力学 物理

系のエネルギー保存則

羽白 いむ

東京大学医学部医学科卒 現役医師
東大指導専門塾鉄緑会 物理・数学科元講師
物理基礎のトリセツ著者
数学のトリセツ共著者

系で考えるエネルギー保存則

系とは

エネルギー保存則は物体ごとに考えるのが基本ですが,複数の物体をまとめて考えることがあります。

複数の物体のまとまりは物体系(あるいは単に)と呼ばれます。

羽白

以下の問題を確認してみましょう。物理基礎の演習問題で扱った問題と同じものです。

例題

質量が mm の物体Aと,質量が MM の物体Bが,滑らかな滑車を介してつながれている。はじめ,2つの物体はいずれも地面からの高さが hh の位置で静止していた。2物体から同時にそっと手を離すと,物体Bが下向きに動きはじめた。物体Bが地面に到達する直前の速さvv を求めよ。ただし,重力加速度の大きさを gg とする。

各物体に作用する非保存力は張力のみです。この張力の大きさを TT としましょう。

物体Aに対して張力がなす仕事 W1W_1 は,

W1=ThW_1=Thですね。

一方,物体Bの進行方向と張力は正反対を向くことから,張力が物体Bに対してなす仕事 W2W_2 は,

W2=ThW_2=-Thで与えられます。

W1W_1W2W_200 でないことから,張力(非保存力)はそれぞれの物体に対して仕事をしているため,各物体の運動を別々に考えた場合には力学的エネルギー保存則が成立しません

しかし,

W1+W2=ThTh=0W_1+W_2=Th-Th=0であることから,2物体全体で考えた際の張力の合計の仕事は 00 となり,力学的エネルギーが保存されます。

以上を踏まえて,問題を解いていきましょう。

生徒

物体Bの下向きの速さが vv のとき,物体Aの速さは上向きに vv です。

また,物体Bは地面に到達するまでに hh だけ落下する一方で,物体Aは hh だけ上昇します。

よって,2物体のはじめの位置を重力の位置エネルギーの基準点とすると,物体Aの位置エネルギーは mghmgh だけ増加し,物体Bの位置エネルギーは MghMgh だけ減少することになります。

以上から,「系全体での力学的エネルギー保存則」より,

0=12mv2+12Mv2+mghMgh\begin{aligned} 0=\bun12mv^2+\bun12Mv^2+mgh-Mgh \end{aligned}が成立することがわかります。

これを vv について整理すれば,

v=2ghMmM+mv=\sqrt{2gh\bun{M-m}{M+m}}として答えが求まります。

等加速度運動として考えると

上の問題において,2物体の運動はいずれも等加速度運動なので,公式を使って解くこともできます

しかし,力学的エネルギー保存則を利用したほうがスムーズに解けることが多々あるため,どちらの方法でも解けるようにしておくべきでしょう。

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