イランの豚肉愛好家「禁制品ほど食べたい」 厳格イスラム体制、摘発リスク覚悟で密輸

テヘラン中心部の食料品店でひそかに販売されている豚肉の加工食品=2025年10月(共同)

 厳格なイスラム体制が敷かれるイランでは、宗教的にタブーとされる豚肉は「禁制品」だ。だが首都テヘランなど北部を中心に、肉屋に行けば容易に手に入れることができる。販売業者は摘発リスク覚悟で近隣国から密輸。愛好家は「禁じられれば食べたくなる。人間とはそういうものだ」と話す。(共同通信テヘラン支局=上松亮介)

 テヘラン中心部の食料品店。店員に小声で「豚肉はあるか」と尋ねると、冷蔵庫の奥から段ボールを取り出した。中には色鮮やかな豚肉の加工食品が入っていた。隣国アルメニア産の「豚トロ」やドイツ産のベーコンなど品ぞろえは上々だ。

 商品は、外国を旅行する人に依頼するなどして完全な密輸で持ち込まれる。この店の常連客は約100人で、ほとんどがイスラム教徒。当局に見つかれば店舗免許取り消しのリスクもあるが、店主のラシドさん(62)は「食べたいものを食べて何が悪い?」とにやりと笑みを浮かべた。

 ただ豚肉の値段は牛肉より高く、あくまで愛好家や富裕層が買い求める高級品だ。テヘラン在住のITエンジニアの男性、ラミンさん(35)はタイ旅行で豚肉のとりこになった。イラン国内の多くのスーパーマーケットでも購入できるとし「このおいしい肉がなぜ禁じられなければならないのか。答えのない疑問にとらわれるより、今この瞬間を楽しむだけだ」。

 イランの社会学者、サイード・モイドファルさんは、イスラム体制による統治は、核問題を巡る対イラン経済制裁など数々の国難を引き起こし、国民の信頼を失っていると指摘。それが豚肉や酒を禁忌とする宗教的規範を守る意識を希薄化させていると分析した。

テヘラン=2025年11月(ゲッティ=共同)
テヘラン中心部の食料品店でひそかに販売されている豚肉の加工食品=2025年10月(共同)
イラン・テヘラン

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