ポケモン廃人、知らん地方に転移した。【完結】   作:タク@DMP

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第88話:流島の魔物

 ※※※

 

 

 

 ──赤い月。

 それを見たサイゴクの野生ポケモンは一気に凶暴化し、更に力を増した強大な個体が暴れ出す現象。

 メグル達もこれまでの旅の中で度々この赤い月に出くわしている。とはいえ町での滞在中にやり過ごしたことが殆どのため、直接目にするのはこれで3度目だ。

 そしてこれは彼らにとって最悪のタイミングであると言えた。島には野生ポケモンばかり。彼らが皆、赤い月の影響を受けて凶暴化するのである。

 洞窟の目の前をオトシドリ達が横切っていくのが見えた。彼らの目は赤く不気味に光っており、せわしなく羽ばたきながら目的もなく空を飛び続けている。

 だが、洞窟内に居たメグル達を認めたからか、すぐさま方向転換して飛んでくるのだった。

 

「襲って来たぁ!?」

「……メテノ、マジカルシャインでござる!!」

 

 だが、袋小路に入って来たのが運の尽き。まとめて彼らはメテノのマジカルシャインによって叩き落とされた。

 しかし、反対側の抜け道からは人の気配を感じ取ったのか目を赤くして凶暴化した野生のニドリーノ達が入り込んでおり、すぐさまメグル達は洞窟の中から出る事を余儀なくされるのだった。

 

「逃げろ逃げろォ!!」

「何で!? 何で今なのさぁ!?」

「何処に隠れれば良いんスかぁ!?」

「サバイバル中に赤い月が発生したのはこれが初めて、拙者もどうすれば分かんないでござる~!!」

「海岸側は比較的安全ッスけど……!」

「また後退するのか!?」

「やめといた方が良いかも……オトシドリが引く程いるし、海の様子もなんかヘン……!」

「じゃあ、森の中!!」

「あそこは天然のデストラップの宝庫ッスよ!?」

「じゃあどうしようもねえじゃん! 洞窟に戻るのは!?」

 

 そう言った瞬間だった。

 ごごごごご、と音を立てて洞窟が崩れ落ちるのが見える。

 そして遅れて、岸壁に穴を開けて全身が鋼で出来た蛇のようなポケモンが現れるのであった。

 ご丁寧に目も真っ赤に輝いている。

 

「……ハ、ハガネールッス!!」

「んな事は見たら分かるよ!! 帰る場所も無くなっちゃった!!」

「逆に言えば、俺達あそこにずっと居たら死んでたんだな……」

 

 頭上からはオトシドリ。

 森の中はワナイダーを始めとした凶暴なポケモン。

 洞窟はハガネールのような地面タイプ。

 彼らが皆、赤い月によって暴走している所為で、逃げ場など何処にも無いのである。

 だが、先ずは目の前に現れたハガネールからどうにかせねばなるまい。更に、騒ぎを聞きつけてか、オトシドリ達も寄って集ってくる。

 

「キュオオオオオオオオオオン!!」

「ストォォォーック!!」

 

【ハガネール てつへびポケモン タイプ:鋼/地面】

 

 極めて防御の種族値が高いポケモンだ。物理技での突破は、たとえ効果抜群でも困難となる。

 故にメグルはシャリタツを、そしてアルカはモトトカゲをぶつけることにしたのだった。

 モトトカゲの背中に飛び乗るシャリタツ。そのまま、巨大なハガネールの身体に走ってよじ登っていく──

 

「──オーバーヒート!!」

 

 最高火力がハガネールの顔面にぶつけられた。防御力は堅牢だが、対して特殊防御力は低めだ。

 そのため、効果抜群の攻撃を受ければ一撃で倒れる──はずなのだが、

 

「キュオオオオオオオオオオオオン」

 

 未だにしぶとく、ハガネールは暴れ回り、巨体をうねらせてメグル達目掛けて尻尾を振り回す。

 当たれば即死は免れない攻撃に、思わずメグル達は身構えるが──

 

