龍よ、龍よ! 其の四十二
やっと届いたGE3に人生吸われててヤバい。ルルすこれ
◆
「おいコラァ! 覚悟決めとけジークヴルムァ!! 見せてやるよ人の力をなぁ!!」
『ほう? ならば見せるがいい、貴様らの輝きをっ!!!』
ブレス! 狙いは俺たちじゃねぇ……っ!? くっ、そうかブリュバス!!
「ふっ、ふざけんな幾らしたと思ってんだ!?」
『フハハハハ!! さぁどうする、射手よ!!』
問いかけるように、放たれた黄金の光は───
◇
「───」
あるいは、一分前から「攻撃が来る」と知らされていたとしても。
「孤島出身者がその程度でビビるかよ……!!」
六式魔導弩砲ではなく、自身の武器たる魔導弓を限界まで引き絞り……放つ。それと同時に己の武器を投げ捨て「鯱光」の射座へと跳び乗ったヤシロバードは一瞬にして限界まで集中力を研ぎ澄ます。
白む空を切り裂く黄金の光に真正面から僅かにズラした軌道で魔力の矢が激突する。その瞬間、魔力の矢に込められた魔法【フレアロー・エクスプロード】が発動。
魔力同士を干渉させ、相手の攻撃に影響を与える魔法はしかして隔絶しきった出力差に殆ど効果なく不発したかに思われた。
「っ」
ブリュバスの船体を光が貫く。だがその軌道は先んじて放たれたフレアロー・エクスプロードによってほんの僅か、本当に僅かに軌道をずらされていた。
「信じてたよブリュバス、修理代は僕もカンパしよう───!!」
身体の半分を光に焼かれ、されどヤシロバードの目は唯一つの標的を射抜く。
船体が軋みをあげ炎上し、されど船大工渾身の征海船はまだ戦えるのだと軋む。
「……ここ」
体力の九割が消し飛び、システム的に軽減されているにせよ身体の半分を焼かれたにも関わらず、1ミリのブレなく狙いを定めるヤシロバードと「鯱光」。
まるで、この程度の痛みなど考慮に値しないと言わんばかりの集中力は今極点に達し……
「───あぁ、満点だ」
放たれて。
◆
『ガッ………!!?!?』
放たれた光に対する返答は、迷いないラインを描いてカウンターで放たれた矢が言葉よりもなお雄弁にヤシロバードの意思を伝えていた。
『なんと……素晴らしい、素晴らしい!!!』
砕けた右上の角が宙を舞って、粒子と消える。遠目に見える炎上はブリュバスの限界とヤシロバードの脱落を如実に示していて、それでも奴は最後の最後にやりやがった。
戦場から黄金が一つ消える、角と分身が連動していると言うのは本当らしいな。
「ぶっ………飛ばせぇぇぇぇ!!」
誰が叫んだ? 俺だわ。明確なスコアに開拓者達のボルテージがブーストする。
残り四本! ここまでてめーの動きを見続けてりゃ嫌でもわかる、あの忌々しいスキル無効も魔法無効も角の数が肝なんだろう!!
「レイ氏! アルマゲドンは!!」
「もっと凄いのが……あります!」
「なお良し! エムルっ!! 「とっておき」だ!!」
「は! い! なぁあーっ!!」
懐かしい、そういえばリュカオーンの影と戦った時もこんな感じで俺、レイ氏、エムルで同時に動き出してたっけか。
「見えてんぞ変態! 「魔力」を寄越せ!! 【超過機構】!!」
「これがアタシのとっておき! 【クラスター・マギストーム】ですわーっ!!」
「───我が黒の半身を謳う」
◆◆
ああそうだとも、フルダイブVRってのは身も蓋もなく突き詰めてしまえば脳みそに電波を流して機械仕掛けの夢を見るシステムだ。
だから、誰かに見られていたのならばそれはこちらもまた認識できる。電話を一方的に繋げる事は出来ない、送信すれば必ず受信する者が発生する。
だから、テンションが上がりまくって脳みそが燃えるほどに動いてる今の俺は何となく自分が視線を浴びていることがわかる。
さっきからずぅぅーーっと俺から逸れない妙にねちっこい視線もなぁ!!
