

 おやしろとは、霊脈に打たれた()であり、サイゴクの民に残された数少ない安息ではないか、と──

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ──”すながくれ忍軍”第三拠点。海岸から洞窟を通って侵入することができる、彼らの秘密基地の一つ。

 外敵が出現した時に備えて作られた場所で、外殻は頑強。シェルターとしての役目を担っている。

 

「……これが、砂丘を進撃している敵の全体写真だ」

 

 忍者達からメグルに、砂丘を進撃する巨大な写真が渡される。

 全高20メートル。その身体は藻に覆われているものの、カバのような姿から何となくじゅうりょうポケモンの特徴に当てはまる、とメグルは考える。

 しかし、頭部には皿が生えており、背中の甲殻は亀のそれに酷似しており、全身が藻に覆われていることもあって、その姿は河童そのもの。

 船上で見せられた画像を見て、メグルは眉を顰める。これを河童と呼ばずにして何と呼ぶのだろうか。

 

「カッパでカバってことか……そんなバカな!?」

「カッパ? カッパって何ですか、おにーさん」

「ハスブレロみてーな……妖怪だよ。俺達の世界の想像上の生き物だ」

「……オレっち、こいつ見た事あるッスよ」

「え? いや、そういえば俺も見たことあるような」

「……イッコンの修練場に緑色のカバルドンのカラクリがあったと思うんスけど……色が間違ってたんじゃなくって、コイツを表してたんスよ!」

「あー! あったあった!」

「じゃあ500年前にもテング団が差し向けてるのか……! アルカ、こいつについて分かる事は!?」

「ヒャッキのカバルドンは、湿地帯に住んでると聞いた事があります。ただし、あいつらの住処は高温多湿の上に危険生物の詰め合わせ、とてもじゃないですが人が住めたものじゃないですね」

「生態系の圧倒的強者ッス……こっちのカバルドンとそこは変わらねえみてーッス」

 

 問題は、あまりにも巨大すぎるという点に尽きる。

 全高だけでヨイノマガンと張り合えるカバルドンなど、大怪獣も良い所だ。

 

「流石にあそこまで大きな個体は聞いた事が無いです。群れのボス個体で間違いないかと」

「どうやってあんなデカいのを調達したんだ……!?」

「……ギガオーライズしたポケモンで、屈服させたんだと思います」

「捕獲した、ってことか……!」

「どうやってこいつを倒すかッスね。ご丁寧に、頭の上には誰か乗ってるし」

「タイプを考えよう。雨を降らせていて、緑色で、グラスフィールドを展開しているんだろ?」

「もうそれ、答え出てるんじゃねーッスか?」

 

 雨を降らせるような力を持つのは水タイプかエスパータイプ。グラスフィールドが展開できるのは草かフェアリータイプに多い。

 そして、カバ、河童、全身に生えた藻といった特徴から加味しても、思いつく複合タイプは──草で水タイプだ。

 

「そうですね……捕獲事例が少ないポケモンなんで、資料にタイプは書かれてないんですが、多分そんな気がします……」

 

 問題は、分かったところで水と草は比較的優秀な部類の複合であることである。弱点は虫・毒・飛行の3つで、比較的マイナーなタイプが揃っている。

 水の弱点である電気と草が等倍、草の弱点である氷や炎が等倍と、互いの弱点を打ち消すような相性になっているからだ。

 

「それでも草の弱点の多さが足引っ張ってっから……毒なら、キョウさんに任せれば良いよな」

 

 そのキョウと言えば、先におやしろの忍者と共に打ち合わせに行ったのだという。

 毒を盛れば、幾ら耐久の高いポケモンでも時間経過で体力が減っていく。

 この戦いは彼がカギを握ってくることになるだろう、とメグルは考えた。

 

「フリーズドライを持ってる氷ポケモンでも居りゃあ、有利に立ち回れるんスけどねえ。4倍弱点ッスから」

「居ねえモンは仕方ねえよ。弱点が突けねえなら相手から弱点が突かれないポケモンの等倍技で押していけば良い。……この戦いの初動、多分お前に掛かってるぜ」

「え?」

 

