龍よ、龍よ! 其の四十一
発狂しながら書いたので当然推敲はしていない
◆
やってしまいましたなぁ! くくく、やっちまったなぁ!!
「見ろよ、ご丁寧に勢力別でマーカーが表示されたぞ」
「楽しそうだな」
「そりゃ当然、PvPはオンゲの華だ。そしてクリア条件がクソ程多い勢力戦ってのは慣れると楽しいんだなこれが……!!」
どうしたどうした、背中を狙いたいなら止めないぜ? あいにく職業上の理由でこちらからのキルは控えていくが……いいね、テンションが上がっていく。
「賦活醒はどこまで適用できる? 検証が必要だ……空が白んできた、そろそろか……間に合うか? いけるな、どうにかして飛ばせば……」
「お、おい?」
「独り言だ、言語化すると思考がまとまるんだよ……チッ、火力と利便性の天秤がマジでクソだな。吸収? いやキャパ的にマゾった方がいいか? 流石にここで逝ったら笑えない」
「妙な単語で独り言を言うな! 無性に気になってくるだろうが!!」
いや知らんよ、いちいちロジカルに物事考えてるわけじゃねーんだ。要点だけ固定できればあとはニュアンスで繋げていけるんだよ。
「大詰めだ、さっきぶっ叩いてみたが何本か感触が怪しい角があった。右三本のうち上から二本と、左二本のうち下の一本だ」
「言われたところで狙えるとは思えないが……」
「いいや、それは違う。おっ、ルスト! 丁度いい!」
「……何?」
「伝言ゲームだ、向こうにあるブリュバスで射撃支援してるやつ……あぁ、俺の知り合いな? そいつに「右上中、左下」と伝えてきてくれ。朱雀も使っていこう」
「……良いけど、勝算あるの?」
「あるとも言えるしないとも言える。ただ一つだけ言えるのは……」
ここで奴の角をバッキバキにへし折ってやるという事さ。それに、「勝算」という点で言えばそれは俺のことじゃあない。
ユニークシナリオは誰かの物語、誰も彼もがあの金ピカドラゴンのステージに上がったエキストラだとしても……誰も彼もが主人公な群像劇ってものがある。語り手は誰だ? 少なくとも俺たちは別口の脇役なのさ。
「なぁ、そうだろう………………あー、レイ氏だよね?」
「え? は、はい」
「レイ氏を喰ってステータスを簒奪した捕食生物とかではなく?」
「私の妹をしれっと亡き者にするな」
「え、あ…………これ、あの、そういう防具……です」
わぁ、あの兜瞬きしてる上にねちょねちょしてるぅ(ドン引き)
◇
秋津茜という人物は、ジョゼットのように心の底から役になりきってゲームをプレイしない。
秋津茜という少女は、サンラクのようにゲームであるからこその立ち振る舞いを意識する事はない。
秋津茜というプレイヤーは、ディープスローターのように所詮はグラフィックが数字の羅列で動いているだけと割り切ることもない。
「………」
では秋津茜とは如何なるゲーマーなるや?