ガンガンにキマった百足式8-0.5の毒で強化された膂力で斧槍と円盾を両立、音声認識で起動した花開く鏡盾を視線の方向へと掲げる。
「───」
声なんて聞こえない、だが確かにプレイヤー達の間を縫って飛んできた魔法は冥王の鏡盾へと吸い込まれるように激突し……魔力を取り込んだ冥王の鏡がその真の力を解放する。
「吸転換!!」
蒼炎を纏って第一段階、百足式8-0.5から手を離し、僅かに浮かんだ斧槍が落ちるよりも先に下に回した手の甲へと載せ、もう一度上へと跳ね上げる。
一瞬開いた右手で胸を叩き、封雷の撃鉄・災を起動。
『始源を纏い、我が前に立つ蛮勇は評価してやろう……だが!』
「っ………夢見る先は深淵源、傲慢故に孤高たる黒き神」
そうさ、詠唱を止める必要はない。エムルの放った魔力の雨霰で体表を削られながらもその目はレイ氏ただ一人を睨み付け、口の端からは炎にも似たエネルギーが漏れ溢れる。
「……ふぅー……………見ろよ、夜明けだ」
百足式8-0.5を地に刺し、掲げた境光の宝剣へと暁の光が差し込む。
瞬間、赤い曲剣たる刀身が崩れるように消失。代わりに夜の間は柄尻であった場所からパキパキと碧い直剣の刃が生み出される。
「俺から目をそらしていていいのかジークヴルム? これから俺は……臨界を超える」
そうかい、眼中にないと。なら……後悔するタイミングはもう無いぜ!!
「臨界速!!!」
◆+
一歩目、地上から一瞬で加速した俺の身体はスキルのアシストがなければ一瞬で全てが引き伸ばされて見失うような高速の世界に晒される。
振り抜いた境光の宝剣がジークヴルムの角に叩きつけられ、それ以上の速度で俺の身体がジークヴルムから離れて行く。
◇
サイガ-100は最初、サンラクが転移魔法を使ったのだと錯覚した。そして「何故?」と呟くよりも早く最初の音が響く。
◆++
初手の攻撃を加えた時点で既に身体は次に備えて動いている。
二歩目は天地逆さに空を踏む、着地する際の完全真逆方向への加速による相殺とは違う、言うなれば壁を跳ねるスーパーボールのような極めて鋭角なターンで離れつつある俺の身体を無理やりジークヴルムの元へとカムバックさせる。
おひさ、0.5秒ぶり? これつまらないものだけど「タチキリワカチ」どうぞ。
◇◇
ルストはその光景を目撃していた。最前線よりも少しだけ離れた後方にいたからこそ、俯瞰的にそれが見えた。
何か地上から弾丸のようなものが放たれ、何故か何もない空中で跳ね返って……
◆+++
ヴァッシュの言う通りだったな、素材の性質を知ることこそ甦機装を使い熟すことに繋がるのだと。
百足式8-0.5の強化方式は毒の摂取だ、つまり手を離せば即解除……ではなく、体内に注入された毒が尽きた時が強化の切れ目だ。
だから間に合う、体内に残った強化の残滓を掻き集めて、この一瞬を駆け抜ける。三発目を叩き込んだ……しまった、手から境光の宝剣がすっぽ抜けた。ああでもさすが俺、もう手がウィンドウを動かしてら。
◇◇◇
ディープスローターは笑いが止まらなかった。成る程、双方向の認識を鑑みれば不可能ではないだろうが、まさか己の存在を看破するとは!!
やはりサンラクだ、サンラクしかいない。
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インベントリアから武器が転送される時間すらもがひどく遅く感じる。ああもう我慢ならない、片方だけ展開完了した傑剣への憧刃を三度の攻撃を加えた角に叩きつける。手応え、次の瞬間には身体が吹っ飛ばされているので見えないが感触で分かる。
◇◇◇◇
サイガ-0はサンラクを信じて詠唱を続ける中で、確かにそれを見た。
「玉座は唯一つ、理もまた唯一つ。即ち我が右の半身は黒の………理」
思わず詠唱を間違えかけた程に鮮烈な、空に描かれた残光の「星」───
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それはまさしく斬り結ぶ五芒星、臨界速と真界観測眼……そして最高潮のテンションの三つが揃った時、初めて使うことができる超超高速機動……今回は生存度外視の特攻バージョン、喰らえ鎧袖一触の物欲スラッシュ……!!!
ようやっと展開完了したもう一振りを渾身の力で叩きつける。成分結晶落とせオラァーッ!!
◇◇◇◇◇
プレイヤー達は見た、NPCは見た。
「ゔるぇっ」
何か奇妙な声を上げて、五芒星を空に描いて吹き飛んでいった小さな影と。
『なん………!!!?』
正真正銘驚愕し絶句するジークヴルムの角、それが二本砕け散る様を。
そして、
『規定速度観測、条件達成』
『称号【最大速度】を獲得しました』
前人未踏の空席が埋まる瞬間を。
なんか下手くそが投げたブーメランみたいな挙動で吹き飛んでいく変態
臨界速五歩目+百足式の強化+冥王の鏡盾による強化+過剰伝達のセルフドーピングで条件達成、屋内でやると六割の確率で壁か床のシミになる
ちなみに旭光刃の効果は「夜光刃モード時に浴びた月光量に応じて攻撃部位に追加ダメージを与える」というもの、斬ると爆ぜる