土曜ドラマ「大地の子」
時代に翻弄されながらも力強く生きた人々のストーリー
敗戦の混乱の中、旧満州で両親や妹と離れ離れになってしまった少年・松本勝男(上川隆也)は、中国人の養父・陸徳志(朱旭)に引き取られ、名前を陸一心と改めて大切に育てられる。
技術者となった一心は、文化大革命の波にもまれながらも苦難を乗り越えて、ついには日中共同開発プロジェクトである最新鋭の鉄鋼プラント建設に携わることになる。日本側スタッフの中には、一心の実父・松本耕次(仲代達矢)がいたが、はじめはお互いが親子であることには気付かなかった。
妹との再会、死別を機に耕次が実父であることを知る一心。実父に対する複雑な気持ちに揺れながら、鉄鋼プラントを完成させる。長江下りの船の中で「日本に帰って来てくれないか?」という耕次に「私は大地の子です」と、一心は中国に残る決心を伝えた。
ドラマ化構想から4年、日中共同制作の苦労
中国側の台本チェックは厳しかった。中国側との間では、(1)原作中に実名で登場する中国の指導者の部分は不可、(2)NHKは中国の内政問題ではなく、純粋に父と子の愛の物語を描くという姿勢を守る、という点が確認されていた。
「役者の人民服を悲惨な時代に合わせて汚そうとすると『日本人は中国人のことを貧乏で汚いと思っている!』と怒るんです。それでも現実感を追求する姿勢を理解してもらった後は、彼ら自らが服に泥をつけていました」(河村正一チーフ・プロデューサー)
主役・上川隆也 大ブレイク
ドラマの主役には新人の起用しかありえなかった。シーンの3分の2が中国のため、通算128日間という長期に渡って、長春、大連、北京、内モンゴル、上海、重慶と広範囲な地域で行う大規模なロケだ。有名俳優ではOKをもらえない。主役選びが難航する中でプロデューサーらはふと手にした情報誌に載っていた、ある劇団の俳優に注目した。劇団「キャラメルボックス」の看板俳優・上川隆也だ。『大地の子』に出演すれば一年間は舞台に立てない。悩む上川に対して、劇団の主宰者・成井豊が背中を押した。
「主宰者からは『NHKで修行してこい』と言われました。役者として大きくなって劇団に帰ってくれば、それでいいと。」
このドラマでの成功で、上川は一気に若手実力派俳優の評価を得ることになった。
感動の最終話 脚本家も泣いた中国俳優の「さようなら」
最終話。残留孤児である一心を育てた中国人養父・徳志(朱旭)と、実の父・耕次が対面した後、耕次を徳志が見送るシーン。台本では「再見(ツアイツエン)」と中国語になっていたが、台本を読み込んだ朱旭は、脚本の岡崎栄に日本語で言いたいと提案していた。
撮影日、岡崎以外のスタッフは誰も知らないまま本番を迎えた。突然、養父が「さようなら」と実父に向かって日本語で話し、頭を下げる。
養子とはいえ愛する息子・一心。その実の父であり、戦後50年間息子を探し続けた耕次に対し、日本語で声をかける養父の想い…。現場の誰もが驚き、そして目頭を熱くした。岡崎も現場から離れた木の陰に隠れて号泣していたという。
【アカイさんの一言】
このドラマの全セリフのおよそ80%は中国語。陸一心役の上川隆也さんは完璧な中国語を話している。しかし、上川さんは中国語を全く話すことができなかったので、実はセリフを発音ごと丸暗記していた。それを知らない中国側スタッフはしばらくの間、彼は中国語が話せるものと思い込んでいたという。
長春のシーンには中国在住の残留孤児10人が出演した。「『日本へ連れていって欲しい』と泣きながら頼むシーンでは、実際に体験しているので演技とは思えませんでした」(河村正一チーフ・プロデュサー)とスタッフも涙したそうだ。
平成7年度文化庁芸術作品賞やモンテカルロ国際テレビ賞最優秀作品賞を受賞した。
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制作統括
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演出
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音響効果
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出演
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※NHKアーカイブスブログ(2008年7月25日)より転載、加筆、写真追加
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