 そう言って、メグルは鞄からビッグバトルレースの準優勝商品で手に入れた特性パッチを取り出し、アルカに渡した。

 

「これって……良いんですか?」

「一個はバサギリに使ったからな。俺の手持ちは通常特性が優秀な奴らばかりだから、もう一個の使い道は悩んでたんだけど……」

 

 バサギリの隠れ特性は”きれあじ”。相手を斬る技の威力が上昇するというものだ。”がんせきアックス”を始めとするバサギリの技と非常に相性が良かったのである。

 だが、それ以外の手持ちはわざわざ”特性パッチ”を使うような隠れ特性は持っていなかったのである。

 ニンフィアは元々隠れ特性の”フェアリースキン”、アヤシシは”いかく”が優秀。アブソルの隠れ特性は”プレッシャー”だが、通常特性の”おみとおし”が未来予知の強力さに直結しているらしく変更する理由が無い。ヘイラッシャは”天然”が優秀、シャリタツは”しれいとう”でなければそもそもヘイラッシャと合体が出来ない。

 従って、もう1つの特性パッチの使い道をメグルは失っていた。

 

「……ッ! そうか、モトトカゲの特性を隠れ特性の”さいせいりょく”に変えてあげれば、強そうですね!」

「いや、そっちも強いけど──」

 

 

 

「待たせたでござるな」

 

 

 

 カバルドンの対策で盛り上がる拠点の一角に現れたのは、忍装束に仮面を付けたキャプテン・キリだった。

 遅れて現れた彼に、ノオトは怒って詰め寄る。

 

「遅いッスよ! 今まで何してたんスか! サイゴク中の危機、なんスよ!?」

「落ち着くでござる。敵を知り、己を知らば百戦危うからず、でござるよ、ノオト殿」

「うぐっ……流石キリさんッスね。こんな時でも冷静ッス」

「……いや、少なからず取り乱しているでござるよ。あの巨体に加え、三羽烏も居るとなれば、ヌシ様と共同でも手に余る」

 

 キリはタブレットを取り出し、それをメグル達に渡す。

 巨大なカバルドンをドローンで上空から撮影した写真だ。

 写真を拡大していくと──テング団の団員らしき者が乗っている。

 その特徴的な羽根飾りと、仮面。他の下っ端たちとは一線を画す見た目。 

 そして、少女のような背格好。メグル達は、彼女を知っている。

 

「……アルネ……ッ!!」

「三羽烏とは聞いていたけど、よりによってまたコイツッスか……!!」

 

 アルカが怯えた顔を見せる。

 アルネは、彼女の妹であり、そして──卓越した頭脳と、無いも同然の生命倫理を併せ持つ科学者だ。

 入って来た情報では、ベニ、シャクドウ、クワゾメをそれぞれ三羽烏がテング団を引き連れて襲撃している。

 

「もしかしてこのカバルドン、コイツの実験で巨大化したとか……!」

「考えたくねえッスね。つーか、またあのフーディンと戦わせられるんスか。そっちから何人、カバルドンの足止めができるッスか? キリさん」

「既に町中ではテング団の団員による破壊活動・略奪行為が始まっている」

「ッ……戦力は限られてるって訳ッスね」

「そして、このサイズでは、通常の技を当てただけではダメージを与えることもできないでござる。全高だけでヨイノマガンと並ぶ怪獣。総力戦でなければ、倒すことはできない」

「ヨイノマガンの攻撃なら通用すると思うんですけど……」

「敵は、ヨイノマガンの性質を理解し、自分に有利な戦場で戦おうとしているでござる。そのために、あのカバルドンで砂丘そのものを封じてきたのだろう」

 

 ヨイノマガンの最大の武器は、砂漠を味方に付けることが出来る点にある。

 砂がある限り破壊された部位を再生し、砂がある限り、それを吹き荒れさせることで自分の防御を強固なものにする。

 しかし、カバルドンは砂丘そのものを緑化して封じ込めている。ヨイノマガンの強みの一部は抑えられてしまっている。

 せめて救いがあるとするならば、元々のフィールドである湿地帯ではないおかげで、進撃する速度は然程速くないことであった。

 

