龍よ、龍よ! 其の四十
年内に!あと十話で! 終わらせるぅ!? ヒャホホーイ!!(発狂)
『対城戦!』
『勝利条件1:相手建造物のリソース値を削りきる』
『勝利条件2:相手建造物の所有者が降参する』
『勝利条件3:相手建造物の所有者を撃破する』
『装骨天守スカルアヅチ城主:餡ジュ』
『一夜城サソリスノマタ城主:京極』
『両城主と同クラン及び同パーティのプレイヤーは相手勢力からのキルによる通常のPKペナルティが免除されます』
『いざ尋常に……勝負!!』
◇
二十四回目の宣戦布告が受理されたことで、ようやっと自身の出番が来た京極は背筋をぐっと伸ばしながら一夜城サソリスノマタ……とは名ばかりの、かろうじて人が数人すし詰めに入ることが出来る程度の掘っ建て小屋から外へと出た。
「やぁ、行くのかね?」
「え? あー、ライブラリの。えぇ、合図が来ましたから」
と、京極を見送りに来たのかそれとも別の意図があってか、サソリスノマタの「建築」に協力した【ライブラリ】の長たるキョージュに京極は居住まいを正して返答する。
「我々の検証が役に立ったようで何よりだよ」
「思いっきり悪用してますけどね……いいんですか?」
「ふふふ、老人とて年甲斐もなくはしゃぎたい時があるというものだよ」
そう(見た目的に)可愛らしく微笑んだキョージュを見つつも、果たして今は亡き祖父にもそんな時があったのだろうかと少しだけ想いを馳せる。
そして、祖父から教わった剣をゲームとはいえこんなことに使って良いのだろうか、と…………これに関して考えると「幕末」もアウトになるので京極は思考を破棄した。
「───あぁ、足止めしてしまったようだ。いや何、クラン連盟を組んだ場合も影響されることを確認に来ただけなのでね、存分に剣を振るうといい」
「えと……では失礼します」
頭を一つ下げ、駆け出した京極は武器を手元に呼び出しつつも、にまりと凶悪な笑みを浮かべる。
「合法合法、天がそうしろって言ったんだから、僕悪くない……ってね」
黒刀「研竜剛角」を構えながら、京極はフリーで開け放たれているスカルアヅチへといとも容易く到達、侵入する。
何せ、スカルアヅチとサソリスノマタは……徒歩一分程度の距離なのだから。
◇◇
「……対城、戦? えっ、何それ何それ! 聞いてないんだけど笑みリー!!」
天守閣の中、友人からスカルアヅチを任された風水導師は混乱の極みにあった。
対城戦。身に覚えもなければ心当たりもない、つまり心身ともに未知の喧嘩をふっかけられたに等しいのだから。
餡ジュにも言い分はある、不慣れなスカルアヅチの制御の中で、いくつもの制御ウィンドウに混じって「宣戦布告」の承認ウィンドウが何度も何度も何度も……覚えてる限りで二十回近く送られて来たのだ。
「うう……事故なの、事故なのよー……流れ作業で拒否ってたら、押しミスしちゃったのよー……」
誰に言うでもなく弁解しつつも、これが不味いと言うことは分かる。
対城戦の項目をシステムで調べた限り……仮に敗北した場合、まず間違いなく決戦フェーズにおけるスカルアヅチからの支援が止まる事になる。
「京極……京極……あっ、PKの京極!!」
餡ジュはその名前に聞き覚えがあった、確か悪名高い【阿修羅会】にも所属していた現役のPKの名だ。
現在は別のクランに属している筈だったが……何故そんなプレイヤーがスカルアヅチに喧嘩を売っているのか。
「っていうか、サソリスノマタって何?」
スノマタはまだ分からなくもないが何故蠍、首を傾げつつもサソリスノマタなる敵建造物がどこにあるのかと専用マップを開いても何故かどこにも表示がない。
まさか前線拠点でない場所では、と表示範囲をティアプレーテンまで広げても何故か見つからない。
「なんなのよ……っ、もう!」
「餡ジュちゃん!」
「何!?」
「なんかケモミミのやべー女がスカルアヅチに乗り込んで来た! あれ京極って奴じゃね!?」
「ほぎゃあ!!?」
餡ジュの悲鳴は、敵の大将がそのまんま突っ込んで来たという事実と……サソリスノマタなる謎の建造物が凄まじく小さな光点で巨大な光点の至近にあったことの二重の驚愕分の大きさであった。
◇?◇
説明しよう! 一夜城サソリスノマタとは、クラン【ライブラリ】に所属する大工職によって建造された検証用建造物である!!
検証内容は単純明快! 「リソース値で同等であるならば規模に数倍ほどのハンデを背負っていても宣戦布告は可能であるのか」という試そうにも生半可な建造物では比較にならない考察である!!
