廃線危機に揺れる日本一のミニ鉄道 市民の足になりきれぬ2.7km
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和歌山県御坊市を走る紀州鉄道は全長2・7キロ、五つの駅間を約8分で走る「日本一短いローカル私鉄」だ。 【写真】紀州鉄道の終点・西御坊駅。1989年まで運行していた日高川駅への線路の一部がいまも残る。かつては紡績工場への引込線もあった=2025年12月10日、和歌山県御坊市薗、榊原織和撮影 12月上旬、紀州鉄道が最も混む平日朝のJR御坊駅を訪れた。午前8時前に1両編成のディーゼルカーが到着すると、通勤客ら10人ほどが降りた。折り返しの便は、沿線にある県立日高高校・付属中学校の生徒ら35人ほどを乗せて出発した。 JR御坊駅から同校までは直線距離で1・3キロほどと比較的近い。そのせいか、御坊駅までJRに乗ってきた生徒の多くは紀州鉄道に乗り換えず、駐輪場から学校へ自転車で向かった。 その日の午後、JR御坊駅から列車に乗った。車両の外装にさびが目立つ。出発時の乗客は5人だった。単線をゆっくりと走る列車の車窓には、しばらく田園風景が広がる。 のどかでレトロ感のあるローカル線を楽しみたいと、ファンは訪れる。大阪府の女性(45)は「いつか見に来たいと思っていた」という。終点の西御坊駅以南に残る廃線跡を歩き、しょうゆ蔵を訪ねた。「観光できるところがいろいろあって楽しかった」と話した。 紀州鉄道はローカル線だが、人の行き来が極端に少ない地域を走っているわけではない。沿線には学校のほかにも、観光地の寺内町、地域の中核病院、市役所、図書館などがある。 列車に乗り降りして取材を進めると、暮らしの一部として利用する人たちに出会った。高齢女性は入院する夫に会うため、JRを乗り継ぎ湯浅町から通っていた。男性会社員(66)は和歌山市までの通勤に使う。バスよりJR線との接続がいいためだが、「周りで(紀州鉄道に)乗っているのは僕くらい。他の人は『車派』です」と話した。 市によると、2024年度の乗客総数は9万2205人で、1日平均252人。25年前と比べて33%減った。慢性的な赤字で、22年度の営業収益は1209万円、営業費用は6071万円にのぼった。
朝日新聞社
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