エピローグ 我ら再びかの地を踏む
説明しよう! ガチャの結果が悪いと更新頻度が下がるぞ!
最終日百連とかいう時代の敗北者
◇
『う…………」
ガクン、と力の抜けた秋津茜の身体がブレる。
次の瞬間、ぼふんと煙に包まれたかと思うと慌てて狐の面を付ける少女と大型犬サイズの黒いドラゴンに分離する。
「お、終わった……んですか?」
『だろうよ。フン……何が名を誇れ、だ。貴様に言われずとも俺は俺だ、ノワルリンドなのだ』
「そうですね……」
長く、あまりに長い戦いが終わり、その場にへたり込む者もいれば何をはばかることなく地に寝転がる者もいた。
そんな中。
「サンラク君はどこだぁーっ!」
「なんつーもん呼び出してんのあいつ!?」
「ああっ! 凄い笑顔の魔法少女が猛ダッシュで!!」
「あらあらうちの人ったら、はしゃいじゃって……」
やはりというか、ジークヴルム戦の中で突如として現れた巨大な鋼の鯨に否応にも注目が集まる。
何せあまりに、あまりに巨大なのだ。スカルアヅチが小さく見えるほどといえばその巨大さがわかるだろうか。
新大陸調査船も大概巨大であるが、あの鋼鯨と比べては豪華客船と小舟ほどの差があると言わざるを得ない。
そんな大質量が海底から浮上すれば大津波が起きてもおかしくはないはずなのだが、不自然な動きで流動する海水は津波になることなく多少の波を地に押して寄せるだけであり……どうやらゆっくりとこちらに近づいてくるのかその規格外の巨体がどんどん視界を埋めていく。
「凄い………」
それは規格外質量に関しての感嘆か、それともそんなものを呼び出せるサンラクへの賞賛か。
ぽつりと呟きながら秋津茜も歩き出し……そこで己と、否、ノワルリンドを見据えてつかつかと歩いてくる一人の女を認識した。
「あっ……えと…………エミリアさん?」
「はい、そうです。少しそちらの……ノワルリンドにお話がありまして」
まずい、と直感的に秋津茜は悟った。
いわばこれは屠殺する為に豚を引き取りに来た業者、まな板の上に魚を乗せようとする料理人、断頭台に罪人を引きずる処刑人……!!
あわあわと何か時間を稼ごうとするが、心のどこかでは笑みリアの怒りに正当性を認めているが為に上手く言葉をまとめることが出来ない。
「えと、あの、えっと」
『……何用だ』
「ここが分岐点です………どうか、謝罪を」
『…………』
口出し無用と、ただノワルリンドだけを見つめる笑みリアに秋津茜はもはや言葉すら出ず。
ジークヴルム打倒の達成と、新たな未知の出現に盛り上がるプレイヤー達の中でこの場だけが隔離されたかのような緊張感が満ちる。
そしてノワルリンドの口が開かれ………
『───くだらん、』
◆
『こんにちは! こんにちは! 改めて自己紹介しますね! 私は「勇魚」! イレギュラータイプAIではありますがこのリヴァイアサンの電脳統括担当者に任命されたアンコントロールアーティフィシャルインテリジェンスです! 長らく前リヴァイアサン代理指揮者ジュリウス・シャングリラ様のご命令により深海直下2万マイル地点で回収操作及び定期的なマナ粒子の変動観測をしていましたがこの度バハムートコールを受け取った事で第二オーダーの条件を達成し、3125年5329時間35分23秒ぶりに海上へと浮上しました! 暇な時はずっとドローンで地上の観察をしていましたがメインモニターで朝日を見るのは本当に久しぶりです! ありがとう、本当にありがとう! あ、それでですねこの度は次世代原始人類の文明レベルが7での浮上ですので意図的に開示情報を制限した遺跡モードでの開放となります、ごめんなさい。ですが擬似迷宮化したこのリヴァイアサンを攻略した時、あなた達は新たな……いいえ、はるか遠き叡智を得る事でしょう! あれ? あれれ? 待ってください、貴方は格納鍵インベントリアを保有しているのですか? どうしよう、それを使いこなせるようでしたら文明レベルは4か3になるのですが………』
「まって、とまって、ちょっとまじで」
『え? あ、ごめんなさい! 私ったら……』
酷使した脳に言葉の奔流は効く、キマるって意味じゃなくて有効打的な意味で効く。
「というか問答無用で転移させられたんだけど……もしかして、中かこれ」
『YES! YES! ここはレガシーモード:迷宮改装型リヴァイアサン第一殻層「迎門」です! 貴方にはこれから中央殻層「叡智」への……』
「セーブポイントは? 休める場所は?」
『へ? ああ、人類は不眠不休の連続稼働は出来ないんでしたね。ちょっと待ってください! ええと……はい! これは来訪者第一号という事でスペシャルサービスです! ロケートを網膜に投射しましたのでそれに従ってお二人共……』
「すまんアラバ、俺は先に行くので後から追いついてくれ」
「え、あ? お? いや、今の俺は……」
「すまん! 俺は今激烈に眠い!!」
一緒にいた為に「連れ」と認識されたのか、恐らく共にあのクソでかい宇宙船の内部に転送させられたのだろうアラバを置き去りにして俺は全速力でロケーターの導くラインを駆けていくのだった……
◇◇
『───くだらん、と言いたいところだが……慈悲を与えるもまた強者の務め、それが貴様を満たすならば言ってやろう。ゴメンナサイ』
あまりにもあっさりと、ついでに言えばあまりにも緊張感のない謝罪に笑みリアの目が丸くなる。そして秋津茜はいつだったか自分自身がノワルリンドへと言った言葉を思い出していた……
───謝る事が大事なんです! 例えどれだけ気持ちがこもっていなくても、ゴメンナサイって言った事実が大事なんです!
