知り合いはさいつよ決闘代理人 作:秘境と聖杯ダンジョン
今日の仕事は私が手伝おう。代わりに私の用事に付き合ってくれないか。
クロリンデさんにそう言われた僕は、いつもの様にこう返事した。仕事じゃなくて、あくまで趣味を換金してるだけですよと。
そんなことはどうでも良くて。
前述の通り狩りを少し手伝って貰い、昼前に獲物を持ってフォンテーヌ邸に戻ってきた僕とクロリンデさん。いつもの様にお店で換金したら、今度はクロリンデさんの用事とやらに着いていく。
向かう先は……千織屋?服でも買うのかな?
「待たせた」
「おっそーい!」
千織屋の隣のテーブル席に座っていた女性が勢いよく立ち上がり、開口一番そう言った。
一言で言い表すなら「お嬢様」な彼女の事は僕も知っている。
「ご無沙汰です、ナヴィアさん」
「あら、クロリンデの……えぇ久しぶり。予言のあの日以来?」
「もうそんなですか。日が経つのは早いもんですね」
「ホントねぇ。ね、例の件は考えてくれた?」
「はっはっは」
例の件。なんの事やら。
外国人根無し草のフリーターを勧誘するなんてとんでもない。
「むぅ、まぁいいわ。今日クロリンデが連れてきたってことは、アンタが数合わせ要員ね?」
「数合わせ?なんの事ですか?」
「ちょっとクロリンデ、説明してないの?」
「彼ならきっと来てくれると思ってな。実際こうして来てくれた」
クロリンデさん?なんの説明も無く用事に付き合えとしか聞いてないですよ?
「はぁ……えっと、これからやるのは『テーブルトークシアターゲーム』よ。知ってる?やったことある?」
「えっと、知りません」
「オッケ。倶楽部に向かいながら説明するね──」
ナヴィアさんから、ゲームの趣旨を聴きながら歩いている内に『テーブルトークシアター倶楽部』に着いた。
テーブルトークシアターゲームとは、要はシナリオに則ってキャラクターを作り、作ったキャラを演じながら物語を進めていくゲームらしい。
「じゃあ早速やりましょうか。アンタは今日はどうする?」
「今日は私もプレイヤーをやろう。オーナー、ゲームマスターを頼んでもいいだろうか」
「構いませんよ、クロリンデさん」
カウンターから出てきたオーナーさんが僕たちの卓に座る。
テーブルトークシアターゲームの始まりだ。
「まずはキャラを作りましょうか。詳しいルールはキャラカードの裏に書いてあるわ」
「名前は本名でも通り名でもなんでも、好きなように付けて構わない」
「なるほど、じゃあ『狩人』で」
「それ、職業じゃん」
「職ではないよ、趣味だから」
「では、次は技能だな。限られたポイントを使って、様々な技能を獲得できる。ポイントを高く振れば、対応する判定が成功する確率が高くなる」
「なるほど……おすすめとかあります?」
「ふむ……では」
「跳躍!いっぱい振りましょ!」
「ナヴィア……」
「跳躍ね。ほかは……洞察?っていうので」
「あたしは説得と捜査!これは欠かせないんだから!」
「私は追跡と調理にしよう」
ゲームを進めるにあたって、今選んだ技能を使った行動が成功するか失敗するかを決めるのが、テーブルの上に広がっている二十枚の『運命判定カード』という物らしい。技能を使うタイミングで、カードを一枚引く。引いたカードに書かれていた数値が基準値に届いていれば成功、届いていなければ失敗。数値が離れていれば離れているほどよい結果や悪い結果を招いてしまうこともあるらしい。
「ルールは都度都度説明するから、一回やってみましょ!」
「うん」
「うい」
テーブルトークシアターゲーム、テトシアが始まった。
始まってすぐ、ナヴィアさんに言われるがままに跳躍の技能を取った事を後悔する僕だった。
「はー!面白かったぁー!」
「ふ……ふふ……その、なんだ……初めてにしては良く頑張ったと思うよ」
「ちくしょう……ずっとナヴィアさんに振り回されてた……」
なんだよ、いきなり動物を説得し始めたり、木の上に逃げた猿を追いかけるために跳躍させられたり……しかも、跳躍を使ってもいい事なんもないし……。
「ふふふ、これで君もテトシアの楽しさ、わかったでしょ!」
「苦手になりそう」
「えー!なんでー!?」
「君が無茶ぶりばかりするからだろう。オーナーもげんなりしている」
ある意味、今回のゲームの一番の被害者はゲームマスターを担ってくれたオーナーさんかもしれない。
自由なナヴィアさんの解釈に振り回される事が多いこと多いこと……。
「よーし、次は違うシナリオで──」
「ナヴィア、もうじきに日が暮れる。今日はここまでにしよう」
「えー」
「私は近く代理決闘を控えているから、明日は外せないし、彼も仕事がある」
「仕事じゃなくて趣味ね」
「それに、君だって毎日暇している訳じゃないだろう?」
「んー、そうね。じゃあ今日はこれでお開きにしましょっか。ありがとねオーナー、また来るわ!」
「はい……またのお越しをお待ちしております……」
僕とクロリンデさんもオーナーさんに会釈して、ナヴィアさんに続いて店を出た。
「じゃあ、また今度ね!今度はもっと大きなシナリオやりましょ!」
「あぁ、また」
「今度は絶対跳躍取りません」
「またねー!」
ナヴィアさんは手を振りながら去っていった。最後の僕の言葉、届いていたのかな。
テーブルトークシアターゲーム、今度はナヴィアさんに振り回されないように立ち回らなきゃな。
「……今日のテーブルトークシアター、楽しかったか?」
「え?あぁはい、振り回されてばっかりでしたけど、楽しめましたよ」
「なら良かった。君はこういうの苦手かと思っていたよ」
「苦手……確かに、連れてこられる前に詳細を聞かされてたら、この場に来なかったかもしれませんね」
「だろう?君にはこの楽しさを知ってほしかったから、敢えて教えなかったんだ」
「ありがとうございます、クロリンデさん」
「こちらこそ、ありがとう。また一緒に遊ぼう」
「ええ、その時はよろしくお願いします」
そうしてクロリンデさんと別れて、帰路に着いた。
道中の雑誌屋に、テーブルトークシアターゲーム特集と書かれた本が置いてあったので、購入して帰宅したよ。
原神初心者なので、間違った知識とかあったら教えてほしい。