「ノワルリンドさん」
『何だ!!』
「これはとても大切なお話で……これから起きることも、とても大切な事なんだと思います」
『ぬぅ?』
その言葉に脚色はない。秋津茜の心という海から浮上した言葉を飾る事なく口にして、真摯な思いを竜へと伝える。
「ノワルリンドさんはノワルリンドさんです、ジークヴルムさんを超えるために戦って……ジークヴルムさんに憧れて、追いかけて……今、すぐ近くまで来ています」
『それは……っ! 今、言わねばならんことか!!』
「はい」
秋津茜はロールプレイを行わない、秋津茜はNPCを侮らない。現実に生きる人間とは明確に異なる虚構であることを理解した上で、それでも現実と何ら変わりのない言葉を紡ぐ。
故にこそ、そのスタイルはシャングリラ・フロンティアというゲーム……否、「システム」においてこの上ない価値を持つ。
「それでも……前だけを、上だけを向いて生きていくことは出来ないんです。ノワルリンドさんは過去と向き合わなきゃダメなんです」
『………』
ノワルリンドの背、即ち他のプレイヤー達と比べても高い視点を持つからこそ秋津茜には見えていた。それは単なる錯覚か、シャンフロの規格外のグラフィックが示す真実か。
「………」
「………」
遠くスカルアヅチ、そこからゆっくりと確実にノワルリンドへと歩みを進める一団の先頭。
一人の女性と確かに目があったと秋津茜は少しだけ力を込めて下唇を噛む。
『あれは……ふん、この我を弑する者だとでも?』
「はい、そして……きっと、ペンシルゴンさんとかがしっちゃかめっちゃかにしても、それでも諦めないなら……きっと、それはノワルリンドさんがジークヴルムさんを越えようとする想いと、本質は一緒なんです」
秋津茜は諦めることが嫌いだ。
秋津茜は諦めない者が好きだ。
秋津茜は諦めない者同士の激突は、絶対に決着をつけなければならないと考えている。
だってそうだろう、
誰かが進み、誰かが止まらなければ……伸ばした手は、永遠に憧れへと届かないのだから。
『あの程度、我が息吹にて───』
「ううん、ノワルリンドさんはジークヴルムさんを。あの人たちは……うん、あの人たちは、私が何とかします」
『何だと……おい!』
ひょい、と飛び降りた秋津茜にノワルリンドが吠えるように呼びかける。しかし狐面の少女は振り返ることなく、言葉を続ける。
「私は、ノワルリンドさんを応援してます。ノワルリンドさんには、ジークヴルムさんだけを見て前に進んでいてほしい。だから……私はそのお手伝いをするんです、だから」
振り返りながら、秋津茜は少しだけ狐の面をずらす。顔の半分だけを露出してにっ、と笑みの形を作ってノワルリンドに笑いかける。
「私に任せてくださいっ! 私はノワルリンドさんの臣下? 下僕? ですから! 代理としてケリ? ケジメ? をつけて来ます!!」
『秋津茜、貴様……』
『どうしたノワルリンド!我が眼前で惚ける愚かをその身で贖うか! その名を背負いながら!!』
『ぐぬぉあ!? おのれェ……!!』
空を灼くブレスがノワルリンドに命中し、呻きながらも黒竜は真っ直ぐにジークヴルムを睨みつける。
それでいい、と秋津茜は静かに前を向く。結局は自分のやりたいままに動く自分はとんだ身勝手だな、などと考えながらも秋津茜はノワルリンドの咎を代理で背負って反ノワルリンド派……笑みリアと【天ぷら騎士団】、生産職達による複数の混合パーティへと向かっていく。
ああ、そういえばこんな時彼らはなんと言うのだろう。
秋津茜の憧れ、秋津茜が持っていないモノを輝かせてこのシャングリラ・フロンティアを楽しむ人たちなら、なんて言うのだろうか?
秋津茜が持っていない慎重さで着実な積み重ねを続けるオイカッツォなら。
秋津茜が持っていない智謀でプレイヤーのみならずNPCすらも掻き回してしまうアーサー・ペンシルゴンなら。
秋津茜が持っていない練磨でレコードホルダーなんてすごい称号を持つに至ったサイガ-0なら。
秋津茜が持っていない技術で巧みに刀を操ってPKの烙印を恐れることなく戦う京極なら。
秋津茜が持っていない領域で見たこともない三次元的機動のロボ捌きを見せるルストなら。
秋津茜が持っていない視点でルストを助け、完全に息を合わせて火力以上の貢献をするモルドなら。
秋津茜が持っていない大胆さで破天荒に世界を駆け抜けるサンラクなら。
自分と違うから、自分にないものを持っている人はすべからく尊敬すべき人だ。だから追いかけたくなる、目指したくなる。そして、諦めるのは何もかもが終わった後でいい。
それまでは、手を伸ばして走りたいから。
「話には聞いていましたが……貴女が、ノワルリンドと明確に協力していると言う……」
「はいっ、秋津茜と言います!!」
ああそうだ、少なくともサンラクならこうするんじゃないだろうか?
「今からあなた達をブッ飛ばします!!」
秋津茜にとって、挑む事こそが人生なのだから。
秋津茜は割と自分の中で結論が出た時点で勝手に走り出すけど光属性でリアルラックカンストなのでなんやかんや上手くいくタイプ
本来なら周りを引き摺り引っ張っていくタイプだけど……ほら、旅狼はどいつもこいつも暴走特急だから……