龍よ、龍よ! 其の三十九
えっ!? 今日はパンゲア・ムーンでバラギアラ十九体のコストを踏み倒してもいいのか!?
フィンブル落ちないので更新です
◆
ノースキル縛り自体は別にいい。問題はこれがソロじゃなくてレイド戦である事だ。
ヘイトがあっちこっちに飛ぶもんだからジークヴルムが「俺」を見ているタイミングが掴みづらい。
「月は……よし、まだ保つ」
金晶戦衣、各部位にはデフォルトで「月光を浴びる事でMPを蓄積する」機能が備わっている。
瑠璃天の星外套はセットした魔法の使用にしか蓄積MPを使用できない縛りがあるが、こちらはその縛りがないので百足式8-0.5のコストとして使うことが出来る。
そして月光を浴びてさえいれば戦闘中でも常時MP補填が出来る、これがステータスMPが100以下の俺が今に至るまで百足式8-0.5の運用を続けていられる理由だ。
「クッソ硬ぇ……サイガ姉! 他の分身の様子は!?」
「本体よりは攻撃の通りが良いらしいが、時間が時間だ……回復のために離脱した連中が戻ったとしても火力が足りん」
「やっぱ色竜と同時戦闘は設計ミスだろ……!!」
おのれ天地 律! シャンフロまでをもクソゲーにするつもりか!?
だがさせんぞ、それなりに愛着のあるゲームが寂れ廃れ消えていく様を見るのはクソゲーだとしても何気に辛いんだ。意地でも勝ってやるさ……!!
その決意に同意するかのように夜空を割いて飛ぶ一筋の光が、これまで放たれた三発同様1ミリのズレなくジークヴルムの頭部、さらに言えば角に命中した。
『ぬぐぅ! またしてもか……!』
「……凄まじい命中率だな」
「ま、「密林抜き」ならそれくらいやってくれるさ……!」
何せ漂流物のマスケットですらヘッドショットを余裕でかましてくる奴だ、艦載設備なんて使わせたら当然こうなるさ……!!
◇
「んー……今のは四十点かな、同じ角を狙ったんだけどなぁ」
ポツリ、と。自身の射撃に対して赤点の評を下したヤシロバードは射座に背を預けながら「弩砲」に新たな矢が生成されるのを確認しつつ、彼方で暴れ回る黄金の龍王を油断なく視界に収める。
「いやー……いい船だブリュバス、名前はよく分からないけど主砲がバリスタってところが渋い」
征海船「ブリュバス」は当たり前だが水上での戦闘を前提として建造されている。実際真正面から体当たりするための武装衝角やすれ違う事を想定した船体左右の「刃翼」など、明らかに近接戦闘を想定した構造ではあるものの、戦う船として当たり前とも言える「主砲」もまた搭載されている。
本来であれば単なる弩になるはずであった甲板上の中央に設置されたそれは、「出資者」が一都市を買収できかねないほどの量のラピステリア星晶体を提供した事で、単なる運動エネルギーの射出器以上の改造が施された。
───その名も、六式魔導弩砲『鯱光』。
ラピステリア星晶体からの魔力供給によって矢を形成し、凄まじい威力で射出する艦載用大出力魔導弓とでも言うべき代物である。
……余談だがバリスタ、までは製作者たるノーマンの命名で「鯱光」の名はサンラクの命名である。
「いやー、タンクが多いと当てやすくて良いね」
「な、なんでこんなところに船が……? これ、あんたのなのか?」
「俺たちでも操作できる!?」
と、しばらく前のヤシロバードがそうしていたように甲板上へと乗り込んできたプレイヤー達が船員たるヤシロバードへと口々に問いかける。
「あー、これは別の人の所有物だよ。パーティメンバーだから僕は使えてるけど、無関係のプレイヤーが乗り続けてると不法侵入でカルマ値上がるらしいから気をつけた方がいいよ?」
「マジっ!?」
「やっべ。あ、援護頑張ってください!!」
「どもども〜」
嘘である。そもそもカルマ値はマスクデータであって実際に上がっているかどうかなどこの場でわかるはずもない。だが自信満々に言い切られては人も騙されるというもの。
エールを遠慮なく受け取りながらも、ヤシロバードは再装填が完了したバリスタをハンドルで微調整しながら目を細める。
「どうせなら一本くらいは持っていきたいところ……だ………ねっ!」
放たれた矢は、戦場を駆け抜けて……
◆
戦場を駆け抜けて、ジークヴルムの膝を踏み台にさらに上へと駆け上がる。気軽に空中歩行している軽戦士共が少しだけ羨ましいが、素のスペックが底上げされている以上は下手に身体強化するとそのままぶっ飛ばされかねない。いやでも空中歩行は欲しいなぁ……
『我が背に乗り込まんとするか! だが甘いわっ!!』
「ぐわぁ!?」
「ドラゴンライド失敗した!」
セルフでクライミングする俺よりも早くジークヴルムの背にたどり着いたプレイヤー達が、翼のはためきによって吹き飛ばされている。
だがこちとら巨大生物相手のよじ登りは死ぬ程やり込んできたんだ、俺を引き剥がしたいならブレイクダンスでも踊るんだな!!