「メテノ!! 守るでござるよ!!」

 

 すぐさま飛び出したメテノが、ハガネールの尻尾を受け止める。こちらもかなり堅牢なのか、尻尾は弾かれ、ハガネールは態勢を崩してしまうのだった。

 しかしメテノの硬殻もただでは済まない。ピキピキと音を立てて殻が弾け飛ぶ。

 

【メテノの リミットシールド】

 

「──殻が砕けた……!」

「此処からが本番! こっちはオトシドリをどうにかするでござる! メグル殿!」

「おう! ……シャリタツ!! そこから狙い撃て!!」

 

 ハガネールが暴れたことで吹き飛ばされてしまっていたモトトカゲとシャリタツ。

 しかし、モトトカゲの頭によじ登ったシャリタツが、暴れ狂うハガネールの頭目掛けて──

 

 

 

「──みずのはどう!!」

 

 

 

 ──水の弾を撃ち放ち、射抜いたのだった。

 がんじょうによって持ちこたえていただけだったハガネールは断末魔の叫びを上げると、そのまま地面に臥せ、小さくなって見えなくなってしまうのだった。

 そしてオトシドリを相手にしているノオトは、ルカリオに”はどうだん”を指示し、落ちて来る岩を的確に落としていく。

 そうしていると、しびれを切らしたオトシドリ達が怒りの声を上げて次々に此方へ向かって急降下してくるので、殻が砕けて自由の身となったゴマノハのメテノが目にもとまらぬ動きで敵の周囲を舞う。

 

「──パワージェム!! 空中から撃ち落としでござる!!」

 

 一発一発が脳天を貫く精密な射撃だった。

 次々にオトシドリ達は地面へと叩き落とされ、動かなくなる。

 相手が空を制するならば、こちらは更にその上をいけばよい。

 リミットシールドを発動したメテノに追いつけるポケモン等、早々居はしない。

 

「これで全部片づけたか……!?」

 

 

 

「キィィィーッ!!」

 

 

 

 耳を劈くような甲高い咆哮が周囲を揺らし、ポッポの群れが木から飛び立っていくのが見えた。

 安心する余地などメグル達には存在しない。

 赤い月が輝いている限り、ポケモン達の暴動は続く。

 崖を乗り越えるようにして、次々に野生ポケモン達が飛び出して来る。

 だが彼らはメグルなど気にする素振りも見せずに通りすがっていく。

 ただただ迫る脅威から怯え、逃げているのだ。

 

「な、何だ!?」

「何かに怯えてるの!?」

「……この島には”魔物”が居るでござる」

「魔物!?」

「霊脈の力で、とんでもなくデカくなったあるポケモンでござる……! 捕まえても定期的に頭が挿げ変わる形で現れて、競争の末にそいつが島のボスになるのでござる……くわばらくわばら」

 

 つまるところ、流島の元締めとなるボスポケモンの事であった。以前にもゴマノハや他のキャプテンが遭遇し、その度に捕獲されているものの”魔物”がこの島から居なくなることはない。

 何故ならば──”魔物”とは霊脈の作用で巨大化したとあるポケモンの個体の総称だからである。

 

「霊脈ってサイゴク山脈だけに通ってるんじゃねえのか!?」

「正確に言えば、サイゴク地方の地下一帯ッスよ。近海も霊脈が枝のように貫かれている場所では──その影響を大きく受けるッス」

「じゃあコイツも、霊脈の影響を受けたってことぉ!?」

 

 周囲のポケモンを追い立てるようにして”それ”は姿を現す。先程のハガネールには及ばないものの、頭高だけで3メートルはあろうかという蛇が、獲物をまとめて捕食するべく大きな口を開けて飛び出して来る。

 

 

 

「──キィィィィーッ!!」

 

【ジャローダ ロイヤルポケモン タイプ:草】

 

 

 

 すぐさま動いたのはルカリオだった。

 ノオトの「はどうだん!!」の掛け声で敵の顔面にエネルギー弾が叩き込まれる。

 しかし、それでも怯んだ様子を見せずに大蛇はルカリオに噛みつくのだった。

 

「ルカリオッ!?」

「な、何アレ、ヘビのポケモン!?」

「ジャローダ……こりゃまた面倒なヤツが出てきたな!! 魔物ってコイツか!?」

 

(H75A75B95C75D95S113……火力は貧弱だが、あのデカさなら関係ないな!)