装骨天守スカルアヅチはその外郭に大量のモンスター素材を用いており、そのリソース値は実に数万という規格外の数値を誇る。
であればそれに対抗するだけの建造物などどう用意すればいいのか……その回答こそが一夜城サソリスノマタ!!
「タイルを貼るように大量のレア宝石や水晶群蠍のレア素材を使いまくってリソース値稼げばいいんじゃね?」
というあまりに非現実的な理論を現実にした奇天烈な内装を持つ、装骨天守スカルアヅチのテリトリーすれすれの位置に建てられた表向きは地味な掘っ建て小屋である!!
用いられた素材はその全てが高レア高リソースの宝石、鉱石、水晶であるがその全ては小屋の内装を彩る事に費やされているのだ!!
余談だが材料提供者が調達に要した挑戦回数は実に五十八回! 素材を受け取ったライブラリのプレイヤーは後に、
「人とはあそこまで動きから人間味を消せるのか」
と語ったという……
◇
サソリスノマタに攻撃機能はない。
サソリスノマタに防衛機能はほぼない。
だがサソリスノマタには京極がいる、それだけで充分なのだ。
「巨大クランを作ったのが仇になったね」
「ぐはぁっ!」
今宵の黒刀「研竜剛角」は血を求めて飢えている。そう言わんばかりの凶行を繰り返しながら京極は前へ上へと進んでいた。
「………」
幕末心得その一、常に奇襲を警戒するのではなく「奇襲の機」を読んで動くこと。
「オブジェの陰に隠れて奇襲か、昔の私ならやられていたね」
「な、何故バレ……!?」
「くっ、そのまま動きを止めろ! 諸共に殺るが許せよ!!」
幕末心得その二、一対多ではなく常に一対一の連戦を心得ること
「ぐ、こ……」
「喉を一突き……!?」
「この程度で驚かれてもなぁ……はい奇襲お疲れ様」
決着の必要はない、奇襲者との戦いが終わるまで戦闘に復帰できなければそれでいい。それ故に喉を貫くという精神的な「揺らし」をかける事で単純なダメージ以上の効果でその動きを止めたのだ。
二閃、奇襲者を斬り伏せ、そのまま喉を抑えるもう一人にもトドメを刺す。ヒュン、と血がついているわけではないが黒刀を払い、鞘へと納めて上へと向かう。
「さて……いくら足止めとはいえ、私が倒されたら元も子もないわけだし慎重にいかなきゃならない、のだけどね……」
幕末心得その三、無謀と挑戦の先にこそベスト・オブ・天誅がある!!
「せっかくたんまりと回復アイテムを持ち込んできたんだ、死ぬまでやろう」
つまるところ、幕末色に汚染された人間というものはどうあがいても鉄砲玉気質になってしまうのだった。
◇◇
「対城戦……直接スカルアヅチを叩いてノワルリンド戦へのバフを切る……いいえ、彼女なら別途も考えていそうですね」
笑みリア自身にも想定外であるとはいえ、親友には悪いことをしたとスカルアヅチの全権を押し付けてきた風水導師に後でどう謝罪したものか、と考えながらも笑みリアはひとつだけ息を吐いて思考を切り替える。
「天首領さん、無理なお願いを聞いて貰って、ありがとうございます」
「あはは、構わないよ。【旅狼】……まー多分あそこと連盟を組んでるクランは軒並みあっち側なんだろうけど、オレ個人としてはこういうゲバゲバした構図は嫌いじゃねー。どっちが「正しい」にせよ、敵がいないんじゃ締まりがないしな!」
状況から言えば、決戦フェーズの流れは殆どジークヴルム撃破に傾いていると言っていい、特に聖女の肩入れが入った時点で致命的だった。
だがそれでも、「ノワルリンドを狙ったらペナルティなんて道理もないだろ」と笑みリアと共に戦うことを承諾してくれた者達がいる。トップクランが軒並み敵に回ったとしても、それに負けないだけの数がノワルリンドの打倒を掲げる笑みリアに同意してくれている。
であれば、今やシャンフロ最大規模クランとなった【天ぷら騎士団】のリーダーが言った通りだろう。
もはやどちらが正しくてどちらが間違っているか、などどうでもいいのだ。互いに成し遂げたいことがあり、その為に持ちうる手札のありったけを叩きつけるのだ。
「行きましょう」
朝日は近く、夜月は遠く。
黄金と漆黒とを巡る人の戦いはクライマックスへと近づいていた。
天首領は平成最高クラスの名ネーミングだと思ってる今日この頃
鉛筆「ちょっとスカルアヅチに対抗できるくらいリソースある素材かき集めてきて、一日で」
サンラク「ふぁい!?」