「よう」
『貴様……!!』
「斧のように断ぁつ!!」
ガィン!! と百足式8-0.5の紫刃が弾かれる。まぁ一発で折れるなんて期待は少ししかしていないが……だが、しかと確認したぞ。
「ちょっと欠けたなぁ……!?」
『ぬぅあ!!』
「うおっ!」
空中! 投げ出され! 身を捻り! 着地ィ!!
「やっぱちまちま削るよか、意地でも近づいて殴った方が折りやすいよなぁ……」
だが何度も同じ手が通じるとも思えない。それと戦場が密集し過ぎているが故に、いざって時は隊列を組めるタンクと違って、前衛火力職は衝突事故の危険性を常に背負っている。
いっそジークヴルムのブレスか何かで俺以外一掃されてくれないものか、とか考えていたら本当に前衛がブレスで蒸発したが、なんやかんやプレイヤーは不死身なので俺が快適に動けるわけではないのだと数分して気づいた。
と、そんな時だった。
『現時刻を持ちまして、「白竜ブライレイニェゴ」の討伐を確認いたしました。ラストアタッカーはNPC「無双の双剣のディルナディア」です』
NPCがプレイヤーより出しゃばるの、あるあるだよね……ではなくて!!
ブライレイニェゴがくたばっただと? 待て、エルドランザは最初からおっ死んでるし、ドゥーレッドハウルが死んでブライレイニェゴが死んで……残るはブロッケントリードとノワルリンドだけ?
「おいおいおい、いけるのかこれ……!」
色竜は残り二体、いくら耐久に優れているとしてもブロッケントリードは決戦フェーズの序盤から戦い通し、災害状態になっていないにせよいつ倒れてもおかしくはない。
そして何より、雑魚モンスターを大量に生み出すブライレイニェゴが死んだという事実が非常にまずい。
「来るのか生産職……!!」
……なんてな。
そろそろ機は熟した頃だ。正直に言おう、これから起きる出来事は確実に遺恨を残す。だがそれでもやると皆が決めて俺も少なからず助力をした、であれば最早躊躇ってうだうだ言ってる場合でもねぇ。ヤバくなったらラビッツに亡命だ!!
スカルアヅチ君……やろうぜ内ゲバ、共食いと足の引っ張り合いは人間の十八番だからな。
『宣戦布告が受理されました!!』
『装骨天守スカルアヅチvs一夜城サソリスノマタ』
『これより対城戦を開始します!!』
対城戦は「双方のリソース値がほぼ同等」あるいは「双方の建築物の所有者と同じパーティor同じクランに属するプレイヤーの総リソース値を加算した建築物同士のリソース値がほぼ同等」の場合、宣戦布告が可能となる(考察クラン【ライブラリ】非公開情報)
サソリスノマタ……一体どうやってスカルアヅチに匹敵するリソースを確保したんだ………