 

 ジャローダ自体は、イッシュ地方で最初のポケモンとして渡されるツタージャの最終進化形。故に、イッシュでは稀少なポケモンだ。

 そして──流島は数少ないツタージャ系統の原産地の一つ。森林の頂点捕食者として君臨する蛇の王である。

 霊脈の影響を受けたジャローダのサイズは、通常のそれよりも一回り以上大きくなっており、顎を開けばルカリオの胴体を齧ることが出来る程である。

 だが、厄介な点は巨大な事だけではない。

 

「キィィィィィーッ」

 

 ギロリ、とジャローダの真っ赤に輝く赤い目がメグルを睨み付けた。

 その瞬間彼の身体は痙攣し、そのまま地面に倒れてしまう。何が起こったか分からないまま、メグルは大蛇を見上げた。

 そして理解する。ジャローダを始めとする蛇系のポケモンが習得する技”へびにらみ”を受けたということを。

 

「ヤツの目を見たらダメでござる!! 痺れてしまうでござるよ!!」

「も、もっとはやく、言ってほしかったかなぁ……しびびび」

「メテノ!! パワージェムでジャローダの頭を攻撃するでござる!!」

「ヘラクロスはミサイルばり!! ルカリオを助けて!!」

「ルカリオ! 何とか脱出するッス!」

 

 頑強なのか、幾らルカリオが殴りつけてもジャローダが口を放す素振りは全くみせない。

 そればかりか、にやり、と高圧的かつ高慢な笑みを浮かべたジャローダは、長い尾を使ってヘラクロスのミサイルばりを全部弾き飛ばす。

 そして今度は、アルカとゴマノハ、そしてノオトを次々に”へびにらみ”で睨んでいくが、既に種が割れているので視線が合うことは無い。

 そのまま捕えたルカリオを丸呑みにするべく、顎を外そうとした矢先に──

 

「──ルカリオ!! 脳天に”はどうだん”ブチ込むッス!!」

 

 ──脳天に、これまでの時間で溜め切ったエネルギー弾がぶち込まれたのだった。

 流石のジャローダも、これには堪らず、ルカリオを放し、のたうち回る。

 しかし、今の攻撃によってプライドが傷つけられたのか、怒ったような甲高い声を上げるとノオト目掛けて今度は飛び掛かろうとする。

 だが──そこで森の蛇王は自らの身体が鉛のように重くなっていることに気付いた。

 

「ス、スシー……ッ!!」

「ナイスだシャリタツ……”こごえるかぜ”でヤツの十八番の素早さを奪った!」

 

 シャリタツである。

 モトトカゲの背中から降りたシャリタツは持ち前の軽さを生かし、岩陰に隠れ、そこからこごえるかぜをジャローダに向けて放っていたのである。

 受ければ、素早さの低下は免れない。更にこの狡賢い竜は”こごえるかぜ”の出力を絞っていたため、動けなくなるまでジャローダは自らの身体に霜が降っていることに気付かなかった。

 

「キィィィーッ!!」

 

 すぐさま襟のようになっている部分から蔓が2本生え、更に小さな手、そして尾に草で出来た剣が現れ、握られる。

 リーフブレード。それも五刀流だ。

 先ずはふざけたことをしてくれたシャリタツを真っ二つにするべく、尻尾の剣を振り下ろした。

 

「──狙撃でござる!! メテノ、パワージェム!!」

 

