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衝撃に起因する重力的立ち眩み

抜いて、刺す! 抜いて、刺す!


テクノマギジェルスは魔法に強くスキルによる攻撃に弱い、さらに言えばレベル差のせいで乱数でも一発で倒せる。


ただな? うん……


「仲間を呼ぶコマンド搭載かよハハハ! 入れ食いじゃぁぁああ!!」


抜いて、刺す! 抜いて、刺す! 床がゲルっゲルになってるけど足が触れればアイテム化する。ゲーム的処理という事で見逃してやるが一瞬で瓶詰めになったジェルに手で触れればインベントリアにご案内って訳だ。


「三十五……? チッ、雑魚敵ならPOP率は分速五十体くらいでいいだろ……」


いや違うな……このエリア、コンテナみたいな障害物で迷宮的なものになってるが……テクノマギジェルスってコアが普通に個体だから隙間をすり抜けたりなんかはできない。

自然、向こうも通路に従って動かないといけないわけで……まさか、ゴーレム側も道に迷ってるとかそういう……


べちょっ


「………あぁ、上もあると」


それは朗報、こと三次元的挙動に関して言えば得意分野だ。臨界速のピーキー性能のせいで今はできないけどな!! ……俺は、な。


「サイナ、」


「了解:複合変形武装「化粧箱」起動、ガトリングモードにて……掃討します」


鋼の空を疾る弾丸の流星群。下から上へ昇る魔法の礫は魔法に強いはずのテクノマギジェルスの躯体をいとも簡単に吹き飛ばし、露出した核を粉砕する。


「単純な物理学です、機械核によって人型に「成形」されたボディなど……吹き飛ばせばいいだけのこと」


「お陰様でジェルの雨が降ってるけどなぁ!!」


「ジェルも滴るインテリジェンス……!!」


Rが18な方じゃねーかなぁ。

本体が撃破されたためか、べっちょべちょになった体に触れたことで次々とアイテム化してゴトンゴトンと地面に落ちていく瓶をなんとも言えない目で見ながら、俺たちは先へ先へと進むのだった……




……


…………


………………




「と、まぁざっと新旧含めて三百体ほどゴーレムをぶった斬って来たが、あんまりに遠くなったもんだから一旦帰ってきた。はいこれお土産」


「なんだこれは」


「美容ジェル」


「何しに行ったんだ本当に!?」


アイテム無限回収……ですかねぇ。


「とりあえず分かったのは正攻法で地道にボスを探すのは時間の無駄だ」


トットリが所属してるクランがそういうのを専門にしてるらしいが、あいにく下手な島よりデカいこの船の第一殻層……要するに一番外側、最も面積が広いエリアでどれくらいのサイズかも分からない鯨の皮膚の内側から見つけ出すのはあまりに難易度が高い。

少なくとも第一来訪者たるプレイヤー……仮にパーティ編成可能な最大人数である十五人だとしても無謀というものだ。


「つまりどっかしらにヒントっつーか……攻略法があると見た」


例えばルルイアスで封将を倒してクターニッドを弱体化させたように、ステージギミックとしての裏道があるんじゃないかって仮説だ。


そしてヒントは……上にあると見た。


「サイナ、あのオブジェクトの上を調べてみてくれ」


「了解」


パーティ行動の辛いところだ、斥候をやるにしたって臨界速は使いづらすぎる。いや、なんか獲得してた「最大速度(スピードホルダー)」を見る限り速度だけは他の追随を許さないのは分かってるが……うーん、やっぱピーキー過ぎるんだよなぁ。


「確認完了:特に何もありませんでした」


「そっか、じゃああのジェルゴーレムはどっちから来てた(・・・・・・・・)?」


「あちらから」


成る程成る程? この艦を統括するAIが「私が作りました」と断言したゴーレムが、皆揃って特定方向から来てると……


じっと鮭の目で勇魚を見るが、勇魚は勇魚で何が楽しいのかニコニコしっぱなしだ。ふーむ、俺は外道(ペンシルゴン)じゃないから情報を引き出すのはそこまで得意ではない……


