「ニョロボンさん、相手はパルデア地方のチャンピオンクラスです。油断せずに行きましょう」
「ボォォンッ!!」
拳をぶつけながらも気合十分のニョロボンの鋭い眼光にジャラランガは負けじと睨み返す、ネモはニョロボンを細かく観察していた。本当によく育てられている、よく発達した腕と脚がこれまでの歴史を物語っているかのようだ。
「先行はそちらからどうぞ、譲りましょう」
「それじゃあ行きますよ、ジャラランガ手始めは盛大に!!爆音波!!」
「ジャァラララララッ!!」
全身の鱗を振動させながらニョロボンへと莫大な音波の爆弾を放つ。手始めというには本当に盛大だ、いきなり音技最強格とは……此方を認めてくれている証拠だろうか。
「守るです」
「ボンッ!!」
莫大な音波は障壁で完全に防御される、音技が攻撃技として優れていると言っても流石に守るは貫通出来ない。
「それでは此方も行きましょうか、雨乞いです」
「ボンボンボ~ン!!」
両手を打ち鳴らしながらも空に向けてその音を放った、直後に空は一気に黒い雲が掛かり雨が降り始めた。生徒達は雨乞いに怯む事はない、流石にトレーナーの学校なだけはある。
「水タイプの技の威力を上げてきた、だけどジャラランガに利くかな!?そっちがその気ならこっちももっともっと上げて行くよジャラランガ!!」
「ジャラララ!!」
ネモの声と共に咆哮を上げながらも身体の鱗が擦れて大きな音を立て始めていく、それを見たラビは瞳を鋭くしながらもニョロボンに小さく声を掛ける。それに頷きニョロボンは構えた。
「行くよソウルビ―――」
「地獄突き!!」
「ボボボン、ボォン!!」
「ジャァッ……!?」
ジャラランガが全身の鱗の音を更に上げようとした時だった、ニョロボンは雨の中を滑るかのように一気に駆け出した。そのスピードは相当な物、そしてそのままの勢いでジャラランガの喉に強烈な貫手が突き刺さった。
「は、速い!?もしかして、すいすい!?」
「ニョロボンさんの夢特性はすいすい、天候が雨の時に素早さが上がります。水技の威力を上げるだけが雨の使い方ではありませんからね」
「ァッガァッ……!!!」
低い唸り声を上げながらもニョロボンを振り解く、流石は格闘ドラゴンタイプ。悪技である地獄突きはそこまでの威力にはならない。だがこれでいい。
「ジャラランガ、大丈夫!?」
「……っジャランァ……!!」
「地獄突きでソウルビートを殺しに来た……!!」
「ジャラランガの時点でそうすると思いましたからね、音技の厄介さは身に染みてますので対策させて頂きました」
地獄突きは少しの間音系の技を使えなくする追加効果がある。ジャラランガ最大の攻撃であるスケイルノイズと自らを強化するソウルビートの双方を一気に封じられたことになる。
「腹太鼓!!」
「ボンボンボンボンボンボンッ!!」
「龍の波動!!」
「ジャッ、ジャァァアアアア!!!」
ネモは極めて冷静なのが指示からも読み取れた、地獄突きは音系の技を封じ込んでしまうのならばそれ以外の技で攻めればいい。腹太鼓をするニョロボンへと龍の波動が炸裂する。しかし煙の中からニョロボンの力強い声が溢れ返った。
「ボンボォン!!」
「阻止出来なかった、でもまだまだ!!ジャラランガ、インファイト!!」
「ジャァァゥ!!」
「ドレインパンチ!!」
「ボンボンッ!!」
軽快なステップから一気に加速するニョロボン、懐に入り込んで来るニョロボンを待ちかねるようにパンチの連打を繰り出すジャラランガ、喉が潰されようがジャラランガ自身の近接戦の強さは衰え知らず。
「ボォンッ!!」
「ジャラァッ……ガァァァァ!!」
深々と突き刺さった拳、腹太鼓によってパワーが限界まで高まっているニョロボンの拳に苦悶に悶えるが厳しい修行に打ち勝った者の意地と言わんばかりにニョロボンを殴り返した。だがジャラランガとニョロボン、何方が優勢かは一目瞭然。
「これは、もうキツい、次で決める!!」
腹太鼓で体力は削られている筈だが、それによってパワーアップしたドレインパンチでジャラランガの体力を大幅に吸い取られてしまった。即座にジャラランガの状態を見抜いてどうするかを決める、ジャラランガの切り札は何も鱗を共振させて放つ音技ではないのだから。