「先ず、拙者とノオト殿、キャプテン二人で三羽烏・アルネを空中から襲撃する」

 

 ──対三羽烏班はキリとノオトの二人が入る。

 特にノオトは、一度アルネに勝利しているので、戦力としては信用できるとキリは判断した。

 

「オオワザのカラクリは、ノオト殿のおかげで判明済み。尤も、相手が一度破られた手を二度使うとは思えないが」

「任せておくッスよ!」

「そして、残る面々でカバルドンの攻撃に入ってほしい。敵の四足全てを封じ込め、カバルドンがこれ以上おやしろに近付かないように食い止める!」

 

 ──カバルドン攻略隊は、残りの残存戦力全て。

 正面からの攻略は不可能の為、部隊を3つに分けてカバルドンを段階的に弱体化させていく必要があるとキリは考える。

 

「先ず、アルカ殿は弱体化班だ。四天王・キョウ殿と同じチームで行動してもらう」

「弱体化?」

「先発隊がカバルドンの足止めを行った後、弱体化班がカバルドンの弱体化を行う。主力はキョウ殿だ。アルカ殿の手持ちはパワーに優れた者が多い。キョウ殿の援護を行ってほしい」

「わ、分かった……!」

「そして、メグル殿は後ろ脚の破壊を行ってほしい。危険だが……貴殿の実力を見込んでの頼みだ」

「任せておいてください! アブソルの未来予知があれば、大抵の危ない事は察知できますから!」

「ああ。それを織り込んでの抜擢でござる。残る脚は、忍者隊が破壊する」

 

 ──作戦はこうだ。

 先に空中からキャプテン二人が三羽烏を襲撃。アルネはカバルドンへの攻撃をフーディンで妨害すると考えられるので、それを先回りして止めてしまうのである。更に、頭に攻撃を加えられるならば攻撃する。

 そして先発隊が、ポケモンや攻城武装を用いてカバルドンを足止めする。

 そして、弱体化班が中心となってカバルドンに毒を盛る。体が大きい分、複数の状態異常を入れることもできるだろう、とキリは考えている。

 その後、それぞれの足を破壊する部隊がカバルドンの脚を攻撃。

 四足全てを機能停止に追い込み、砂丘の上でカバルドンを動けなくするというものだ。

 

(あれだけの重量を持つポケモンならば、足を攻撃すれば自重で砂丘に沈み込み、そのまま動けなくなる。後は……火力次第でござる)

 

 

 

「──各員の健闘、そして……生還を祈る!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

「カバルドンがおやしろに到着するまで残り5キロメートル」

「時間的猶予はねーッスね」

 

 

 キリとノオトは、ライドギアを付けたエアームドに乗り、パラシュートを身に着ける。

 敵は三羽烏。二人掛かりでも苦戦は免れない相手だ。

 一度勝利しているとはいえ、ノオトの胸中は穏やかではない。

 これは只のバトルではない。大規模な抗争なのだから。

 しかも戦う場所は、ヨイノマガンを上回る超巨大なポケモン。

 幾らキャプテンであると言えど齢13歳の少年が覚悟するには、あまりにも荷が重い相手だった。

 本能が危険だと伝えているのである。

 

(クソッ……収まれ腕……何で震えてるんスか……ビビってる場合じゃねーッスよ……!)

