スカイ・ハイ・テンション
金剛二つに火無垢拳……後戻りはもうできない、どうも皆さん3凸アグニスレスラー硬梨菜です
◇
「す、凄まじい殴り合いです! 互いに一歩も退かず、ひたすらに攻撃のみを行っている!!」
「重量級としては正しい戦法かもしれないけど、カースドプリズン側が機動力を殺してまで殴り合いに出たのは……」
「テンションでしょ、私もそうするわよ」
「だよねぇ……あっ、日和った」
画面の中でカースドプリズンが天地反転に地面へと叩きつけられ、そして乱入者がゼノセルグスを吹き飛ばす。
「成る程、「大佐」でやられた手をやり返したと」
「キルスコアのせいでゼノセルグスは「戦乙女」に狙われやすい。それに加えて相手がカースドプリズンである以上、下手に破壊すれば相手が強化されるわね……」
「ターゲットエネミーを撃破することによるボーナスはどうなんでしょう?」
「三体目のターゲットエネミーを撃破する事で得られる特典はヒロイック、ヴィラニックゲージの蓄積率上昇……無用とは言いませんが相手を強化してでも欲しい効果って訳でもないところが痛いですね」
最初から最後まで手の内、という訳ではないだろう。サンラクにとって状況の白熱は勝率のいくばくかを削ってでも得る価値のあるものだ。だがそれでも三つ巴という複雑なルールはここに至って結末へと収束を始めた。
「体力的にはカースドプリズンが不利、でも相手のゲージ技が直撃した事で超必殺ゲージでカスプリが有利を取りました」
そしてそう遠くないうちにゼノセルグスも超必殺を使用可能になる。であれば最後の不確定要素が鍵となる。
「鍵を握るのは超必殺、そしてウルトクリスタルです」
「そうか、次でクリスタルが出現する……」
「ウルトクリスタルはランダムポップではありますがプレイヤー二者からそう離れた位置には出ません、つまり本気で探せば割とあっさり見つかります」
「超必殺を先に切らせるアドバンテージ、超必殺でゲージを先にゼロにするアドバンテージ………でも脱獄の性質もある」
プリズンブレイカーの形態を超必殺とするのであるなら、その持続時間は三十秒。先に発動したとしても後出しのゼノセルグスが超必殺のプロセスを終わらせるには充分な時間だ。
「ここの駆け引きが勝負の決め手になるでしょう、まさしくクライマックスです」
画面の先、白熱の極点に至らんとする戦闘はそのステージを変えていた。
◆◆◆
「屋内戦か……」
暴れれば当然周囲の環境は破壊される。瓦礫や土煙、場合により柱や天井そのもの……敵味方を問わず行動を阻害するだろう。そして大惨事上等で暴れ回る「戦乙女」がいる以上、崩壊は必然。環境そのものが俺やアメリア・サリヴァンに隙を作らんとするわけだ。
つまり出血のなすり付け合い、当然先に血が尽きた方が負ける。つまり体力の多さが直接的なアドバンテージになる。
「残り体力三割……」
なんてこった! 三割も残ってるじゃないかあと10ラウンドは戦えるぜ!!
「隠れんぼってガラじゃねーだろ出て来い!!」
「ブッ潰れろ!!」
チっ、干からびたミートボール野郎め。二階から奇襲とはな、ガビガビに硬いくせにイキってんじゃねぇ! ジャッキ解放シャコアッパー!!
「ご、ぐ、ぬおらぁ!!!」
二階から勢いをつけて落ちてきたゼノセルグスの巨大質量を左腕一本で受け止める。重量に耐えきれず左腕のハンマージャッキがへし折れる、だがそれでも最後のアッパーは役割を果たした。
「ぐ、ぶぉ……!?」
「悪いな、さっきまでのパンチは腰が入ってなかった……これがフルスイングだ」
バックステップ、同時に右半身を後ろに回して左手を正面に。さながら弓を引き絞るかのように右拳を構え……貰うぞ前歯!!