「ジャラランガ行くよ、最大パワーでスカイアッパー!!!」
「ジャアアアアアアッ!!!ガァァァァァ!!!」
ドラゴンとしての闘争心を全開にまで剥き出しにしながら渾身の力を全て腕へと集めてジャラランガは一気に向かって来た。ジャラランガの必殺技はアッパーカット、その威力は衝撃で周辺の地形が変化してしまうほどの破壊力を秘めている。ならばそれを真っ向から受けてたとうじゃないか、真っ向勝負を絶対に逃げないのが信条、最後の一撃だというのならば真っ向から打ち破ってやろうというのが自分のニョロボンなのである。
「ニョロボンさん、貴方の自慢の拳で真ん前から打ち砕け、爆裂パンチ!!!」
「ボンッボォオオオオオ!!!」
ジャラランガへとニョロボンも向かって行く。一方は渾身のアッパーカット、一方は自慢の右ストレート、格闘タイプらしい激突となった。互いの必殺の一撃が炸裂、した。両者の拳が確かに双方の身体へと食い込んだ。
「ジャラァッ……ガァァァァァアアアアアアッ!!」
「ボッ―――ボォオオオオオオオオンッ!!」
一瞬、互いの意識が途切れそうになりながらもそれだけはしたくないと言いたげなプライドが両者の身体を突き動かした、共に振り抜かれた一撃がクリティカルヒットする。一撃の威力は全く殺されておらず、吹き飛ばされ地面へと転がるジャラランガとニョロボン。
「ジャラランガ!!」
「ニョロボンさん!!」
トレーナーが見たのは……お互いのポケモンが目を回している光景だった。ダブルノックアウトによる引き分け、それがバトルの決着となった。
「お疲れ様ですニョロボンさん、まさか腹太鼓状態で雨下の貴方が押し切れないとは……流石はネモさんのジャラランガ、本当に強い……次戦うとしたらこんな一方的なのは無理ですね……私達もまだまだ上を目指せると思っておきましょう」
「ボン……」
「お疲れ様です、ゆっくりと休んでください」
ドレインパンチで体力が回復しきらなかったのと龍の波動のダメージが利いていたのが原因だろう。これは要反省だな、と思いながらニョロボンをボールへと戻すと目を輝かせたネモが迫ってきた。
「凄い、凄いよラビさん!!このジャラランガ私の本気メンバーの一匹なんだよ!?それなのに互角どころか終始ラビさんのニョロボンが押してた!!本当に凄いよ!!」
「有難う御座います、貴方にそう言って貰えると自信が付きますよ」
「じゃあもう一回やりましょ!?えっと次のポケモンは、あっそうだラビさんの配信見て育てたフラージェスで勝負です!!」
「いや流石にもうしませんよ?時間の問題もありますし」
「えっ~!!?」
ネモからはバトルの続きのお願いをされたのだが流石に断って授業へと何とか戻った。皆でバトルを振り返りながら要点やどうするべきなのか、自分ならばどうしたかを確りと考えながらレポートにするようにと言い含めながらも授業を終えることが出来た。幸いなのがネモだけではなく、クラスの皆から笑顔と拍手を送られて胸を撫で下ろした。
「ラビさん、本日は本当に有難う御座いました!!改めまして、小生心から感謝いたします」
「いえ私も久しぶりにガチで勝ちに行くバトルをしました。というかネモさんマジで強いですね……普通にニョロボンさんと相打ちとか思いませんでしたよ……流石はジャラランガさんです」
最弱の600族などと言われたりするジャラランガだが、腹太鼓ドレインパンチを耐えたのもジャラランガの高い防御力もあったのだろう。そして最後の一撃も半端なかった。改めてソウルビートをされなくて良かったかもしれない。
「それで教鞭をとったご感想は如何でしたかな?」
「何というか矢張りむず痒いですね。私には向いてない感じがします」
「そうですか、ではその事をトップには私の方からお伝えしておきます。今回は無理を言ったにも拘らずお引き受けしてくださって有難う御座いました」
「オモダカさんに宜しくお伝えください。ジムリーダーや四天王にはならないと」
「ハハッ確かにお伝えいたします」