 

「ノオト殿。顔色が優れないでござるな」

「バッ、バカ言うんじゃねーッス!! この時の為に、鍛えてきたんス!! 今更後戻りできるわけねーッス!!」

「……それでこそノオト殿だ。しかし、このような事態は拙者も初めて……正直、慄いているでござるよ」

「キリさんも……」

「これを部下の前で言えば、怒られるどころでは済まないでござるが……無理に抑え込むよりはマシでござる。恐怖とは生命に備わる防衛本能。たとえおやしろが壊れようと──死だけは避けるでござるよ」

「わぁーってるッスよ。可愛いお姉さんと付き合えないまま、死ぬわけにはいかねーッス。バケて出てやるッスよ」

「……いつもの調子に戻って来たな。ゴマノハのヤツも貴殿の心配をしていたでござる。この作戦、生きて終わらせるでござるよ」

「そういやゴマノハさんは今何処にいるんスか? 上陸してからすぐどっか行っちゃって……」

「彼女の心配をする必要はないでござる。拙者の指示で、既に任務に当たっている」

「それもそうッスよねえ。……よし、気合入れてくッスよ!」

 

 エアームドが飛んだ。

 物凄い勢いで急上昇し、すぐさまカバルドンが居る地点へ向かっていく──

 

「──目標地点まで残り800メートル。ノオト殿、敵の攻撃が来るかも分からぬ。いつでも降りる準備をしておくでござるよ」

「了解ッス!!」

「先発隊、カバルドンの攻撃に入れ!!」

 

 足元では、ライドポケモンに乗った忍者達がワイヤーを使ってカバルドンの脚の周りを飛び回る。

 カバルドンの四脚には、イシツブテの形をした爆弾が大量に括りつけられ──それが同時に爆発。

 流石の衝撃に、カバルドンの動きが一瞬止まり、唸り声を上げた。

 外皮には一切傷がついていないが、それが降下の合図となる。

 

「今でござる──ノオト殿!!」

「応ッス!!」

 

 エアームドから二人はカバルドンの頭部の皿目掛けて飛び降りた。

 パラシュートが開き、落下の速度を抑え──そのまま二人は無事に水の溜まった皿の上に着地した。

 

「──三羽烏・アルネ! 今日という今日は逃がさねーッスよ!」

「……サイゴクの平和を乱した罪、その身で償ってもらうでござる」

「……」

 

 ぐるり、と名前を呼ばれた彼女は振り返る。

 仮面に覆われて、表情は分からない。しかし──慌てた素振りは全くない。

 此処に来るまで彼女はポケモンを出さなかった。降ってくる彼らを攻撃しようと思えばできたにも拘わらず。

 

(……最悪の可能性まで想定していたでござるが……いやにあっさり通したでござるな……!)

 

「──またキャプテン二人とやり合うのね。……面倒。しかも、また貴方? 姉さんじゃなくって?」

「アルカさんには指一本触れさせねーッスよ」

「……そう。でも、この間と同じと思わないで」

 

 大量のお札が舞い、目の前にフーディンが現れる。

 更に、きゅぽんと音を立てて瓢箪から現れたのはヒャッキのすがたのオニドリルだ。

 

「……”赤い月”を目覚めさせれば、ヒャッキの文明レベルは更に進歩する。ううん……本来あるはずだった進化に行き着く」

「わりーけど、さっさと国に帰ってもらうッスよ!!」

「サイゴクを踏み荒らす蛮行、見逃すわけにはいかないでござる!」

 

 ノオトはルカリオを、そしてキリは緑色の棘を背から生やした怪獣のようなポケモンを繰り出す。

 それが現れた瞬間、雨が降っていた戦場は一気に砂が吹き荒れる。

 

 

 

「バギラァァァーッ!!」

 

 

 

【バンギラス よろいポケモン タイプ:岩/悪】

 

 

 

 ──バンギラスは、キリの切札として知られているポケモン。

 その重厚な鎧は滅多な攻撃を通さず、山をも食い荒らす凶悪性を併せ持つ。

 

「ノオト殿。遠慮は無用! 最初から全力でござる! 作戦前に渡した()()を──!」

「了解ッスよ!」

 

 ノオトの腕には──煌めく輝石が埋め込まれた腕輪が嵌められていた。

 キリも同様のものが腕に嵌められていた。

 

 

 

「──ルカリオ!!」

「バンギラス!!」

 

【ノオトのメガリングと ルカリオナイトが反応した!】

 

【キリのメガリングと バンギラスナイトが反応した!】

 

 

 

 メガシンカ!! の掛け声と共に、2匹が極光に包まれた。

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