 しかし、今度は的確に草の剣が砕かれる。

 メテノの放ったパワージェムだ。その狙いは正確無比で、シャリタツに刃が届く瞬間にそれを破壊してみせた。

 そしてシャリタツも負けじと、ジャローダに最大出力の”こごえるかぜ”をぶつける。今度はさっきの足止め用ではない。本気でジャローダを凍てつかせるための攻撃だ。

 草タイプには効果抜群の氷技。堪らず、ジャローダは身をよじらせ、その場から逃げようとするが──こごえるかぜによって自慢の足が奪われたことで逃げることは叶わなかった。

 故に、今度はノオトとアルカ目掛けてリーフブレードを振り回し、切り刻もうとする。だが、既に拘束から解放されたルカリオと、強敵を前に奮い立っているヘラクロスにそれが通用するはずもなく。

 

「ミサイルばり!!」

「はどうだん!!」

 

 両者の最大火力がジャローダを襲うのだった。ぐらり、と巨体が揺れる。

 だがそれでも、蛇の王は怯むことなく起き上がり、今度はアルカを丸呑みにすべく大口を開けて飛び込んだ。しかし。

 

「──今だ、やっちゃえ!!」

 

 一気に蛇の動きは失速した。

 二の矢と言わんばかりにアルカはもう1匹、ポケモンを繰り出していた。ヘラクロスの陰から飛び出したそれは、巨大な槌をジャローダの首にぶつけ、そこから微弱な電気を流し込み、麻痺させる。

 

「キィィィィィィーッ!?」

 

 ぐらり、と巨体が揺れた。下手人は地面に降り立つと、得意気に大槌を振り上げるのだった。

 

「ナカヌチャンの”でんじは”でござるか!!」

「器用な技を使えるッスからね、コイツ!」

「……後はこれで、お終い!!」

 

 その隙を狙い、アルカがボールを投げると──それはすぐに吸い込まれてしまい、そのままボールの中へと収まるのだった。

 

「……お、終わった……こいつが”魔物”だったの?」

「月も……いつの間にか白くなってる。今までで一番ヤバい”赤い月”だったかも……」

「まさか」

 

 言い切ったのはゴマノハだった。

 

「……以前我らが相対した”魔物”は……もっと恐ろしいヤツだったでござる。そもそも、こんな所には出てこないでござるよ」

「うへぇ、ジャローダも結構強かったよ!? どんな奴なの……?」

「……ヌシクラスの強さであることは違いねえッスね。姉貴の話によれば、山の中央の洞窟に潜んでいて……暴れるだけで島中の野生ポケモンを恐れさせる力を持つッス」

 

 そして、過去に何度か”魔物”と呼ばれるポケモンは捕獲されているのだという。しかし、それでも頭が挿げ変わる形で、時間が経てばまた”魔物”は現れるそうだ。

 

「姉貴曰く”魔物”に勝たないことにはメガストーンは手に入らねえらしいッスよ」

「ねえノオト。その”魔物”についてもっと詳しくわからないの?」

「見てのお楽しみ、らしいッスよ、姉貴曰く」

「えぇー!? 何で教えてくれないの!?」

「それでは修行の意味が無いからでござろう……我らは前知識なしで”魔物”に挑んだでござるよ」

「あ、そうかぁ……」

「あのー? 誰かぁ、まひなおし持ってない? 俺の身体、ずっと痙攣して動かないんだけど……」

 

 全員の視線はメグルに向く。そして──ノオトが言い放った。

 

 

 

「……やっべ忘れてたッス」

「忘れんな畜生!!」

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 その晩は、大きく場所を移動することはせず、崩れた洞窟の近くで一晩明かした。

 そして、翌朝。未だ疲れが抜けきらぬ彼らはゴマノハの案内の下、全員で森を進み、比較的安全な草原の広がるエリアの木の大洞に拠点を構えたのだった。

 徐々に徐々にではあるが、メガストーンの産出地である岩山には近付いている。だが、今出向いたところでドクグモ、そして流島の”魔物”と鉢合わせした時に勝てる保証はない。

 故に──此処からは本格的にメグルとノオトは己とポケモン達を鍛え直すことに決めた。

 寝ずに番をしてくれていたゴマノハを傍で寝かせ、アルカは二人を見守る。

 