「死ねオラァ!!!」
「ぐぅぅぅう!!!」
クソがっ! ギリギリでガードしやがった!! やっぱプロの格ゲーマーって格闘技とかやってるのかね、シルヴィア・ゴールドバーグのチームメンバーとかマッチョばっかだったし。
「効かねェな……」
「脂汗が浮いてるぜエイリアン」
「いいや、これは油さ……」
油……? あっ、まさかこの野郎揚げ過ぎドーナツ達磨に……!!
「蒸し焼きになれ!!」
バヂィン! とゼノセルグスの強靭な指が鳴る。その先端、親指と中指の爪が擦れて火花が散り……それを種火に奴の吐き出す吐息が一瞬で炎へと変わった。
「うおおおお!!」
咄嗟に飛び込んだ先は上へと続く階段、いいね都合がいい……ステージセレクト、二階にゴー!!
おっと、二階は「戦乙女」ちゃんが散歩中だ。邪魔しちゃ悪い……あぁ、ヘイトの比率が違うだけでこっちにも向きますよね、ええ。
「うぶおっ!」
慌てて階段を登れば、背後で爆発音。少なくとも階段ルートから下へ行く道は絶たれたと考えていいだろう。
上へ、上へ、上へ……
「いやキツイ!!」
エレベーター使お。今八階か、下から昇ってきたエレベーターが……よし着いた。
「…………」
「…………ハロ」
「グッバイフォーエバー!!」
シャコパンチ! ただのパンチ! ただのパンチ! 再セット、シャコパンチ!!
「一丁前に文明の利器使ってんなやモンスター! 地獄に落ちろ!!」
「待っ……てめっゴラァァ!!」
怒涛のラッシュで怯ませ、エレベーターの下行きボタンを押して発送。クソ、ヴィランがエレベーターで昇ってくるなよ全く……
バゴン! ギ、ギギギギ……
おっと、俺の予想が正しければあの野郎エレベーターの天井ぶち抜いて登ってきてるな?
「くっ……」
まだダメだ、高さが足りない。この規模のビルなら屋上まで行かねーとダメだ、うおお頑張れ俺の健脚ゥ!!
……
………
…………
機械群の襲撃、ヒーローヴィランのガチバトル。ビルから見下ろしたケイオスシティは炎と、黒煙と、瓦礫によってグシャグシャだ。
「インパクトコンバートなら修正済みだぞ」
「あれそのまんま名称になったの嬉し恥ずかしって感じなんだけど」
その場のノリで考えたネーミングだったからなぁ……まぁいい、ここに来たのはそれが理由じゃない。
「ラストバトルは空の下の方が映えるだろ?」
災害の煙で真っさらな晴天とは行かないが……吹き抜ける風は塵を運び、観客達から見ればさぞや映える光景だろう。
「今この瞬間、俺たちは主要人物なんだぜ? 端役じゃねぇんだ。脚本も兼任出来るってんなら盛り上げなきゃ損だろうが」
「……そういうところまで似てるのかよリアルカースドプリズン」
屋上の一角が熱でぐにゃりと曲がる。マグマの如くコンクリを溶解させて下の階から「戦乙女」が現れる。文字通り燃えてるねぇ、やる気十分ってか?
役者は揃った、舞台も上々……あとは「座標」だけだ。
「天を見ろ、太陽にすら負ける根性無しばかりじゃねーか。だが俺は違う! 俺こそが凶星、太陽すら霞ませる一等星だ!!」
「格好付けてェんならそのまま華々しく散らせてやるよ!!」
テンションは最高潮、今いる場所は最上階、あとは真っ逆さまに落ちるだけ───
シルバー仮面「Foooo!!」
ミーティアス作者「Foooo!!」
感想欄でも聞かれたけど当然カースドプリズンにもゲージ技があります
ただしサンラク的にちょっと使いづらいので実質縛りプレイしているという……ちなみに攻撃技じゃないよ