龍よ、龍よ! 其の四十七
ガチャピンモード温存&百連温存でフェスに臨む完璧な布陣
光が乱舞し破壊を撒き散らす中、ジークヴルムが課した最後の試練を突破するべくプレイヤー達が集結する。
「つまり、君はジークヴルムの逆鱗の場所を知っていると?」
『はいっ!』
「そうか……」
何故か妙に大人しいペンシルゴンが連れてきた秋津茜なるプレイヤー。元を辿れば彼女がノワルリンドにフラグを立てたからこそ今がある。
だがしかし……何故どこにもノワルリンドの姿がなく、そして何故秋津茜は黒竜に酷似した姿になっているのか。
「あー……ノワルリンドは? 倒されたのか?」
『ノワルリンドさんですか?』
「ああ、というかその姿は……」
『ふん、この我に何か用か』
「…………」
サイガ-100とアーサー・ペンシルゴンはなんだかんだで長い付き合いである。流石に以心伝心、とまではいかないがアイコンタクトでおおよその意思疎通を図ることくらいはできる。
数秒前の純真そうな表情は何処へやら、牙を覗かせる傲岸不遜な表情で腕を組む秋津茜(?)にサイガ-100は頬をひくつかせながら無言で問いかける。
「あー……こちら、忍者の奥義で合体した秋津茜inノワルリンドさんです」
『跪いて驚愕する事を許す』
「あれか? 【旅狼】は人間をやめたやつしか入れないとかそういうルールでも課したのかお前は?」
「いや、頭おかしいのはサンラク君だけ───」
直後、空中から噴炎を羽ばたかせながら着地した艶羽朱雀が排気熱を噴出する。
「……集まってたので来た」
ついでに言えばスカルアヅチで餡ジュ相手に想定外の苦戦を強いられている京極も種族的に人間離れしてると言えばしてるので、ペンシルゴンはそっと瞑目した。
「何かやらかすの? ぶっちゃけ手持ちのリソースが尽きてるんだけど……」
「信じてたぜカッツォ君! 凡庸魚類は伊達じゃないね!」
「うん、素手でも戦ってやるよ。手始めにPKデビューかな?」
「こっちは聖槍使うけど」
「こいつ……!」
それはさておき、とペンシルゴンはコンコンと聖槍で地面を叩きながらも秋津茜と、ジークヴルムを順番に指差す。
「正直私も初耳だったんだけど、ウチの隠し弾ちゃんがジークヴルムの自爆を止める方法を知ってた上になんか合体とかしてるので……私らとしては彼女に大トリを任せようと思ってるんだけどね」
「どちらにせよあの物理防御と無差別レーザーを対処しないとどうしようもないでしょ、シル……じゃない、アージェンアウルが直撃してワンパンで瀕死にされたからね?」
どうやら流石の全米一も完全に不意を打たれた状況による流れ弾の直撃にまでは対処できないらしい。尤も、完全に虚を突かれた状況で認識自体はしてる辺り流石としか言いようがないが。
「レーザーは見た限りランダムだ、祈るしかない。だがあの防御障壁に関しては結構穴が多い印象かな」
「カローシスか」
「うん、ちょっとウチのを連れてアタックしてみたけど……多分、あの防御障壁はジークヴルムが視認することが前提だ。通る時と通らない時があった」
「信ぴょう性は?」
「五分ちょっとの検証だけどクラン外のプレイヤーも含めた数百人の同時検証だぜ? 賭け金を乗せるくらいの信用はしてほしいね」
ただし物理障壁の防御力はそれなりの火力ですら防ぐ、とカローシスUQは掠れた笑みを浮かべながら呟く。
「どれくらいだ?」
「切り札の【アポロン・バースト】でヒビ一つ入らない」
「【バイオレンス・サンダー】クラスで完全防御……突破は諦めた方が賢明か」
簡単な情報交換が終わり、それを横から聞いていたペンシルゴンも含めた各クランリーダー達による作戦方針が決定する。