(ゴマノハちゃん、来る前はすっごく怯えてたけど、いざと言う時はすっごく助けてくれるし勇ましいんだよね……やっぱ忍者なんだなあ)

 

「んぅ……メテノ……」

「しゃらんしゃらん」

 

 尚、メテノが居ないと眠れないらしい。キャプテンのポケモンらしいが、世話を担当しているだけあって付き合いは一番長いのだという。

 アルカは、相棒同然のポケモンを抱きしめながら眠るゴマノハに小動物的な可愛さを見出しており、内心悶えていた。

 

(うう……可愛い……髪も綺麗なブロンドだし……ハーフ、ってやつなのかな)

 

 わきわき、と指を動かすアルカ。つい自分も彼女を抱きしめたくなるが、十中八九起こしてしまう上に、きっと怯えて二度と口を利いてくれなくなることが目に見えていたのでやめた。

 

「次にヨイノマガンと戦う時までに、手持ちのレベルを底上げしとくッス。オーライズはアブソルに切ることを最初から考えて、他のメンツは自分の一番得意な戦術を伸ばした方が良いッスから」

「成程な。やっぱり得意分野に振った方が良いんだな」

「何を振るんスか何を」

「こっちの話だ」

 

 手持ちをポンポン、と出していき、トレーニングに入るメグルとノオト。

 そんな二人を見ながら、荷物とゴマノハの番をしているアルカはほぅ、と溜息を吐く。乗り越えなければいけない壁は、あまりにも多い。

 

(……頑張ってるなあ、おにーさん。ボクも……もっと、強くならなきゃ)

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 ドクグモは──既に中央部の岩山に辿り着いていた。

 そこは、洞窟で地下に進むことが出来、奥は大空洞が広がっている。

 更に下へ下へ、と進んでいくが、いずれも人工的に掘り進めたらしい作業の跡が見られた。

 かつてメガストーンを採掘するために開発する計画があったのだという。しかし”魔物”とサイゴクの霊脈が齎す”祟り”によって、計画自体が頓挫してしまったという。

 

(”魔物”は野生のポケモンの範疇でしかない。問題は”祟り”だ)

 

 言ってしまえば、霊脈の存在する場所で開発行為を行った人間やポケモンに災いが起きるというものであった。

 

(……サイゴクで開発が進まない最大の理由は霊脈にあると言っても良い。健全な開発をも阻む上にポケモンにとっても害となるサイゴクの呪いよ)

 

 その一端が、この島で50年ほど前に立ち上げられて中止された採掘計画だった。

 派遣された作業員はいずれも、不幸な最期を遂げたという。ある者は事故で。ある者は病気で。ある者は何か恐ろしいものを見たような顔で首を吊っていたという。

 流島だけではない。サイゴク山脈の開発が進まない最大の理由が、この災いなのである。開発を進めたくないのではない。進める事ができないのだ。

 

(サイゴクの山々を表向きには自然保護のお題目で守ってはいるが……実際には祟り神を体よく祀っているのだ。サイゴクのキャプテン達には同情する)

 

 皮肉ではなく本心からドクグモはそう考える。自分が同じ立場ならば、胃がもたれそうだ。

 故にキャプテン達は霊脈を恐れており、開発に対して慎重なスタンスを取らざるを得なかった過去がある。たとえばリュウグウもまた、数多の開発計画が頓挫してきたのを目の当たりにして来た一人だ。彼が旧友・マリゴルドの計画を何としてでも止めねばならなかった理由は、間違いなく作業の過程で”祟り”によって多くの人死にが出ることが確定的だったからである。

 

(そのヒントがきっと此処にある──む)

 

 しばらく進んでいると、ドクグモは──最奥に辿り着く。

 だが、そこには最近開いたような穴があった。果てしなく巨大な何かが暴れたような跡がある。

 その先に踏み出そうとするが、自分の勘が告げる。待つのは死のみだ、と。

 

 

 

(何かが……この山の地下で目覚めた? まさか昨日の”赤い月”で──?)

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