「あくまでも仮説だが、恐らく馬鹿正直に迷宮に挑む場合……戦闘を少なくすることができる」


流石に一箇所に留まっていると上から増援が降ってくるようだが……逆に言えばノンストップで迷宮を走り続ければ遭遇戦だけで済ませられる可能性が高い。


「逆に迷宮の「上」を行く場合……恐らく大量の敵と戦うことになるが迷宮のショートカットができる」


何せ壁がない、見晴らし最高の状態で突き進むことができる。まぁあまり飛んだり跳ねたりしないアラバには辛いかもしれないが……ああ間違えたルアラバさんね、はいはい。


「だがこれはあくまでも距離の多少が変わる程度だ、他にも何か……」


『「勇魚」ウェザーリポート〜っ!』


いきなりなんだ、バグったんかこのポンコツ。

神代関連で「ウェザー」という事で若干身構えた俺を始めとする面々に、いきなり現れたホログラムの女がくるくる回りながら口を開く。


『本日第一殻層では整備不足による「重力雨(グラビティレイン)」が降るでしょう! ご注意ください!!』


「いや、整備不足で何か起こるのが分かってるなら整備しろよ」


『ご、ご注意ください!』


あーはいはい強制イベントね分かりましたよはいはい。つーか重力雨って何だよ、重力が雨粒の如く降り注ぐって意味わから……



べしゃっ



「……ジェル雨?」


上からいきなり降ってきたテクノマギジェルスが床に叩きつけられてジェルを辺りにぶちまける。一体どれほどの速度で落ちてきた…………落ちてきた(・・・・・)


「………あぁ、そういう」


つまり何だ? リヴァイアサン艦内の重力制御が整備不足でバグったから、床から天井に落ちた(・・・)エネミーがさらに天井から床へ落ちてくる(・・・・・)、と。

あるいはその逆なのかもしれないが、一つだけ言えることがある。


「全員っ、走れぇぇぇ!!!」


見上げた先、ジェルの中に金属塊を仕込んだクソみたいな雨粒(ゴーレム)がどこからか吹き飛んできて、丁度俺たちの真上でベクトルを下に向けて───


「これ俺死んだぞ多分」


「ル・アラバ、諦メルノヨクナイ」


「サイナっ!」


「了解:荷運びします」


「おぐぅ!!?」


べしゃしゃしゃしゃしゃ!!!! と俺たちが駆け抜けた場所に叩きつけられるジェルの豪雨。馬鹿め、ホーミングの範囲攻撃なんざ走っていれば当たらないの代名詞じゃねーか。ヘッ、行き止まりに追い込まれない限り走っていれば当たらな……あっ、行き止まりっすね。


「くっ……死ぬ前に神獣を目にすることができた、悔いはない……っ!!」


「勝手に諦めてんじゃねーぞダボが!!」


サイナの「化粧箱(ガトリング)」で叩き落とす? いや、ボディを吹っ飛ばしてもコアを潰さなきゃアイテム化しない。ジェルはジェルでもどういう原理か豪速球で飛んでくる殺人雨と化してる、一体でも撃ち漏らせば最悪頭に直撃して死ぬ。

ゼリーの雨に打たれて死亡とか豆腐の角に頭ぶつけて死ぬレベルの間抜け死因だぞ。


どうする、一か八か迎撃に………いや待て、整備しないと吹っ飛ぶ? そもそも何処を整備してるんだ? 重力が、こう……上に、下に……


「……床か!?」


ダンジョンのお約束と言えば……入り組んだ迷路と、踏んだら起動(・・・・・・)するトラップ(・・・・・・)!!


「サイナ! 床を壊せ!!」


「何故……否、了解:形態変更(メイクアップ)三連加速鎚(インパクター)」……起動」


ガシャンガションとどういう仕組みなのか見当もつかない動きで変形し、筒のようなブースターをくっつけたハンマーとなった「化粧箱」を振り上げるサイナ。


「ブースター起動、破砕します」


華奢な身体が大槌を床へと叩きつける。

轟音。金属の床に亀裂が走り、しかし砕けることなく……


ヴンッ(床の一部が赤く光る音)


「おや」


「ぬおっ」


「ワ、」


「勇魚てめー覚えとけよまじでぇぇぇぁぁぁぁぁああああ………!!!」


前時代的な電子機器は叩くと直るらしいが、リヴァイアサンの床は普通に壊れるらしい。

異常な方向へとベクトルを変えた重力の床を踏んだ俺たちの身体はあたかも空から降り注ぐジェルゴーレム達の如く空中へと翼無いままに吹っ飛んでいくのだった……

元々は外装であり、デブリを弾くための重力制御ユニットを「勇魚」の判断で内側に裏返しているため、破壊すると制御された重力が暴走して上に落ちる。

神様がいらんことしたのでビックリドッキリカラクリ屋敷と化したリヴァイアサン

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― 新着の感想 ―
やっぱ調整って大事なんやな。 で、神さんが勝手に弄ってクソゲー化するとクソゲーマーが本領発揮してプレイヤースキルの強化になって結果的に神さんの行ってほしくない方に世界が進むんやな。
三連加速鎚の元ネタってもしかしてゴッドイーターのブーストハンマー?
 ホンマ……あの神ホンマ……
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