「結論から言えば秋津茜ちゃんが気づかれないよう全力でジークヴルムの気をひく、以上!!」
「この消耗しきった状況で言ってくれる……カローシス、手持ちは?」
「切り札は使い切ったけど、鬼札はある」
「奇遇だな、私もだ……おい、そっちは? 妹が使い物にならんことは把握している」
「ルストちゃん?」
「あと五分」
「モルド君?」
「そもそも支援職です……まぁ、ギリギリ」
「カッツォ君?」
「置物より多少マシ程度」
「京極ちゃんはまぁ見た限りまだお城で暴れてるっぽい、サンラク君は……」
「発見:当機の契約者より伝言があります」
───一発限りだが、派手な花火がある
「……いいねぇ、ウチの鉄砲玉は勝手に雷管に火薬を詰めて暴発してくれるから放っておいても動いてくれる」
「存在が危険すぎるだろうそれ」
「でも有効射撃七割くらいだから……」
そして、サイナが齎したサンラクからの伝言は今の状況にこれ以上なく適合したものでもある。
ジークヴルム最期の試練「覇滅炉心」、発動まで残り……あと五分。
◇
「聞け! 今やジークヴルムは前線拠点そのものを巻き込んで自爆しようとしている! ここまで来ては止めねば拠点が消し飛ぶ!!」
戦場に響くサイガ-100の声。
「最上位、上位、下位! それぞれ今使える魔法の種類で3チームに分ける! 最上位魔法が残ってるやつはこっちだ!!」
戦場に響くカローシスUQの声。
「ブロッケントリードはこの際無視! 全戦力をジークヴルムに集中させるよーっ!!」
戦場に響くアーサー・ペンシルゴンの声。
異なる指示、されど皆一様に狙うはジークヴルム。時間が経過するほどに無差別に放たれるレーザーの規模も肥大化する中、ここが踏ん張りどころであると戦闘職のプレイヤー達は残り少ないリソースを掴んで立ち上がる。
生産職のプレイヤー達もまた、己の手練手管をフル稼働させてアシストに回り、誰も彼もがジークヴルムを見据える。
「攻撃は無差別かつランダム! 運ゲーだから被弾しても諦めろ!! 奴は視覚認識で防御してる! 不意を突いて確実にダメージを重ねていくぞ……魔法職! 撃てぇーっ!!」
決戦フェーズ開始時と比べても明らかに少ない、それでもかき集められた魔法が朝の空を色とりどりに染める。
『ぬぅぅん……!』
それに対し、ジークヴルムを守るように展開された黄金の障壁が魔法の悉くを受け止め消し去る。
「物理班! 叩き込め!!」
だがその隙に肉薄した戦士達がジークヴルムの死角から武器を叩きつける。
もはや内側から自身を傷つけるジークヴルムの外殻は当初の堅牢さを保持していない。確かに武器が食い込む感触にプレイヤー達が歓声を上げ……次の瞬間、黄金の全身から放たれた衝撃波に吹き飛ばされる。
「はぁ!? 不意打ち!?」
「違う! 苦悶の動作が前兆だ!!」
「足元からじゃあ見えないんだよなぁ!!」
『ぐ、ぬ………まだだ、まだ保て我が身魂……!!』
「押せ押せ押せーっ!!」
『ぐ、くはは、来るがいい……だが、死に足掻くくらいは……見逃すがいい!!』
遠慮容赦なく薙ぎ払われた尾によって人間がボウリングのピンが如く吹き飛ぶ。さらに追い討つようにレーザーが乱舞し……
◇◇
「ぐ……む、無念……!!」
「風水導師……侮り難し……!」
「ごめん笑みリー……」
「……さて、と」
今ここに、骸の城に新たな城主。
◆
「───あぁ、ここだ。この座標だ」
「一体何を狙っているんだ? ただの海岸だぞ」
「なに、奴さんはどこだろうと呼べるって訳じゃないらしくてな……呼ぶための「場所」がある」
今ここに、空へ掲げる龍喚びの笛。
───
そして、戦場とは離れた二つの場所で、戦場の結末を左右するアクションが起こされた。
───
勇魚「やったーーーーー!!!!」