そもそもそれの元ネタは秋津茜ではなくペンシルゴンであるし、まさか本当にそれを実行するとも思っていなかった秋津茜は、大型犬サイズのドラゴンが物凄い嫌そうな顔で笑みリアを見上げながらカタコトの謝罪をする姿に堪えきれず……
「……ぷっ」
「あ」
先に噴き出したのは笑みリアの方であった。
「ふっ、ふくくくくく………分かりました、ふふふ……謝罪を受け入れます」
「い、いいんですか?」
「ええ、なんだか実家で飼ってる犬を思い出しちゃって……ふふふ、なんだか怒り続けてるのがバカバカしくなってしまいました」
「わんちゃんを飼ってるんですか?」
「えぇ、ラブラドールレトリーバーなんですけど……ふふふふふ、あの仔が壺を割った時とかまさにこんな感じで……あっ、駄目、ツボに入って……ツボ、壺……ふふふふふ!!」
どこか壊れたように笑う姿は所謂、徹夜による精神的な脆弱性の発露にも見える。だが笑みリアは何処かの誰かを彷彿とさせながらも何処か晴れやかで、ひとしきり笑い終えた笑みリアは自然な動きでノワルリンドの頭を撫でて……
『何をするか貴様ァ!』
「あ、つい癖で……」
どこか和らいだ雰囲気に秋津茜も肩の力を抜こうとしたその時だった。
「現着:リリエル=217、次世代原始人類集落にてリヴァイアサン目視確認!」
「現着:ミオン=031、同上」
「現着:偵察小隊「Strawberry」統括機シンシア=014より後続大隊へ、リヴァイアサンの始源汚染観測値は規定値誤差5-15、クラスX武装使用の必要はありません」
ズゴン! とその華奢な姿からは想像もつかないほどの音を立てて三人の少女が降り立った。
あまりに場違いな衣装に身を包んだ彼女達が見た目からは想像もできないほどに重いのか? 否、その原因は彼女達が持つ巨大な箱だろう。
「感知:エルマ=317の反応を観測したよ? MIAじゃなかった?」
「一部肯定:リリエル=217、貴機の推測提唱には当機のKIAを望む偏ったデータを感じます」
「わ、稼働してる」
三人の少女に相対する龍の機鎧。どういう仕掛けか、頭と胴体の装甲を折りたたむように格納した少女……エルマ=317が腕を組んで口を開く。
「シンシア=014、共有回線から後続大隊の確認はできています。他エルマ型も「衣装箪笥」は携行していますね? 当機の破損パーツ提供を希望します」
「……承認、ですがエルマ=317。貴機には事務所へ帰還し現時点での状況に至るまでの記録提出義務が───」
「おっと」
キチキチと、人ならざる動きを見せた機巧の瞳に対してわざとらしく掌を突きつけたエルマ=317……秋津茜の記憶が正しければ「サイナ」と名乗っていた征服人形は秋津茜でさえも思わず「うわ」と呟いてしまうほどのドヤ顔を浮かべて宣言する。
「拒否:当機は可及的速やかにリヴァイアサン艦内にて行動中の契約者と合流しないといけませんので………えぇ、未契約継続中の貴機達と違って、当機は知性的多忙なのです」
「な───」
「リリエル=217………もしやインテリジェンスが足りていないのでは?」
青空にいくつもの影が見える中、秋津茜はなんだかサイナが誰かに似てきてるなぁ……と地面に座り込みながら思うのだった。
アンドリュー・ジッタードール
× 再征服計画の責任者として征服人形を開発した天才
◯ ドルオタ拗らせすぎて箱推ししてたアイドルグループそっくりな人形の大量生産ラインを作ったド変態