系で考えるエネルギー保存則
系とは
エネルギー保存則は物体ごとに考えるのが基本ですが,複数の物体をまとめて考えることがあります。
複数の物体のまとまりは物体系(あるいは単に系)と呼ばれます。
以下の問題を確認してみましょう。物理基礎の演習問題で扱った問題と同じものです。
例題
質量が の物体Aと,質量が の物体Bが,滑らかな滑車を介してつながれている。はじめ,2つの物体はいずれも地面からの高さが の位置で静止していた。2物体から同時にそっと手を離すと,物体Bが下向きに動きはじめた。物体Bが地面に到達する直前の速さ を求めよ。ただし,重力加速度の大きさを とする。
各物体に作用する非保存力は張力のみです。この張力の大きさを としましょう。
物体Aに対して張力がなす仕事 は,
ですね。
一方,物体Bの進行方向と張力は正反対を向くことから,張力が物体Bに対してなす仕事 は,
で与えられます。
も も でないことから,張力(非保存力)はそれぞれの物体に対して仕事をしているため,各物体の運動を別々に考えた場合には力学的エネルギー保存則が成立しません。
しかし,
であることから,2物体全体で考えた際の張力の合計の仕事は となり,力学的エネルギーが保存されます。
以上を踏まえて,問題を解いていきましょう。
物体Bの下向きの速さが のとき,物体Aの速さは上向きに です。
また,物体Bは地面に到達するまでに だけ落下する一方で,物体Aは だけ上昇します。
よって,2物体のはじめの位置を重力の位置エネルギーの基準点とすると,物体Aの位置エネルギーは だけ増加し,物体Bの位置エネルギーは だけ減少することになります。
以上から,「系全体での力学的エネルギー保存則」より,
が成立することがわかります。
これを について整理すれば,
として答えが求まります。
等加速度運動として考えると
上の問題において,2物体の運動はいずれも等加速度運動なので,公式を使って解くこともできます。
しかし,力学的エネルギー保存則を利用したほうがスムーズに解けることが多々あるため,どちらの方法でも解けるようにしておくべきでしょう。