オレンジアカデミーで教師の代役をするという体験をした後、自分にとっての日常が帰ってきたと実感出来る日々だった。矢張り平凡こそ一番だったのだと分かる。ハッサクからは確りとオモダカに伝えた上でこれからは無理なスカウトはしないという事を確約させてくれたので何か奢りたい気分、が同時にあのオモダカが簡単に引き下がるのか……?という疑問もあった。
「しかし、こんなものを貰っちゃうとは……おっさんには重いなぁ……」
スマホロトムの画面に表示されている連絡先、そこにはネモの名前があった。あのバトルで相当に気に入られたらしく再びのバトルをお願いされてしまった。チャンピオンクラスのトレーナーであるネモがしがない一般人と会ってバトルなんてしていいのだろうか……
『大丈夫だと思いますよ、だって私色んな人にバトル申し込んでるし!!まあ断られちゃうことも多いんですけどね~』
バトルジャンキーのネモの事を舐めていたかもしれない……まあ偶に付き合う位ならばいいかな……という気持ちで連絡先は交換しておいた。素直な事を言うとネモとのバトルは素直に楽しかった、旅をしていた頃を思い出すには十分すぎる刺激だった。
「……いかんな、素直にまたバトルしたいなって思っちゃった」
旅をしている時はずっと一人だったしライバルと言えるような深い親交があったトレーナーが居た訳でもなかった。だから素直に自分ともう一度バトルしたいから連絡先交換しよう、なんて事を言われたのも初めてだったしネモと今度バトルする時のパーティは如何しようかなと思ってしまう。
「しっかしあのジャラランガ、本当に強かったなぁ……あれで600族の恥とか言われてるんだから分からないよなぁ……ラストのスカイアッパーなんてなんだよって思ったわ、というか覚えたんだなスカイアッパー」
そんな独り言を言いながらもラビは配信の準備を手際よく進めていく。今日はとてもいい気分で配信が出来そうだ。
「今回紹介するポケモンさんは此方」
「ケガァ!!」
「ケケンカニさんです」
| ・カニカニケケンカニ ・カニカニケケンカニ ・カニ!カニ! ・ガニィ!! ・なんだこれ |
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「はい、ケケンカニさんです。此方のケケンカニさんは氷格闘タイプのポケモンです。進化前のマケンカニさん同様に喧嘩っ早いという特徴がありますが、とにもかくにも見境なく殴りまくるという昔の不良かと言わんばかりに殴って理解し合うタイプのようなんです。ケケンカニさんのハサミはまるで殴る為にあると言わんばかりに拳のような形をしてますがちゃんと開閉もするんですよ、ほらじゃんけんぽん、あっ……ついパーを出してしまった……負けた……」
「ガニィガァ!!」
| ・カニポケモンにじゃんけんで負ける配信者www ・新しすぎるぞwww ・にしても喧嘩っ早いのか。 ・一部のトレーナーと相性良さそう。 ・脳筋とかな。 |
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「しかし脳筋と思って甘く見てはいけませんよ?ケケンカニさんは凄いんです、いざという時にはこのハサミを切り離して距離の離れた相手も殴り飛ばせますから。文字通りのロケットパンチですよロケットパンチ」
| ・まさかのwww ・おい自分の身体を大切にしろよ! ・まさかのロマン枠だったのかwww |
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「しかしそのパワーは折り紙付きです。ハサミの中には冷気が詰まっていてこれで腕を硬くして相手を殴り飛ばすんです、これによる威力は尋常な物ではありません。アローラ地方ではなんと雪崩をラッシュで止めてしまうという記録も残っています」
| ・雪崩……? ・雪雪崩……とかじゃなくて? ・ポケモンの技じゃなくてガチ災害? ・うっそぉ……。 ・こいつ、唯のカニじゃねえ……!? |
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「ガァ~ニンガンイ!!」
「そうですケケンカニさんはマジで凄いんです、そして更に凄いのがロケットパンチで切り離したハサミはとっても美味しいんですよ。一部地域ではケケンカニさんのハサミの味に魅了されてしまうトレーナーもいる位ですからね」
| ・食用!? ・食えるのかよ!? ・しかもうまいのか…… ・で味は? ・はっ? ・味だ味、カニが美味いなんて分かり切ってるだろ。 |
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「さてケケンカニさんなんですが、タイプは氷と格闘で弱点のタイプが6つもあるというのが辛い所、ですが氷と格闘タイプもかなりの広範囲に良い相性なんです。攻めと守りの両面で弱点の取り合いという状態です。そんなケケンカニさんは攻撃の面で生かしてあげるのが矢張り一番でしょう。私のケケンカニさんの特性は鉄の拳、この特性はパンチ系の技の威力を上げるというケケンカニさんにピッタリな特性です」
| ・岩に地面に草に飛行、鋼にえっと… ・ドラゴン、悪、ノーマルだな。 ・すっげそんなに弱点付けるのか。 ・攻め攻めにピッタリだな ・フム、右か。 ・何の話だ? |
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「ケケンカニさんの得意技であるアイスハンマーにも鉄の拳は適応され、その威力は想像を絶する破壊力を生み出します。恐らくですが氷物理技という点に関しては最早最強と言っても過言ではありません。これ以上は伝説のポケモンとかを引っ張って来るしかないかもしれません」
| ・待って待ってそんな強いの!? ・マジで物理耐久特化型みたいなポケモンじゃないと止まらない可能性大だな……。 ・だけど氷だから止める側は誰で止めたらいいんだ……? ・鋼が一番、分かりやすいか……? ・でも生半可だと逆にこっちに跡が残るんでしょ? |
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「そうですね、しかしケケンカニさんの弱点の多さは矢張りサポートが必須でしょう。特にケケンカニさんは素早さも低めなので辛いでしょう、ですがこの遅さを利用するのも一つの手です。皆さんはトリックルームという技をご存じでしょうか?」
| ・あれだろ、立体的に見える騙し絵 ・それはトリックアート。 ・トリックルーム is 何。 ・説明しよう、トリックルームとは!! ・一定時間素早さが低いポケモン程先に動けるようになるというエスパー技である。 ・ああっ俺の説明がぁ!? |
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「ですのでトリックルームを張ればケケンカニさんが大暴れしてしまうんです。アイスハンマーは使う度に素早さが下がるという特徴もあるのでトリックルーム内ですと逆に素早さをあげる事になるんです。どんなに素早い相手でも先に行動し必殺の一撃を叩き込むケケンカニさん、皆さまも如何でしょうか?」
そんな紹介をしたと思ったらスマホロトムが鳴り響いたので見て見ると―――
『ラビさん私そのケケンカニともバトルしたい!!やっぱり今度バトルするときは3対3でやろうよ!!絶対に楽しいし燃えるって!!』
ネモからバトルの誘いが来ていた。本当にバトルが好きなんだな、と思うと同時に年頃の娘さんと良い歳したおっさんに連絡を取り合っていいのだろうか……と少しの間真剣に悩んだ結果
「いやネモさんなら気にしないか」
という結論に落ち着いた。
何故かアローラポケモンが多くなる罠。だって魅力的な子が多いんだもの。